イチローも認めた名手・本西厚博監督が語る、KAMIKAWA・士別サムライブレイズの可能性
かつてオリックスなどでプレーした本西厚博が、“プロ野球”の世界へ戻ってきた。昨年、『北海道フロンティアリーグ』(HFL)所属KAMIKAWA・士別サムライブレイズ監督に就任。就任2年目を迎えた今季は苦戦が続くが、貪欲に“勝利”を目指す姿勢は現役時代と変わらない。

~選手獲得、チーム編成が想像以上に難しい
「帯状疱疹が出てさぁ。健康に見える?そんなことねえよ」と明るい口様で迎えてくれたが、苦労は尽きないようだ。
「開幕して1ヶ月は苦しい戦いが続いているけど、まだ諦める時期ではない。5-6月を何とか凌いで喰らい付いて行ければ、夏場以降に必ずチャンスがある。これはNPBでも HFLでも変わらないよ」
昨年末に話を聞いた際には、今季へ向けた大きな手応えを語ってくれた。しかしオフ期間のチーム編成に苦しみ、リーグ開幕後も思ったような結果が出ていない。「ストレスが原因なのかな?」(本西監督)と体調面の変化も現れたようだ。
「昨年1年間やってみて、『こうすれば結果が出るかな』という多少の手応えは感じた。2年目の今季は『勝負の年』と位置付けていたが、最初から躓いてしまった。というよりも、開幕から1ヶ月経っても全選手が揃っていないのだから(苦笑)」
2016-18年はBCリーグ・信濃グランセローズ監督を務め、翌19年から24年までの6年間はクラブチーム・ハナマウイで指揮を執った。7年ぶりに足を踏み入れた北海道の“プロ野球”は、想像以上にタフな状況だった。
「昨年の監督就任時には、チーム編成が整った状態だった。シーズンを通しチームやリーグの特性を把握、今季への戦い方がイメージできた。しかしオフ期間に退団選手が数多く出て、チームをイチから作り直さなければならなかった」
「ウインターリーグやトライアウトなど、さまざまなルートを使い選手獲得に動いたが難しかった。特に投手陣は先発、ブルペン合わせて5人しかいない(6月1日時点)。HFLは週末2日間で3試合やる場合もあるが、絶対数が足りない」
5月30-31日の別海パイロットスピリッツ戦(旭川スタルヒン球場)も、2日間で3試合が予定されていた。しかし30日の2試合は降雨中止、「正直、助かった」(本西監督)は現時点での本音だったようだ。
「野手に投げてもらったこともある。『こういう状況だから頼む』と説明して投げてもらうが、本当に申し訳なく感じる。野手としての調整も狂うし、怪我・故障の危険性もある。もうすぐ投手も増える予定なので、そこまで我慢するしかない」

~全ての経験を糧にして前進したい
「HFL自体のレベルや北海道という物理的距離もあるのか、選手獲得は困難を極めました。仮にHFLがNPB選手を数多く輩出しているのなら話も別でしょうが…。『BCや四国、もしくは(本州から近い)九州の独立リーグなら行きますけど…』という声も聞きました」
「士別ファンを増やすためにも、日本人選手主体でチーム編成したい」という理想がある。しかし今季も外国人選手を獲得せざるを得ず、投手4人、野手2人の6人体制となった。しかし、「昨年、活躍した外国人選手2人が退団、攻撃面はうまく機能していない」(本西監督)という状態だ。
元広島のハビエル・バティスタが、打率.394、19本塁打、72打点で打点王。そしてジョム・バルデラマが、打率.359、20本塁打、72打点で本塁打と打点の二冠王。「攻撃力はリーグトップクラス」と言われた昨季の再現を期待したが、簡単ではなかった。
そして外国人絡みでは、思わぬ形での注目も集めてしまった。球団SNSで発表した投手兼コーチのヨハン・タバーレスの退団理由が、「不適切な表現」として“炎上”してしまった。
「タバーレスは故障が治っておらず、入団当初から投げられない状態。契約時点でコンディションを把握できていなかったのが良くなかったのだが…。兼任コーチなので実戦で投げて手本になって欲しかったが…」
「今の時代、ああいう表現をしてしまったことには反省しかない。しかしタバーレス本人とは話し合いを重ねた上での決定だった。今回の件は、『球団として“グラウンド外”の所作が未熟』ということを知れた。経験を無駄にせずに、良い球団になれるように活かして行きたいと思う」
ネット上では“士別”の名前が独り歩き、球団代表・菅原大介氏が謝罪することで一応の収拾を見た形。「しっかり反省して、全てを糧に進んでいきたい」と自戒も込めて話してくれた。

~選手を1つでも上のカテゴリーに送り出したい
「他の独立リーグに比べれば、HFLのレベルは低いかも知れない。うちで欲しかったが他の球団へ行った選手も少なくない。しかし現有戦力の中にも光る選手はいる。彼らのモチベーションを高め、技術を上げてあげるのが私の仕事だと思っている」
「何も考えずに NPBで野球をやってきたわけではないから。ハナマウイ時代も、創部2年で都市対抗野球出場(東京ドーム)するなんて誰も思っていなかった(笑)」と前向きだ。
「化ければNPBへ行ける可能性がある選手もいる」とまで言いきる。ナックルボーラーの岩瀬禮恩、HFLのトライアウトで獲得した捕手・有岡慶祐、外野手・植松鳳太など、選手の名前が次々と出てきた。
「方法次第では良い選手を見つけ出せる。今後に関して言うと、オフ期間の編成段階における戦略をしっかり考えるべき。球団規模もあり、年間を通じてスカウティング活動を行うことは難しい。まずはトライアウトを可能な限り早めに行うことが重要」
昨オフは、HFL主催の合同トライアウト後、士別球団としての個別トライアウトまで1ヶ月近く時間が空いてしまった。他球団が間隔を空けずに開催していた中、出遅れてしまった感は否めない。「ここの改善だけでも1-2人、好素材の選手を見つけられると思う」と付け加える。
「グラウンド内外で厳しいことも起きているが、潜在能力の高い選手はいる。彼らを少しでも成長させて、上のカテゴリーに送ってあげたい」

~“就職活動”のためにも“結果”にこだわる
士別やHFLの未来も考えるが、“プロ野球”の監督として“結果”を重視する。HFL優勝のみならず、『日本地域プロ野球リーググランドチャンピオンシップ2026』での結果という野望すら感じさせる。
「2年契約の最終年なので、まずは今季の結果を出すことに集中したい。リーグ2位に入れば、チャンピオンシップに出場できてHFL優勝の可能性がある。その先には、全国に複数存在する“独立リーグ”全体の頂点に立つチャンスもある」
「自分自身、来年以降の“就職活動”という意味合いがあるのは否定しない。しかしそれは選手達にとっても同様で、勝ち進むことで上のカテゴリーへ進めるチャンスが増える。その先には NPB、もっと言えばMLBへの道もある。“結果”にこだわるのは当然だと思う」
オフ期間から苦労が続き、開幕からここまでは結果も芳しくはない。しかし長い野球人生で培った“肌感覚”から、「巻き返しの可能性は十二分にある」と自信は失っていない。
「BC・信濃の時も2年目でリーグ優勝。ハナマウイでも実質の2年目で都市対抗出場を果たした。昨季の経験から得た手応えがあり、このチームなら立て直せると思っている。ここから先が勝負になる」
今季HFLは石狩レッドフェニックスが首位を走っているが、2位・美唄ブラックダイヤモンズと3位・士別とは「勝ち・負け」共に僅差での競い合いが続く。「5-6月を凌げば…」という名将の“ヨミ”が、ここまでは当たっている状態だ。
「選手個々が持っている実力が出せれば戦えるはずだけど、そこが噛み合っていない部分がある。プレッシャーに弱いと感じる選手も見かける。上のカテゴリーを目指すのだから、もっと図太くプレーして欲しい。そうすれば必ず結果にも繋がるはず」
北の大地で戦い続けるのはNPB・日本ハムだけではない。注目度は比べられないほど低いが、選手・関係者が希望を胸に必死に戦い続けるのは同じだ。
「『いろいろあったけど頑張っているね』と感じてもらえるようにしたい。お世話になっている自治体やスポンサーさんのためにも、何かが伝わるチームを目指します」と締め括ってくれた。本西監督が率いる士別のサムライ達が、この夏を熱くしてくれるのを期待したい。
(取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:士別サムライブレイズ)
