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KAMIKAWA・士別サムライブレイズ「ハングリー精神は、どこの選手にも負けない」

『北海道フロンティアリーグ』(HFL)KAMIKAWA・士別サムライブレイズには、さまざまなバックグラウンドを持った選手達が集まっている。これまでのキャリアは決して“野球エリート”とは呼べないが、「NPBでプレーする」という強い思いを持つ。1つでも多くの勝利を挙げ、チームと自分自身を「売り込む」ことだけを考えている。

KAMIKAWA・士別サムライブレイズ(士別)は、現時点で強豪球団とは呼べないだろう。HFL4球団中2位までが出場できる“チャンピオンシップ”へ、「手が届くかどうか?」という立ち位置が続く。

「2位までに入ればリーグ制覇、そして全国の“独立リーグ”で行われる『日本地域プロ野球リーググランドチャンピオンシップ2026』出場可能性が出てくる。結果を出せば全てが好転するはずだし、良い選手も集まるようになる」

昨年から同球団の指揮を執る本西厚博監督は、今後のビジョンを教えてくれた。そして「今の選手層は決して厚くないが、面白い選手もいるから戦えると思う」と自信のコメントも付け加える。

「ナックルボーラーの岩瀬禮恩(いわせれおん)、16歳でプロ入りした捕手・惣市侑希(そういちゆうき)、旭川・旭山動物園でも働く主将・今津辰吾(いまずしんご)の3人は面白い」と注目選手を教えてくれた。

「個性に溢れた選手達ばかりで、大きな可能性を秘めている」と本西厚博監督も期待をかける。

~ナックルを武器に米国でのプレーを目指した(岩瀬禮恩)

「今投げているナックルは、自分の思う6-7割の状態。他の球種を混ぜ目先を変えながら投げている感じなので、もっと磨きたいと思います。将来的には全投球のほぼ100%がナックルという、“フルタイムのナックルボーラー”になりたいです」

“絶滅危惧種”になりつつあるナックルボーラーが北の大地にいた。千葉県出身の岩瀬禮恩は米国・オックスナード大(カリフォルニア州)へ入学。帰国後、NPB入りを目指して参加したウインターリーグで士別関係者の目に留まった。

「中学から投手をやりましたが多くの球種を試してみました。ナックルの感覚が良くて投げ始め、高校になってからは本格的に練習を重ねた感じ。握りやリリースでの弾き方などを試して、しっくりいく形を探しました。米国では打者がどんどんスイングしてくるので、想像以上に効果がありました」

“絶滅危惧種”と言えるナックルボーラーの岩瀬禮恩(いわせれおん)。

「ウインターリーグで一緒になった、士別の今野尋斗(ひろと/外野手)選手が球団にプッシュしてくれたようです。本西監督から連絡があり、『士別ではこういうことができて上達できる』と細かい説明をいただき、入団を決めました」

「『すごい投手がいる』と聞いて交渉した。初めて見た時、『このナックルはNPBでも通用する』とお世辞抜きに思った」(本西監督)と絶賛だ。

「日本では待球する打者が多いので、確実にストライクを取れる必要があります。そのためには実戦で多くを試して完璧に習得したい。本西監督からは、『可能な限り投げさせるから、経験を積み上のカテゴリーを目指せ』という言葉を頂いています」

「NPBはもちろん、MLBで活躍できる投手を目指したい」と夢は大きい。しかし地に足をつけて現状を冷静に分析することも忘れない。

「投手が抑えればチームは負けません。そのためにも1年を通じてコンディションを維持して投げ続けたい。しっかりとした投球ができれば、自分自身の評価とチームの順位も上がると思いますから」

「ナックルで確実にストライクを取れるようにしたい」と岩瀬は語る。

~できるだけ早くNPBへ行かないとダメ(惣市侑希)

「こういう形での取材は生まれて初めてで、試合中より緊張しています。しっかり話せていますか?」と、惣市侑希は初々しい姿を見せてくれた。

「プレー中も緊張する時はあるし、捕手というポジションなので経験が足りていないのは理解しています。でも16歳という年齢を言い訳には絶対にしたくありません。チームメイトも相手チームも全てが年上になりますが、負けたくないです」

入団のきっかけは“デジタルトライアウト”。同球団が開催したトライアウトに参加できなかったため、自身のプレー動画を送って評価をもらった。

「最終目標はNPBへ入団すること。知り合いの球界関係者からも、『背伸びせずにHFLから上を目指せば良い』とアドバイスをもらいました。焦らず、実力をつけながら経験を積みたいと思いました」

「独立リーグとはいえ、レベルは想像以上に高かった。特に投手は球威がある方が多いので、打撃では力負けしないことを意識しています。自分の最大のウリは打撃なので、まずはしっかり結果を出していきたいと思います」

16歳でプロ入りした惣市侑希(そういちゆうき)だが、まずは試合出場機会を増やすことを目指す。

ポジションは捕手だが、「試合に出られるならどこでも守ります」と言い切る。持ち味である打撃を活かしつつ、実戦経験を重ねることが最重要課題だと認識している。

「捕手に対するこだわりはあります。でも最も大事なのは、試合に出てレベルの高い野球を経験すること。DH、一塁、三塁などチャンスがあればどこでも守ります。打撃に関しては手応えを掴めているので、試合に出れば結果も残せると信じています」

「将来的には育成でも構わないので、可能な限り早い時期にNPBへ行かないとダメだと思う」と悲壮感に近いものさえ感じさせる。「若いうちにNPBでプレーできれば、海外挑戦という道も見えてくると思う」と語る顔は真剣だ。

打撃に自信を持つ惣市が目指す先はNPB入りだ。

~多くの観客に見られることも成長に欠かせない(主将・今津辰吾)

「どの競技でも同じだと思いますが、強いチームの試合は誰もが見たくなります。勝利という結果を積み重ねれば球場に足を運んでくれる人も絶対に増える。だからこそ、選手は目先の勝利にこだわらないといけません」

主将・今津辰吾は士別からほど近い旭川市出身であり、地元チームという思いがある。グラウンド上の勝敗と共に、観客動員を含めた知名度向上も常に気にかけている。

「『HFLのレベルは高くないのでは…』と思っていましたが、実際にプレーすると上のカテゴリーで通用しそうな選手もいる。だからこそ気持ちが重要だと思います。『絶対に勝つんだ』という思いを持てば、プレーの質が変わるはずです」

北海道・星槎道都大を卒業後は、BCリーグ・福井(当時)、九州アジアリーグ・大分、宮崎、火の国といった独立の異なる球団でプレーを重ねた。

「士別を含め、HFLは経験の浅い若手選手も多いですが、個々を見れば素晴らしいものを持っています。今はプレー内容にもムラがあると思いますが、実力をコンスタントに出せるようになれば結果も出ると思います」

主将・今津辰吾(いまずしんご)は、BCや九州での経験を地元球団に還元しようと思っている。

「選手の実力を伸ばすにも多くの観客に見られることが重要だと思う」と続ける。野球のない日は旭山動物園で働いているだけに、集客の重要性も身に染みて理解している。

「旭山動物園は家族の縁があって手伝っていますが、勉強になることは多い。士別の人気が出る方法を考えたりもします。『旭川で試合をもっと組めればファンも増える』と思うのですが、まずは士別で愛されること。そのためにも選手はがむしゃらに、そして楽しくプレーしていきたいです」

野球だけでなく旭山動物園という究極のエンタメを目の当たりにしているだけに、言葉には説得力がある。「選手が頑張って球団が潤えば、良い選手も増えるはずです」と未来を見据えている。

「選手の才能を伸ばすためにもチームへの注目度を高めたい」と今津はグラウンド外の重要性も説く。

士別には他にも個性派選手が揃っている。「『野球を続けたい』という純粋な思いを誰もが持っているよ」と本西監督は目を細める。

「思いだけではダメだけどプラスに作用すれば大きく成長できる。開幕から選手が揃わず、投打の巡り合わせも良くない中で苦戦が続く。しかし長いシーズン、潮目が変わる時は必ずくる。その時まで我慢してやっていければ、チャンスはある」(本西監督)

現役としてNPBで15年間プレー、その後は韓国球界を含めた多くのカテゴリーで指導者を経験した男の言葉には重みを感じた。厳しいシーズンはしばらく続くだろうが、このままで終わるとは思えない。

向上心に溢れた個性豊かな選手達が実力を発揮できるようになれば、リーグ制覇の可能性もあるはず。北の大地を熱く燃やすのは日本ハムだけではない。士別サムライブレイズのここからにも注目だ。

(取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:士別サムライブレイズ)

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