第1回東日本学生フルコンタクト空手道選手権大会「学生による学生の大会」
『第1回東日本学生フルコンタクト空手道選手権大会(東日本インカレ)』が初開催された。昨年から始まった西日本に続き、東日本でも大学生の大会ができた形だ。
大会ビジョンは、「学生主導の大会にする」こと。参加選手はもちろん、運営を任された学生達にとっても記念すべき1日となった。
フルコンタクト空手の第1回東日本インカレが、6月14日に国立代々木競技場第二体育館で行われた。世間はサッカー・ワールドカップで盛り上がっている中、場内の熱気は負けないほど沸騰していた。

~学生のアイディアや行動力を活用したい(中山祐一氏)
フルコンタクト空手では、2022年に全日本インカレが立ち上がり、昨年からは西日本インカレも始まった。追いかけるように東日本インカレも1歩目を踏み出した。
「学生による学生の大会にしたかった」と語るのは、今大会の運営全般を担ったJKC(全日本フルコンタクト空手コミッション)専務理事、JKJO(全日本空手審判機構)副代表、IKA(国際空手協会)会長の中山祐一氏。
「西日本インカレがあって東日本インカレがないのは寂しい(笑)。まずは大会開催が大事だと思いましたが、“個性”“違い”も出したかった。『学生主導の手作り感ある大会にしたら、温かみもあり、思い出にも残るのでは…』と考えました」
選手に加えて運営スタッフにも学生が顔を揃えた。フルコンタクト空手未経験も含めた10名ほどがスタッフとして参加している。
「空手を全くやったことのない学生が手伝ってくれました。選手から、『俺が試合に出るからスタッフやってくれ』と頼まれて引き受けたということ。こういった横の広がりで、競技の認知度も高まる相乗効果があると思います」
「学生時代の仲間って良いな、と実感しました」と目を細める。同時に「学生達の柔軟なアイディアをどんどん取り入れることが大事です」と今後を見据えている。
「駅伝などの他競技を見ると、学生が企画・運営を行なって新たな試みをどんどん取り入れている。フルコンタクト空手のインカレもそういった部分を参考にして、『追いつけ、追い越せ』の気持ちで盛り上げていきたいですね」

~北海道代表を背負って、もっと強くなりたい(今総一郎/北星学園大)
東日本の各大学・専門学校から39名の学生が参加、男女ごとの各階級に分かれて頂点を目指す熱戦が繰り広げられた。
1部上級男子(軽量級)で3位となった今総一郎(こんそういちろう/北星学園大)は、「今大会の結果に満足せず、次は全日本インカレでも勝てるようにしたい」と表情を緩めない。
「今までも全国規模の大会に出場する時は、『北海道代表』という思いを持っていました。インカレが始まり大学を背負って戦う機会ができたことで、“思い”や“責任感”がさらに増した感じです。礼儀作法も含めて、もっと強い選手になりたいです」
高校時代に全日本インカレが始まり、学生選手の周辺が変化しているのを感じている。競技結果のみならず、「人としての成長も強く考えるようになりました」という。
「競技環境が良くなっているのを実感します。ジュニア大会が文部科学大臣杯になったことで、大会出場時には公休扱いになる学校も増えました。周囲への影響力が強くなっているからこそ、より真摯に競技と向き合う必要があると思います」
「小学校3年から始めた空手が、今も楽しくてたまらない」と笑顔を見せる。「胸を張って“強い”と言えるようになりたい」との思いが叶う日が近いことを感じさせる。

~周囲への感謝を持って世界大会で優勝したい(松田理央/東洋大)
1部上級女子(重量級)を勝ち抜いた松田理央(東洋大)は、「世界大会で優勝して、その後も連覇できる選手を目指したい」と力強く語る。
「一般の部へ出場して結果が出ないこともあり、落ち込みそうな時もありました。インカレができたことで、自分の現在位置を知ることができる良い機会になっています。同じような思いを抱いていた学生選手は少なくなかったと思います」
幼稚園の年長から競技を始め、「世界大会で優勝する」という思いを持って練習に励んでいる。不安になる時もあったというが、「インカレで同年代のレベルを知れることがプラスになっている」という。
「自分自身の実力を把握できます。そして結果が出せることでモチベーションを強く持ち続けることもできます。世界大会での優勝はハードルが高いですが、必ず実現したいと思っています」
「自分の経験を活かしながら、道場の先生として子供達に競技の楽しさ、素晴らしさを伝えたいです」という将来の夢を持っている。「いつも支えてくれる家族に心から感謝しながら、頑張り続けます」と輝く瞳で決意表明をしてくれた。

~インカレは学生が競技内外で大きく成長できる場所
「『東日本にもインカレがあれば…』という言葉に応えるのが大人の役目であり、競技の普及・発展にも繋がると思いました」と語るのは、JKC会長・宮地政樹氏。
「全日本インカレ開始当初は、“インカレ”の存在意義が広くは浸透していない状況でした。しかし今では選手・関係者の誰もが理解してくれ、『フルコンタクト界に欠かせない大会』という認識を持っていただいています」
「普段所属する流派や会派を超越した、学生内の戦いができるようになりました。そして、『学生スポーツの仲間に入れてもらった』という感覚も持てるようになりました。同年代の選手達で切磋琢磨することで、人としての幅や視野も確実に広がるはずです」
「西日本と東日本、それぞれのインカレに個性が出せつつあるのが嬉しい」と大会を振り返るのは、JKCおよびJKJO代表・酒井寿和氏。
「『東日本は学生が主役の大会にしたい』という考えに沿って開催できました。西日本とは異なる企画、魅せ方ができて素晴らしい大会になったと思います。学生主導なので至らない点もあったと思いますが、反省点を活かしつつ進化させていきたいです」
西日本は読売テレビのエントランスロビー内特設コートで開催され、大型モニターを活用するなどエンタメ色も取り入れている。一方で東日本は学生が中心となり、“手作り感”を感じさせるものだった。
「今後は参加選手数(今回39名)を増やすことも重要。質の高い大会を重ねていき、知名度を上げることも求められます。東西インカレの盛り上がりが全日本インカレに繋がり、学生の競技人口が増えると信じています」
インカレの将来に手応えと可能性を感じている。そして、「学生が競技、人間の両方で成長できるサポートを全力で行います」と2人は同様に付け加えてくれた。

「東日本インカレは“学生主体の大会”ですが、“お祭り”だけの形にはしたくない。観ている人に、『激しいながら綺麗な大会』と感じてもらいたい。“品位”や“美しさ”を大事にしつつ時代に即した大会にしたいです」(中山祐一氏)
“学生主体の大会”の東日本インカレだが、重視するのは“品位”や“美しさ”。そして真剣勝負の後は、同年代の絆が深まる楽しい場所になること。「競技と学生生活の両方の素晴らしさが凝縮した場所にしていきたい」と、今後の方向性を教えてくれた。
インカレの存在が同競技のレベルを高めていくのも間違いないだろう。何よりも選手達が輝ける場所が、また1つ増えたことが大きい。そして各大会ごとに異なった個性があるのも面白い。
次は11月29日、「第5回全日本インカレ」(国立代々木競技場第一体育館)で大学生日本一が決定する。この先、世界の舞台で活躍する空手家をイチ早く見つけられるかもしれない。「当てて倒す」フルコンタクト空手、競技者のみならず観ているだけで惹き込まれる魅力溢れる競技に注目だ。
(取材/文/写真:山岡則夫、取材協力/写真:全日本フルコンタクト空手コミッション)
