• HOME
  • コラム
  • その他
  • 世界で戦う、世界で学ぶ―オープンウォータースイミング・ワールドカップ2026―

世界で戦う、世界で学ぶ―オープンウォータースイミング・ワールドカップ2026―

 

 6月20日と21日、ポルトガルのセチュバルで、オープンウォータースイミング(Open Water Swimming: 以下OWSと表記)のワールドカップ第4戦が開催された1。この大会に日本代表として、梶本一花・蝦名愛梨・江沢陸・辻森魁人・南出大伸の5選手が出場した。

 2年後のロサンゼルスオリンピックへの出場を視野に入れ、様々な挑戦を始めた日本選手たちの様子をレポートすると同時に、日本代表OWSのヘッドコーチである太田伸氏に今後の日本のOWSについて話を聞くことができた。

今年もこの大会の3㎞ノックアウトでメダルを獲得した梶本選手

梶本選手の銅メダル、男子選手の健闘ー3㎞ノックアウト

 昨年(2025年)に同じ場所で開催されたOWSワールドカップ・セチュバル大会の3㎞ノックアウトで梶本選手が優勝したが、今年も梶本選手が同種目で銅メダルを獲得した。

 大会2日目に開催された3㎞ノックアウトは、1500m・1000m・500mと3つの距離を約10分間のインターバルで泳ぐ競技である。次のレースに進むことができるのは各レースのトップ10以内に入った選手だけという、いわゆるサバイバルレースである。

 梶本選手は最後のレースの500mで先頭集団についていくレースを展開するも、ゴール直前では先頭から4番目の位置でラストスパートの勝負をかけた。ゴールではドイツのレア・ボイ選手と同時にゴールしたかのように見られたが、直後に梶本選手の銅メダル獲得が発表された。

 「ラストは隣の選手が並んでいるのが分かったので、もう一歩前に出ようと思った。」と話す梶本選手は、同種目での強さを再度世界に知らしめることになった。

1500mのレースを第2位で予選通過した江沢選手

 また、男子の3㎞ノックアウトでも日本選手が大健闘した。最初のレースの1500mで江沢選手と辻森選手がそれぞれ2位と8位に入り、次の1000mのレースへと進んだ。1000mのレースでは江沢選手が17位、辻森選手が18位となり、最後の500mのレースへ進出することはできなかったものの、トップ選手と文字どおり肩を並べてレースをした経験は、貴重な体験となっただろう。

レース後、ドイツのナショナルチームを率いるバーンズ氏(写真左)からアドバイスを受ける蝦名選手(写真右)

ドイツ人コーチの下で海外武者修行を経験ー蝦名愛梨選手

 今回のセチュバル大会に出場した蝦名選手は、レースの約1か月前からドイツのバーンズ氏がコーチをしているチームに単身で乗り込み、他のトップ選手と共にランザローテ(スペイン)・マルクブルグ(ドイツ)・シエラネバダ(スペイン)の3か所でトレーニングをしていた。そしてこの武者修行をスタートしてわずか1週間後に出場したAPロンドン大会の1500mのレースでは自己ベストを5秒更新し、同レースで第2位となった。

 数々のOWSの10㎞レースで優勝したモエシャ・ジョンソン選手(オーストラリア)等、世界でもトップクラスの実力と実績を持つ選手たちと毎日一緒にトレーニングしていた蝦名選手。毎日英語でコミュニケーションを取りながら、初体験となる海外での武者修行を経験していた。

10㎞のレースでの蝦名選手

 今年のセチュバルの大会では、10㎞は10位、3㎞ノックアウトは8位という成績を残した蝦名選手はこの結果について、レース終了直後に「もう少し何かやれたかもしれない。」と少々悔しそうな表情を見せていた。しかし、その後はすぐに気持ちを切り替え、バーンズコーチから直接アドバイスを受けている様子が見られた。

 今回の武者修行について、蝦名選手は「とても楽しかったので、もっとヨーロッパでトレーニングしていたいです。」と笑顔で語り、この武者修行が実り多いものであったことを伺わせた。

レース前に潮の状態を確認する太田ヘッドコーチ(左)と梶本選手(右)

世界のトップスイマーやコーチから学び、日本独自のものをー太田伸ヘッドコーチ

 今回のセチュバル大会を通して感じたことについて、日本代表チーム・ヘッドコーチの太田伸氏は以下のように語った。

「まず、ヨーロッパで武者修行していた蝦名選手に久しぶりに会ったら、日本にいたときと比べて、とても明るくなっていることに驚きました。この大会でもたくさんの選手と話をしていますし、お世話になったバーンズコーチに積極的にアドバイスを受けに行っているのを見ることができて、びっくりしていると同時に、とてもうれしいです。蝦名選手は英語はあまり得意な選手ではないと思っていたのですが、毎日英語を聞いて話しているうちに、本当に上手くなりました。

 蝦名選手が経験したような、海外での武者修行を日本の他の選手も積極的に経験すべきなのでしょうね。現在オープンウォーターの分野で強い選手は、男女ともヨーロッパでトレーニングしている選手が大半です。今回、蝦名選手が指導を受けたドイツのバーンズコーチの下には、今年のOWSのワールドカップで総合優勝したモエシャ・ジョンソン選手選手や、パリオリンピックで銀メダルのオリバー・クレメンス選手、そして東京オリンピックの金メダリストのフローリアン・ブエルブルック選手がいます。毎日世界のトップ選手と練習することで学ぶことはたくさんあるでしょうし、そこでの経験を日本に持ってきてほしいですね。

 そうした経験を日本に持ち帰って若い人に伝えながら、日本人用にアレンジを加えていくことで、近い将来日本がOWSの強豪国となれるようにしていきたいですね。

 世界のトップクラスの選手とレースをすることはもちろん、練習することが普通になれば、オリンピックをはじめとする国際大会でも選手はリラックスできるでしょうし、その結果良い成績を出すこともできるのではないでしょうか。」

OWSはコーナリングに技術が必要とされる競技

 今後、蝦名選手を含めて、海外での武者修行を計画している選手が複数いると太田ヘッドコーチは話す。また、太田ヘッドコーチ自身も、他の国のコーチとのネットワークづくりに熱心である。

 海外の有力選手や有力選手を育てるコーチとのネットワークを作り、多くの経験を取り入れることで、日本のOWSの選手がもう一段高いところで勝負できるようになるために。

 2028年のロサンゼルスオリンピックとその先へ向けて、日本のOWS競技の挑戦は続く。

1 OWSのワールドカップとは、ヨーロッパを中心に毎年4~5か所でレースが開催されるシリーズ戦。

(写真・インタビュー・文 對馬由佳理)



関連記事