関メディから2人目のプロ野球選手が誕生「夢追い人は野球が上手くなる」
関メディベースボール学院OBから2人目のNPB選手が誕生した。しかしそのことによって、指導方針が変化することは何もない。「選手が各々の夢を追いかけることが重要」と、同学院総監督・井戸伸年氏は強調する。

~身近にいる素晴らしい手本、見本が人生に影響を与える
「選手生活を続ける上での選択肢が広がったことが、1番良かったと思います」
今秋のNPBドラフト会議、四国・愛媛(独立)の島原大河捕手が楽天から育成5位で指名された。関メディOBの指名は昨年、阪神から2位指名を受けた今朝丸裕喜投手に次ぐ2人目となった。
指名されたことで井戸氏が喜んだのは、「後に続く選手達に、『可能性はいくつもある』ことが提示できること」という。
「2人は歩んだ道が全く異なります。今朝丸は報徳学園(兵庫)のエース、プロ注目の右腕だった。島原は大学、独立と野球を続け、『指名されるか、五分五分』という状況だった。異なるケースができたことが良かったと思います」

今朝丸は、甲子園出場した2、3年春のセンバツで2年連続準優勝。同3年夏は初戦敗退も、U18侍ジャパンの一員として9月のU18アジア選手権準優勝に貢献した。
島原は、敦賀気比(福井)で甲子園出場するも控え選手だった。日本経済大を経て、2024年に愛媛入団。成長を続けた結果、育成ながらもNPBドラフトにかかる選手になった。
「ドラフトにかかった選手が身近にいるのは大きい。人間は実際に自分の目で見たものが、印象に残ります。技術もそうですし、もっと言えば“生き方”にも大きな影響を与えてくれる。後輩達にとって素晴らしい手本、見本です」
プロ野球選手を輩出したことで、チームや指導者への評価が高まる傾向もあるが…。
「評価は全く気にしません。時間は流れていき、新しいことを取り入れないと置いていかれます。プロ入りしてくれたことは嬉しいですが、すでに“過去”のこと。今の選手達に成長してもらうため、次を見ないといけないですから」
“過去”は大事にしつつも前を見据える姿勢は、ブレることがない。

~経緯の異なるプロ選手が出たことで選択肢が広がった
関メディは2023年4月にヤングリーグからポニーリーグへ転籍すると、全国トップクラスの成績を残し続けている。加えて、プロ選手を輩出する育成力にも定評があり、同学院OBの甲子園出場数の多さも話題だ。
「甲子園出場によって、人生が大きく変わります。上のカテゴリーでも野球を続けられる可能性が高くなる。選手に成長してもらい、甲子園出場の可能性が高い高校へ進学してもらうことが、関メディの大きなミッションと言えます」
個人としては、日々の練習や生活で心技体を磨き上げる。チームとしては全国優勝を目指し続ける。選手の希望を大事にしつつ、最適な高校へ進学できるように学院が全力でサポートする。

「道は違いますが、2人は素晴らしいモデルケースを示してくれています」と、井戸氏は嬉しそうに語る。
伝統球団から大きな期待をされ、高卒でプロ入りした今朝丸。苦労しつつも野球を続け。念願のプロ入りを果たした島原。高校進学時の様子や経緯も、2人は全く異なったという。
「今朝丸は中学時代から注目を集めていました。しかし、野球強豪校に進学志望を伝えたところ、2-3校から断られた。『戦力になれない』という判断。報徳学園には、こちらからお願いして入学させていただいた部分もありました」
後のドラフト2位指名選手を断った学校があった、とは驚きである。「関メディは、まだまだ信用されていないとも感じました(笑)」と当時を振り返る。今朝丸がプロ入りできる投手に成長したことを知り、断った高校は悔しい思いをしているのではないだろうか。
「島原は『甲子園に行きたい』という思いが強かった。打撃は飛び抜けたものを持っていました。“打てる捕手”は貴重なので、戦力になれるとは思いました。それでもレギュラー奪取はできず、甲子園でも代打出場でしたから」
「(島原にとって)高校3年間は、自分に必要なものを考えられた時間だったのでは…」とも語る。大学、独立リーグで足りない部分を埋められたからこそ、プロ入りが叶っただろう。「本当に野球が大好きな男ですから」と笑顔で付け加えてくれた。
「抜群の実力を磨き上げれば高校からでもプロに行ける。現時点で足りないものがあっても、諦めずに続ければ身につけることも可能。2人の生き様は、関メディの現役生に大きな影響を与えてくれるはずです」

~“夢”や“可能性”が最も大事
「“夢”や“可能性”を感じないと、人は動かないと思います。実際にプロに入った選手が身近な先輩にいる。今後に続く選手は、目に見える形で“夢”や“可能性”を得ることができました」
野球を始めた頃から誰もがプロを志すはずだ。しかし、野球界最高峰の世界へ足を踏み入れるのは並大抵のことではない。2人の存在が選手達の大きなモチベーションになるのは、間違いない。
「高校、大学、独立など、プロ入りできる複数ルートができたことも大きい。『どんなルートからでも、本人次第でプロ入りできる』ようにすることが、我々にとって大事なことだと思います」
野球選手としての“夢”、プロになれる“可能性”を増やすことを考える。「将来的には高校経由、もしくは直接で渡米する選手が出てくることもあり得ますね(笑)」と大きな未来も語ってくれた。
「“夢”や“可能性”を追いかけるためにも、今を大事にしなくてはいけません。地に足をつけて、1日1日を懸命に過ごす。そうすれば野球や仲間への思いも、真っ直ぐで純粋なものになると思います」
「『この仲間達と勝ちたい』『1日でも長く関メディで野球をやりたい』という気持ちが、自然に湧いてくるはず。そうすれば結果を出した時に、『おめでとう』ではなく『ありがとう』という言葉を、お互いに掛け合えるはずです」
野球に対して、文字通り“真摯”に向き合い、取り組むことが人間形成にも直結すると考える。
「誤解を恐れずに言えば、中学生は子供です。逆転劇などのドラマ性が高い試合が多いのも、メンタリティの低さから。心技体の全てを高めれば、本当に強い組織になれます。しかし強制できるものではなく、選手各自の心掛けでしかできません」
正しい指導法のもと、練習を数多くこなせば技術的な部分は上達する。そこにメンタリティが加われば自然に勝てるようになるはず、という考えだ。

今朝丸、島原というプロ野球選手が誕生したことで、関メディとしては結果も残したことにもなる。最後に2人に対して今後、何を求めるのかを聞いてみた。
「今朝丸は、甲子園で投げるのが今から楽しみ。関メディ事務所から徒歩で行ける場所にある聖地での登板。マウンドに上がった時、(関メディ関係者)みんなの喜ぶ顔が今から想像できます」
「島原は、まず支配下登録を目指してもらいたい。プレッシャーはかけたくないですが、ここからが本当の勝負。怪我・故障をしないように、打撃を最大限に活かせば道は開けると信じています」
「プロ野球選手になれて良かった」という満足感はない。「この先ずっと、後輩達の夢や目標でいてもらいたい」という部分にだけ、期待しているようだった。それこそが関メディが大事にしている、“勝者のメンタリティ”なのだろう。
「夢追い人は野球が絶対に上手くなりますから」
この先も、2人に続く素晴らしい選手が出てくることを予感させた。
(取材/文・山岡則夫、取材/写真/協力・関メディベースボール学院、井戸伸年)
