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「やるか、やらないか」の気持ちで頂点を目指す~フルコンタクト空手・第1回首都圏空手道選手権大会

フルコンタクト空手・第1回首都圏空手道選手権大会(千葉ポートアリーナ/以下首都圏選手権)が行われた。ジュニア、高校、一般の各階級で熱戦が繰り広げられ、同競技の普及とレベルアップが進んでいることを実感させられた。

首都圏選手権は、“文部科学大臣杯”でもあるJKJO(全日本空手審判機構)全日本ジュニア空手道選手権大会の関東で3つ目の選抜指定大会。また、今年から始まる全国高等学校空手道選手権大会の選抜指定大会でもある。参加選手達は全国大会への出場を目指し、必死の戦いを繰り広げた。

JKJO全日本ジュニア等の選抜指定大会であるため、出場権獲得のため各選手が必死に戦っていた。

~フルコンタクト空手は、怖いけどやるしかない

「危なかったです。延長になった時は本当にドキドキしましたが、『勝ちたい』と言う気持ちだけは途切れないようにしました」

選抜小学6年女子40kg未満の部で優勝した石田珠季(空手道無限勇進会)は、日焼けした真っ黒な顔に笑顔を浮かべ語ってくれた。

「決勝の相手は戦うたびに強くなっていて、『今回は大丈夫かな…』という思いがよぎることもありました。でも、『絶対に勝つ』と自分に言い聞かせて技を出しました」

アニメ『名探偵コナン』の毛利蘭に憧れ、幼稚園年長時から同競技を始めた。成長著しく、「日本を代表する選手になれる素材」と評価を受けている。

「コナンの蘭姉ちゃんは空手をやっていて、強くて可愛くてカッコ良い。『ああいう風になりたい』と思って始めました。フルコンタクト空手は、実際に当てるし痛い思いもします。怖い思いはありますが、『やるか、やらないか』ですから」

「小学4年くらいの時、競技を1度離れたこともあります。私は身体も小さいし、気持ちが切れてしまいました。でもフルコンタクト空手をしないと寂しいし充実感がなかった。復帰した時には大きな喜びを感じて、『私にはここしかない』と思いました」

別の世界に触れてみたことで、同競技への思いを改めて強めたという。

「空手は『空の手』と書くので、拳を中心に戦いたいです。高校、大学と大会も増えて明確な目標もできました。もちろん日本一、そして世界王者も目指したい。強さ、礼儀を含め、『こういう選手になりたい』と思ってもらえる選手を目指しています」

「タイトルが獲れて良い夏になりました」と最後まで楽しそうだった。

選抜小学6年女子40kg未満の部で優勝した石田珠季(空手道無限勇進会)。

~フルコンタクト空手と柔道の“二刀流”

「『やっちまった』と思いました。失格の可能性もあったので待っている間は心配でした」

田中一誠(光誠会)は選抜中学2-3年男子57kg以上で優勝を飾った。しかし初戦ではパンチが相手選手の顔面に入るアクシデントに見舞われた。

「試合続行してくれて本当に感謝しました。ああいうミスをしてしまうことも多いので、もっと精進しなければいけない。練習を重ねて技量に自信を持てても、ミスをしては仕方ないですから」

「あわや…」のシーンもあったが優勝は順当な結果とされる。幼稚園年中時から同競技を始め、父親が営む道場で心技体を磨き続けてきた成果だ。

「父が空手をやっている姿を見て、『自分も強くなりたい』と思いました。子供の頃から空手が身近にあったので、自然の流れだったと思います。パンチとローキックが持ち味で、徹底的に磨き上げようと思っています」

フルコンタクト空手の強豪選手でありつつ、学校の部活では柔道部に所属する“二刀流”でもある。

「高校では柔道部に入部しようと思っているので、空手道場へ通う時間は今より少なくなります。でもフルコンタクト空手は絶対に辞めません。難しいとは思いますが、両方で強くなって日本を代表する選手になりたいです」

「フルコンタクト空手と柔道は、お互いがプラスに作用していると感じます。礼儀や平静な精神を保つところなどは、両方に共通している。高校で柔道、道場でフルコンタクト空手に全力を注ごうと思っています」

「両方で世界一になれる可能性があると信じています」と自信に満ちた笑顔が印象的だった。

選抜中学2-3年男子57kg以上で優勝した田中一誠(光誠会)。

~サッカーに負けないようにフルコンタクト空手で世界一になりたい

世界中へ門戸が開かれており、スペインから参戦した選手がいたことにも驚かされた。上級一般男子重量級・75kg以上のHUGO CRUZ/ヒューゴ・クルーズ(MYURA DOJO)は、「日本に2ヶ月滞在して、全国の大会を巡業する」という強者だ。

「身体、精神、ディシプリン(規律性)等を高めるのにフルコンタクト空手は最高なので、8歳から始めました。25歳の今まで17年以上携わっていますが、奥の深い難しい競技。やりがいがあって本当に面白く、もっと強くなりたいです」

今大会は決勝で延長戦の末に判定負けを喫した。「スタミナ面を含め、もっと上達しないといけません」と謙虚な言葉が続く。

「昨年は日本に3ヶ月滞在して、全ての経験がプラスになった。今年も多くのことを吸収して帰国したいと思います。サッカー・スペイン代表はW杯で世界一になりましたが、自分も強くなって頂点に立ちたいです」

「日本もフルコンタクト空手も大好き。皆さんには本当に感謝しています」と何度も口にする。真摯な姿勢とポテンシャルの高さは誰もが認める。大会後は多くの道場関係者から、「うちへ練習に来れば」と声をかけられていた。

スペインから来たHUGO CRUZ/ヒューゴ・クルーズ(MYURA DOJO)は、上級一般男子重量級・75kg以上の部で準優勝を飾った。

~大会運営、進行がスムーズにいくことを重視

千葉県東金市を活動拠点とする『空手道無限勇進会』が大会運営を担当した。昨年の『JKC AWARD 2025』で“Coach Of The Year”に選ばれた大場貴史氏が中心となり、最高の舞台が整えられた(JKC:全日本フルコンタクト空手コミッション)。

「全日本ジュニア等に繋がる大会として、会場内の雰囲気を整えることを重視しました」と、大場氏は大会への強い思いやこだわりについて語ってくれた。

「スタッフが経験を活かして多くのアイディアを出し、実践してくれた。重視したのは進行をスムーズに行うことで、試合と無関係な方がアリーナに入らないことを徹底しました。『近くで応援したい』という保護者の方の熱意は理解できますが、選手の導線を含め大きな障害になります」

「全日本選手権等では、セコンドライセンスを持っている方しかアリーナに入れません。勝負の前に、規則を厳守しないとダメです。またそういう環境に慣れておかなければ、実際の場で対応できません。選抜大会の時点から規則に慣れておく必要があると思います」

「『通路を狭くして、入口の数を減らせば人が留まりにくくなる』というスタッフの意見に助けられました」と周囲への感謝を繰り返す。

「『負けた選手のみ“お菓子の掴み取り”ができる』というシステムも良かった。負けた悔しさは大きいと思いますが、少しだけでも笑顔になってもらいたい。だから、『優勝者は参加できない』というすごいルールを設けました(笑)。想像以上に好評で良かったです」

記念すべき第1回大会は、盛況のうちに幕を閉じた。「会場の都合等もありますが、今後もここで定例化できれば良いですね」と充実感を感じさせた。

JKC会長・宮地政樹氏(写真左)と大会運営を担当した空手道無限勇進会・大場貴史氏(同右)。

「選抜指定大会にふさわしい大会だったと思います」と満足そうだったのは、JKC会長・宮地政樹氏。

「千葉ポートアリーナを初めて使用しましたが、(大会の)完成度が高いと思いました。運営の皆さんの協力のおかげで、順調でスムーズに行われました。首都圏選手権が千葉に定着して大きく育つことを期待しています」

全日本ジュニアが行われる国立代々木競技場第一体育館と共に、関東地方における“聖地”になる可能性も感じさせる。

「空調が効いた快適な環境でもあり、選手達は素晴らしい試合を繰り広げてくれた。今回は5コートで行いましたが、最大12コートまで増やせる印象を持ちました。大会の回数を重ねていく中で、選手・観客がどんどん増えていってもらいたいです」

「全日本ジュニアに良い形でバトンを繋いでもらえる大会になりそう」と嬉しそうに付け加えてくれた。

首都圏空手道選手権大会は今後へ向けた大きな可能性を感じさせる。

「首都圏選手権はジュニアから一般の部まで、各カテゴリーの試合が行われます。ジュニアや中高校生が上の年代の試合を見て、『年齢を重ねても強い選手でいたい』と思って欲しいです」

大場氏は首都圏選手権の開催意義についても教えてくれた。同競技に携わる「空手家としての矜持」を感じさせる。

「何歳になっても“強さ”を追求して欲しい。“強さ”とは勝敗や技術のみでなく、人間的な部分の成長も含めてです。人生自体も充実して潤うと思います。『大人の大会へ出場して優勝したい』と思うくらいでも良いと思います」

フルコンタクト空手が順調に成長している理由がわかる気がした。試合・運営の全てにおいて、縦・横の素晴らしい関係性と向上心の強さを感じさせる。そして「首都圏選手権は、今後も更に発展をする」という確信が持てた1日だった。

(取材/文/写真:山岡則夫、取材協力/写真:全日本フルコンタクト空手コミッション)

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