関メディベースボール学院が東京で野球教室開催「全国のリアルタイムな状況を知りたい」
中学硬式野球の強豪・関メディベースボール学院(以下関メディ)が、関東地区では初となる野球教室を開催。小学生と中学生の各年代に分け、主に身体の適切な使い方を中心とした指導が行われた。酷暑の中だったが参加した選手と親御さんは指導に聞き入り、動画撮影を行う姿も目に付いた。

「『日本の中心である東京の選手や親御さんが何を求めているのか?』を知ることが重要だと思いました」と関メディ総監督・井戸伸年氏は教えてくれた。
「関メディは日本一にもなっていますが、普段の活動拠点は関西ローカルです。(関西地方だけの)偏った認識や知識で続けていては、選手の成長が阻害されてしまう危険性もある。日本全国のニーズやトレンドを知ることは、必ずプラスになると思います」
井戸氏は指導者として、常にアップデートする必要性を感じている。2025年春には知人を通じMLBレッドソックスの春季キャンプを視察、指導者やスタッフ、選手から米国野球の現在を学んでいる。
「『まずは(野球教室を)やってみる』ことが大事で、選手やご家族が何を求めているのかを知りたかった。やはり最初に来たのは“投げ方”であり、それに伴う身体の適切な使い方。これは関西も東京も同じだと感じました」

~怪我・故障の確率が低くなる身体の使い方
「大切なこと(=身体の適切な使い方)を正確に伝える“スポークスマン”として呼ばれた、と理解しています」と笑うのは、テクニカルコンディショニングコーチの藤田真悟氏。「野球教室のキーマンです」(井戸総監督)と全幅の信頼が寄せられる人物だ。
「『一般論として、こういう身体の使い方なら怪我・故障の確率は低くなる』ことを伝えたい。もちろん人間が行うことなので確率ゼロはないですが、低くすることはできる。その上で、能力が上がる確率が高くなるようにしたいです」
「身体の各部位を無理なく機能的に使い、最大限のパワーを生み出すことが重要。そのためには足の裏で地面をしっかり踏んで得た力を、確実かつ効率的に上へ伝えていくこと。言葉では簡単ですが、本当に難しいことだと思います」
野球教室内では、「地面を踏む意識を持つ」ことの重要性を徹底。数パターンのドリルを活用しながら、選手達の意識を高めることに注力していた。
「足の裏で得た力は、身体全体へ効率的に伝えないといけません。足から上半身への最初の連結部は股関節、そして次が肩甲骨になります。股関節、肩甲骨という2つの連結部をスムーズに活用しなければなりません」
「股関節でパワーの伝達が1度止まると、そこで再び力を生み出さないといけない。余分な負担がかかり腰を痛める原因になります。肩甲骨も同様で、伝達が滞るとそこから先の肩や肘を痛めかねない。股関節、肩甲骨が適切に作用することが重要になります」
股関節を経由して、足から体幹へパワーを伝える。同様に体幹から腕(肩、肘)へは肩甲骨が担う。「負担がかかる場所を減らすことで怪我・故障のリスクが下がり、そして最大限のパワーを効果的に活用できることにも繋がります」と続ける。
「投げる際には3つの大事なエンジンがあります。足(特に軸足)をしっかり使うことで第1エンジンが点火。股関節が使えて適切な回旋をするのが第2エンジン。そして肩甲骨によって第3エンジンが稼働、腕がシナって力強く振れます。この過程を意識しながら身体で覚えて欲しいと思います」
メカニクスをわかりやすく言語化して伝えることで、選手達も頭と身体の両方で理解を深められる。野球教室終了後も、個別に質問に来る選手達に丁寧に対応していたのが印象的だった。

~感覚に頼らず言語化して指導することが重要
「普段接している関西の選手達とは、多少ノリが違うのは感じました」と率直な感想を語ったのは、小梶玄人コーチだ。
「今春から関メディでコーチを任されています。指導方法はもちろん、選手への接し方等、1つ1つが勉強の真っ最中です。今回の野球教室に呼ばれたのも、『多くの選手、環境に接して、指導者としての引き出しを増やして欲しい』ということだと捉えています」
「東京の選手は少し気を使っていたようで、大人しく感じました。関西の選手は声も大きく、初対面からガンガン来る感じがします。そういう部分での地域性を感じられたのも参考になりました。ただし野球に関して指導する内容は変わらないので、『なるべく早く打ち解けることが大事』と思いました」
3月まで関メディ選手科(社会人チーム)に在籍、都市対抗野球出場や上のカテゴリーでのプレーを目指していた。現役引退したばかりで、実際に身体を動かして指導できるのが強みだ。
「実際にプレーを見せて指導できるのは自分の強みだと思います。しかしそれだけだと、感覚的な指導のみになってしまう危険性もあります。井戸総監督や藤田コーチのように、言語化して選手に伝えられる指導者にならないといけません」
「年齢的に選手達と近いのはアドバンテージだと思っています。自分からどんどんコミュニケーションを図って、会話を欠かさないようにしたい。今日も途中からは、色々な話をしながら指導できるようになっていきました。素晴らしい経験を積めた野球教室でした」
「指導者としての具体的な方向性は、常に試行錯誤しています」と付け加える。しかし各々にしっかり寄り添った指導は、選手達に通じているように見えた。

~指導者にも有意義でリラックスできた野球教室
「選手もそうですが、親御さんが熱心だったのが印象的でした」と井戸総監督は振り返る。
「野球をプレーする上で、まずは“投げる”ことを重視されているのが伝わってきました。普段の野球生活の中では、わからないことも多かったのではないでしょうか。身体の使い方をしっかり習得して、理に適った投げ方を身につけてもらえれば嬉しいです」
「動画サイト等にも色々上がっていますが、わかりにくい部分も多いですから」ともいう。一流の指導者に触れられる機会があるのなら、活用しない手はない。
「指導した選手達と同年代のポニーリーグU12日本代表監督を務めています。彼らは選りすぐり選手なので現時点でのレベルはもちろん違いますが、今日会った中にも良い素材は確実にいました。今後、成長期を迎えて身体ができることで飛躍的に上達する選手もいるはず。まずは怪我・故障なく、楽しくプレーを続けて欲しいと思います」
野球教室が終わった後には、選手と親御さん達には充実感が溢れていた。野球の奥深さを知ると共に、さらに興味を深めて今後も取り組んでくれれば開催した意義があるというものだ。
「普段と異なる環境を経験でき、我々にとっても新鮮で楽しい時間でした。ある意味で“積極的休養”のような感じで、素晴らしい気分転換にもなりました。こちらの方がお礼を言いたいです」

まもなくすると秋の公式戦も始まり、勝負の世界に戻ることになる。指導者達にとっても、東京での野球教室は有意義なリラックス時間になったようだ。野球好きが集まり、上手くなるために時間を共有する。笑顔が溢れた夏の時間は、野球の原点を感じさせるものでもあった。
「野球・ベースボールの素晴らしさをたくさんの子供達に感じてもらいたい。そして野球組織から学べることの素晴らしさを、保護者の方にも改めて認識してもらいたいと思います」
1人でも多くの選手がこれから先も野球を続け、楽しみ、人に愛される野球、野球少年達になって欲しい。関メディベースボール学院の目指す場所はブレない。
(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力・関メディベースボール学院、ダイアモンドベースボールアカデミー、BEAST LAB)
