アメフト・アサヒ飲料チャレンジャーズ、女神たちはハイブリッドな応援を現在進行形で作り上げる
アメフト・アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ(以下チャレンジャーズ)の新章が始まった。
国内最高峰XリーグSUPER昇格を果たした1年目シーズン。選手、スタッフと共に新たな戦いに挑むのが、チャレンジャーズチアリーダー(以下チャレチア)。コロナ禍でいまだ活動制限される中ではあるが、「元気」と「謙虚さ」そして「挑戦」を忘れない。
9月10日のXリーグ開幕戦、チャレンジャーズはエレコム神戸ファイニーズと対戦(神戸・王子スタジアム)。お互い兵庫県が本拠地でプレーオフ進出のライバルとされるチームとの一戦。試合終了直前までもつれる熱戦に「10-17」で惜敗した。
~チアは天職と勝手に思っています(チャレチア・キャプテン平松眞子氏)
「開幕戦の負けは引きずってしまいました。改めて『このチームがめっちゃ好きなんやな』と痛感しました」
キャプテン平松眞子氏は、悔しさから語り始めてくれた。
「昨年はSUPER昇格という明確な目標があった。今年はさらに勝利への思いが強くなっています。チアは選手ではないので、勝敗に直接関わることはできません。でも応援は必ず選手に届くはず。一生懸命応援して勝つことで、我々の存在価値を感じることもできます」
「勝った時には『多少は貢献できたかな』という喜びを感じられます。偉そうですが勝利の女神になれたかなって(笑)。自分たちのパフォーマンスも試合日のために作り上げるので、勝利への思いも選手同様に強くなるのかもしれません」
チャレチア3年目の平松氏は、高校進学時から「チア部での応援活動をしたい」と考えていた。しかし高校にチア部がなかったため、クラブチームに在籍して団体競技のチアリーディングを学び、龍谷短大への進学後に晴れてチア部入りした。
「高校時代はアクロバティックで競技性の強いチアリーディング部。大学で応援主体のチア部に入り野球、アメフトの応援に行くようになりました。最初は自分が踊れる、可愛いユニフォームを着られるのが楽しかった。自分のパフォーマンスを披露したい気持ちが強かった」
「『応援のおかげで勝てた』と選手に言ってもらえることに衝撃を受けました。選手の力になれることに喜びを感じるようになりました。しっかりとパフォーマンスをしたい。そして見ている人にも楽しんで欲しい。自分の中の考え方が大きく変わりました」
短大卒業後は幼稚園の仕事に就き、チアから一度は遠ざかった。多忙な日々を過ごす中、知人がいたこともありチャレンジャーズの試合を見に行く機会に恵まれた。他チームと応援の方法が異なり、スタンドでお客さんを盛り上げるチャレチアのスタイルが胸に刺さった。
「率直に楽しかった。アメフトはフィールド上でパフォーマンスするチームが多い。でもスタンドで応援できるチャレチアは違うと感じました。目の前で踊っているチャレチアを見ているだけで楽しかった。『私もチアをしたい』と思い、すぐにトライアウトを受けました」
「チアも幼稚園の先生も献身性が必要という意味では似ています。自己分析すると、『人の役に立ちたい』タイプかもしれません。だからある意味でチアは天職かもしれません。自分では勝手にそう思っています(笑)」
~チアの歴史や存在意義を伝える立場でいたい(チャレチアOG井谷友紀氏)
「『チアの応援があったから勝てた』になっていない。接戦で負けたことで現実を感じました」
OG井谷友紀氏は、今季からコーチ・アドバイザー的役割となり温かくも厳しい視線を送っている。
「簡単にいえばアドバイスする立場。話は以前からありましたが、今季から正式にお願いされました。今まではイチ相談相手でしたが、今後は解決策まで一緒に考えて見つけたい。正式な肩書きはまだ決まっていないですが、すべきことは明確です」
井谷氏は2000年代の黄金時代など、歴史を知り尽くした人物。当時チャレンジャーズのチーム応援を委託されていた聖和大(現在は関西学院大と合併)に2001年に入学、チア部の一員として関係が始まった。2005年に大学卒業後は現場マネージャーを務めた後、現在に至るチャレチア応援のベース作りにも関わった。
「ライスボウルで関西学院大に負けたシーズンからです。私は大学卒業でチアを一度は引退、マネージャーを任されました。2007-08年シーズンを前に、聖和大と関西学院大の合併の話が出ました(翌2009年から合併)。両大学にチア部があったので、聖和大チア部によるチャレチア活動を停止することになりました」
「同シーズン最終戦、聖和大OGに特別に応援を頼まれました。ダンスで魅せるのではなく、応援するスタイル中心でやったら盛り上がった。この形で新しいチャレチアを作ろうとなり、それが今の原型になりました。同時に私も現役復帰を果たし、2013年までパフォーマンスにも参加しました」
2度目の現役引退、チアOGとなってからも試合を見に足を運んだ。その都度、現場からの相談を受けることがあったが、外部の人間なので発言には気を遣った。X1SUPER昇格のタイミングで平松氏から正式に依頼があり、コーチ・アドバイザー的役割のオファーを受託した。
「チャレチア全体のレベルアップに少しでも貢献できれば。その上でチームの歴史や存在意義をしっかり伝えたい。まずはスポンサーとの関係性、距離感。チャレチアはユニフォームなどの備品、待遇面などが恵まれている。スポンサーの存在が大きく、これが当たり前ではない」
「リスペクトしてさらに良い関係性を作り出したい。例えば、持参するドリンクはスポンサーの商品にする。そういう小さな配慮が大事。このご時世でもアメフトという競技を支えてくれる。感謝の気持ちを忘れてはいけないと思います」
~元気、爽やかさ、パワフルの現在進行形
強豪ひしめくX1SUPERの舞台、チームは今後も苦戦が予想される。チアチャレにできることは、勝利につながる最高の応援をすること。パフォーマンスを少しでも高め、応援をチームに届けなければならない。
平松氏はキャプテンとしての重責を感じる時もあるというが、笑顔を絶やさず前を見据える。
「まずは自分自身のパフォーマンスを上げること。キャプテンとしては、メンバー全員のスキルアップと共にモチベーションを高める。今までやったことのないチャレンジに局面しているので、大変ですが気持ちは常に前向きです」
「今のチャレチアは若い子が増えています。色々と試行錯誤しつつ、井谷さんとも相談しながらやっています。チャレチアらしさを守りつつ、今までと違うことにもトライしたい。元気でパワフルなパフォーマンスを見ていただけたら嬉しいです」
井谷氏はコロナ禍で縛りの多い現状を気にしつつも、チャレチアの大きな可能性を信じている。
「コロナ禍もありフィールドでしか踊れずスタンドに立てない。魅力が伝わりづらいかもしれません。でもこの先、スタンドに立った時にチャレチアの良さがさらに伝わるはず。その時に向けて少しでもレベルアップしたいです」
「元気と爽やかさがウリ。完璧なカッコイイダンスというより、お客さんと一緒に成長していく。レベルが低過ぎては問題外ですが、良くも悪くも擦れていない感じがチャレチア。現在進行形の成長を見守って欲しい」
チームはもちろん、チャレチアも新時代に突入している。現役チアのアイディアやパフォーマンスにOGからの貴重な意見を加える。ハイブリットな応援形態を作り出している真っ最中、まさに現在進行形だ。
「選手はもちろん、チアだってアメフトの魅力を発信できるはず。少しでも貢献できれば良いかなと思います」(平松氏)
「どんどん魅力を発信して集客にもつながれば嬉しい。選手もチアも多くのお客さんの前でパフォーマンスできれば最高です」(井谷氏)
チャレチアたちは試行錯誤を続けながら成長の歩みを止めない。今は小さな一歩の積み重ねだが、その道はアメフト人気の底上げにもつながっているはず。コロナ禍が収まりスタンド応援解禁となった時、チャレチアが何を見せてくれるのかが楽しみ。チーム名同様「チャレンジ=挑戦」をやめない女神たちを見守っていきたい。
(取材/文・山岡則夫、取材/写真協力・アサヒ飲料クラブチャレンジャーズ)