歴史の継承とさらなる発展を目指す「九州ボウル2024」

 九州でのアメリカンフットボールの歴史が始まってから50周年を迎えたことを記念し、2024年4月7日に記念すべき第1回目の「九州ボウル2024」が行われる。

日本社会人アメリカンフットボール協会に所属するotonari福岡SUNSの代表兼西南学院大学アメフト部監督を務める吉野至氏が主導する形で始まった当プロジェクト。九州社会人アメリカンフットボール連盟、九州学生アメリカンフットボール連盟、九州フラッグフットボール協会といった九州でアメフトに関わる全団体が連携し、開催されることになった。

そこで今回は、吉野氏に加え、九州学生アメリカンフットボール連盟・松下哲也氏、九州社会人アメリカンフットボール連盟理事長・藤倉聖史氏、九州フラッグフットボール協会・福田二郎氏に第1回目の「九州ボウル2024」に向けた意気込みを伺った。

九州アメリカンフットボール50年の歴史を継承していく

西南学院大アメフト部で行われた50周年記念式典の様子。写真提供:西南学院大アメリカンフットボール部

 九州におけるアメリカンフットボールの歴史は、1973年に西南学院大学と福岡大学のアメフト部創設が起源とされている。2023年で創部から50年を迎え、各大学で50周年の式典が開催された。そして今回、九州のアメリカンフットボールに関わる団体が一堂に会し、第1回目の「九州ボウル2024」が行われることが決まった。

九州アメフト50年の歴史が綴られた『九州アメリカンフットボール50周年史』

 当プロジェクトの開催に併せ、『九州アメリカンフットボール50周年史』が発行される。1973年から50年の時が経過し、当然ながら創成期を知る人が減ってきている。

「創成期に関わった人たちの強い思いを繋いでいかなければならない」と吉野氏は語る。自身も福岡SUNSの創設に関わったからこそ、50年の歴史を伝えていく意義を強く感じている。歴史が途絶えなかったのは、多くの困難を乗り越えた創成期に関わった人々の存在があってこそ。50周年史には現在の人が知らないような出来事が綴られている。

吉野氏は当プロジェクトを通じて、「過去の人も現在の人も相互に感謝し合い、皆で九州のアメフトをさらに盛り上げていこうという雰囲気になれば嬉しい」と話す。

“九州ボウル”を通じて、アメフトの魅力を伝える

 当プロジェクトのメインイベントとして、九州学生アメリカンフットボール連盟と九州社会人アメリカンフットボール連盟のメンバーから構成される九州オールスターチームと、国内トップリーグにあたるX1SUPERに所属するotonari福岡SUNSによる『九州ボウル2024』が予定されている。

1973年から歴史を繋いできたが、コロナ禍により勧誘活動などが制限されたことを機に各大学で部員数が減少。また、プレー人口の減少も相俟って、九州社会人連盟に所属するチーム数も以前に比べ、大幅に縮小した。最大で13チームが所属していた時期もあったが、現在は4チーム(うち1チームは休部状態)となっている。

『九州ボウル2024』を通じて、現在プレーをしている選手も含め、これからアメフトを始めようとしている人たちにもアメフトの魅力を伝えていく狙いがある。

「アメフトの華やかさを知ってほしい」と語るのは、九州学生アメリカンフットボール連盟・松下氏だ。アメフトはスポーツの中では珍しい攻撃だけでなく、守備でも盛り上がれる競技だ。守備時には豪快なタックルがあり、球技でありながら、格闘技の要素も兼ね備えている。

また、1プレーごとに選手交代ができ、自分の強みを活かせるプレーが1つでもあれば、試合に出るチャンスが得られる競技でもある。大柄な選手のイメージが強いアメフトだが、身体が小さい選手でも、それを生かせるポジションがある。なにより九州では、大学からアメフトを始める選手がほとんど。全員が横一線でのスタートとなり、どんな選手でも自身の強みを生かせる場があるのが、アメフトの魅力とも言える。

アメフトの華やかさを伝えていく。

 九州オールスターチームは、各大学から必ず2選手、各社会人チームから4選手が選出される。一方、otonari福岡SUNSも4月は春季リーグの開幕に向け、仕上がっている状態だ。『九州ボウル2024』ではレベルの高い試合が予想され、大きな盛り上がりが期待されている。

九州からフラッグフットボールのオリンピック選手を

 第1回目の「九州ボウル2024」では、フラッグフットボールの体験会も予定されている。フラッグフットボールは2028年に開催されるロサンゼルスオリンピックの正式種目に決まったばかりだ。九州フラッグフットボール協会では来たる2028年に向け、九州からオリンピアンの輩出を目指し、選手の育成や強化に取り組んでいる。

現在はコロナ禍の影響もあって制限されているが、2004年から韓国・釜山のチームと交流試合を行うなど、国際交流をメインに活動を行ってきた。しかし、これまではアメリカンフットボールとの関わりがあまりなかったという。

九州フラッグフットボール協会・福田氏は、「今回のプロジェクトを機にアメフトとフラッグが共に盛り上がり、相乗効果を作り出したい」と語る。

小学生にも人気のフラッグフットボール。写真提供:九州フラッグフットボール協会

 九州では老若男女問わず、多くの人が楽しんでいるフラッグフットボール。特に体育の授業に盛り込まれていることもあり、小学生など若いプレイヤーも多い。一方、大学卒業後にアメフトからフラッグに転向する人もいれば、小中学生時代にフラッグに取り組んでいた選手が大学でアメフトを始めるケースも少なくない。アメフトとフラッグの線引きをなくし、両競技が共に発展していくことが理想の形といえるだろう。

フットボール体験会では、来場者の方も参加できるイベントも用意されている。今回のプロジェクトの参加者から、未来のオリンピアンが誕生するかもしれない。

九州オールでアメフトの普及発展を目指す

 50年の歴史を持つ九州のアメフト界だが、これまでは各団体における繋がりがほとんどない状況であった。今回の50周年をチャンスに捉え、繋がりを強化していきたいと各団体の代表者は口を揃える。

特に九州社会人アメリカンフットボール連盟理事長・藤倉氏は「横の繋がりを持たないといけない時期だ」と意気込む。

人員不足を理由に九州社会人連盟に所属するチーム数は年々減少している。社会人連盟に所属する選手たちは、九州の大学でアメフトをプレーしていた人が大半だ。近年は、大学卒業を機に、アメフトから離れてしまう人や就職で上京する人も多く、人員がなかなか集まらないという。「今回の九州ボウルを機に、学生と社会人の繋がりができ、大学卒業後の選択肢の一つになれば嬉しい」と話す。

また、注目度の高いotonari福岡SUNSのファンに、学生や社会人のアメフトにも興味を持ってもらうきっかけにもなり得る。九州全体でタッグを組み、プレイヤーやファンの拡大を目指す。
『九州ボウル』は今回だけでなく、毎年継続していく予定となっている。『九州ボウル2024』の盛り上がりが、九州でのアメフトの普及発展に繋がっていくだろう。

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