知っているようで知らないNPBの「投打のタイトル」

広尾晃のBaseball Diversity
今年のプロ野球もレギュラーシーズンが終わろうとしている。セ・パ両リーグで投手、打者の「タイトル」が決定する。この「タイトル」と言うのは、何なのだろうか?知っているようでよく知らない「投打のタイトル」について、あらためて説明したい。

投手部門

・最優秀防御率
防御率は「自責点÷投球回数×9」の数式で算出される。その投手が9イニングに換算して「何点取られたか」を示す数字。現在は「チームの試合数×1」で算出される「規定投球回数」以上の投手が対象。防御率1位の投手に「最優秀防御率」のタイトルが与えられる。なお「自責点」とはその投手の「失点」のうち、失策などが絡んだ点を除き、投手の責任であると認められた失点のこと。
防御率は「野球記録の父」と言われたヘンリー・チャドウィックが考案した、打率とともに最も古い野球記録。
・最高勝率
「勝利数÷(勝利数+敗北数)」の数式で算出される「勝率」が最も高い投手に与えられる。かつては「規定投球回数以上」の投手が対象だったが、2013年以降は、投球回数に関係なく「13勝以上で勝率が1番高い投手」が「最高勝率」となっている。
・最多勝利
そのシーズンに最も多くの勝利数を上げた投手に「最多勝利」が授与される。先発投手の場合5回以上を投げて、相手チームに勝ち越していて、その投手が降板後もリードを保った場合、先発投手に「勝利」が付く。救援投手の場合、味方が勝ち越した状況で1イニング以上投げたときに、「勝利」がつく。

京セラドーム大阪のマウンド

・最多セーブ投手
そのシーズンに最も多くのセーブ数を上げた投手に「最多セーブ」が授与される。

「セーブ」は、
勝利投手の権利を持たず
勝ちゲームの最後の投手として登板し
1/3イニング以上の投球回を記録し
同点・逆転を許さず、リードを守り切り試合を終了させ、
なおかつ下記の3条件のいずれかに該当した場合に与えられる。
 ①登板時のリードが3点以内で1イニングを投げた場合
 ②同点・逆転のピンチ(打者の連続本塁打などで追いつかれる、または逆転される状況)で登板し、リードを守った場合
 ③点差が3点以上開いていても3イニング以上投げた場合
「セーブ」は1974年に公式記録となったが、タイトルとしては1976年からセ・リーグ、77年からパ・リーグで、セーブポイント(セーブ数+救援勝利数)が最も多い投手に「最優秀救援投手賞」が与えられた。しかし、ホールドが「公式記録」となった2005年から「最多セーブ投手」に変更された。
・最優秀中継ぎ投手
2005年に「ホールド」が公式記録になった。
ホールドは
救援登板して、勝利・敗戦も、セーブもついていないこと
リードしているか、同点の場面で登板し、
降板するまでその状況を保ち、1つ以上のアウトを取って降板し、
自分が出したランナーが帰って同点・逆転を許さない
なおかつ下記の3条件のいずれかに該当した場合に与えられる。
 ①登板時のリードが3点以内で1イニングを投げた場合
 ②同点・逆転のピンチ(打者の連続本塁打などで追いつかれる、または逆転される状況)で登板し、リードを守った場合
 ③点差にかかわりなく3イニング以上投げた場合
に「ホールド」がつく。
「セーブ」がクローザーに与えられるのに対して、「ホールド」は中継ぎ投手に与えられる。

2005年に「最優秀中継ぎ」のタイトルが制定された。これは「救援勝利数+ホールド数」が最多の投手に与えられる。前述したようにこの年から「最優秀救援投手」が「最多セーブ」に変更された。これは両方のタイトルともに「救援勝利数」を加算すると「最優秀救援」と「最優秀中継」のタイトルを同時に受賞する投手がでる可能性があるためだ。
なお、ホールドはMLBで考案されたが、MLBでは「公式記録」ではなく「最多ホールド」はタイトルではない。

エスコンフィールドHOKKAIDO

打撃部門

・首位打者

「安打数÷打数」で算出される「打率」が1位の打者に与えられるタイトル。現在は「チーム試合数×3.1」で算出される「規定打席」以上の打者が対象。打率は防御率とともにヘンリー・チャドウィックが考案した最も古い野球記録。

・最多本塁打(本塁打王)
シーズンで最も多くの本塁打を打った打者に与えられる。

・最多打点(打点王)
シーズンで最も多くの打点を記録した打者に与えられる。打点は、打者が安打、長打、本塁打、犠打、犠飛などで走者を還した場合に、返した走者の数だけ与えられる。凡打や失策などでも状況によっては打点が付く。本塁打の場合は、自身の得点も打点になる。
首位打者、本塁打王、打点王を「打撃主要3部門」と言い、この3つを1シーズンに1人で獲得すると「三冠王」となる。

神宮球場のバッターボックス

・最多盗塁(盗塁王)
シーズンで最も多くの盗塁を記録した打者(走者)に与えられる。

・最多安打
シーズンで最も多くの盗塁を記録した打者に与えられる。最多安打は1994年、オリックスのイチローが210安打を打った年から「打撃タイトル」となった。長嶋茂雄は、NPB最多の10回、最多安打を記録したが、当時はタイトルではなかったので表彰されなかった。

・最高出塁率
パ・リーグでは1962年から「最高出塁率」、セ・リーグでは1967年から「最多出塁数」を打撃タイトルとして表彰していたが、1985年から両リーグで統一され「最高出塁率」となった。 出塁率は「(安打 + 四球 + 死球) ÷ (打数 + 四球 + 死球 + 犠飛)」で算出される。1985年以前は、計算式に「犠飛」は含まれていなかった。最高出塁率も「打率」と同様、規定打席以上の打者が対象となる。

京セラドーム大阪

NPBの投打のタイトルに対する疑問

NPBの投打のタイトルは、MLBとほぼ同様だが、野球の統計学である「セイバーメトリクス」の普及とともに、疑問視する声が高まっている。
1999年、セイバーメトリクスの研究者、ボロス・マクラッケンは、投手の被安打率の推移を細かく調べた結果「インフィールドに落ちる安打は野手の守備能力や守備位置などに左右されることが多い。本塁打以外の安打は、偶然の産物であり、投手、打者の実力とはあまり相関性がない」と発表した。
多くの研究者が追随して調査をしたが、マクラッケンの意見を覆すことができなかった。
このために、安打が関係する投打のタイトル=防御率、自責点、勝利数、勝率、打率、打点の妥当性を疑問視する声が上がっている。
今のMLBでは投手の場合「防御率」「勝利数」より「奪三振率」「QS(先発で6回以上投げて自責点3以下、先発投手の最低限の責任)」「SO/BB(奪三振数÷与四球数)」などの数字の方が重視されている。

打者の場合も「本塁打数」「出塁率」は変わらず重視されるが「打率」「打点」よりも「OPS(出塁率+長打率)」の方が重視されている。
NPBでは依然として投打の打撃タイトルは重視されるが、MLBに移籍する可能性がある選手について、MLB側は投手は球速、奪三振率、SO/BB、打者は打球速度、本塁打数、OPSに注目している。
今季ヤクルトからホワイトソックスに移籍した村上宗隆は、打率.207(ア・リーグ規定打席以上65人中61位)の低打率だったが、35本塁打(5位)、OPS.825(10位)が評価され、ホワイトソックス躍進の原動力とされた。
NPBのタイトルもそうした観点から見直す必要があるだろう。





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