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元プロアイスホッケー選手・安藤永吉「アイスホッケーは人生における最高の寄り道」

元プロアイスホッケー選手・安藤永吉「アイスホッケーは人生における最高の寄り道」

元アイスホッケー選手の安藤永吉は、教員という第二の人生を歩み始めた。プロ生活に区切りをつけ新たな道を選んだのは、あらかじめ描いた人生プラン通りだ。

アジアリーグ・東北フリーブレイズで3シーズンに渡ってプレーした。

~現役時代から教員セミナーへ通っていた

アスリートにとって現役引退後のセカンドキャリアは重要な問題だ。指導者として競技と関わり続ける者もいれば、全く異なった道へ進むケースもあり、それぞれが大きな選択を迫られる。

「チームとの3年契約が終わるタイミングで、もう1つの道へ進んだということです」

国内アイスホッケー最高峰のアジアリーグ・東北フリーブレイズでプレーした安藤は、3年でプロ生活に区切りを付けて教員という仕事を選択した。

選手としての経歴は素晴らしい。駒大苫小牧高(北海道)では主将としてインターハイ優勝。法政大でも4年時に主将を務め、2023年冬季ワールドユニバーシティゲームズ(米国・レークプラシッド)日本代表にも選出された。卒業後は東北フリーブレイズへ加入、2025-26年シーズンをもって現役引退した。

「高校3年では主将でインターハイ優勝できたし、法政大時代には冬季ワールドユニバーシティゲームズ日本代表にもなれました。アジアリーグでプロとしてプレーもできた。アイスホッケー選手として考えると、自分の中ではやり切った感じで満足感があります」

プロアイスホッケー選手を引退したことについては、何の未練もない。教員の道を選ぶことは以前から決めていたことであり、今後への希望や期待に満ち溢れている。

「現役時代から練習後に教員セミナーへ通うなど、準備は進めていました。チームとの契約が切れるタイミングでもあり、中学1年生の頃からの夢のために決断しました。前年の倍以上の成績を残せたので、自分の中で『やりきった』という手応えもありましたので、転身を決めました」

教員を目指すきっかけは、中学1年時の恩師と呼べる先生との出会いだった。何を尋ねても丁寧、親切に対応してくれる姿勢に感銘を受けた。また友人に勉強を教え理解してもらえた時の喜びも原点となっている。

「勉強も部活も熱心な先生でした。生徒一人ひとりをしっかり見ている人で、『この人すごい』と子供ながらに感じた。『こういう先生になりたい』と考え始めました。また勉強は多少はできた方でしたので、友達に教えてあげる機会もありました。教えたことを理解してもらえる喜びを感じたのも理由の1つです」

2023年冬季ワールドユニバーシティゲームズでは日本代表として活躍。

~主将経験が教員にも活かされている

青森県八戸市教育委員会の臨時講師募集に応募、今年6月15日から八戸市立第二中へ赴任した。社会科教員として1年生3クラス(計91名)を対象に週10~12コマの授業を担当する。

「『これくらいの授業数は任されるだろう』とある程度の覚悟はしていました。生徒にとって教師が新人というのは何も関係ないので、しっかり準備して向き合おうと常に考えています。試行錯誤や探りながらの部分もありますが、1つずつ確実にクリアしていこうと思います」

また道徳の時間等を活用して「元プロ選手として夢を叶えた経験」や「目標に向かう努力のプロセス」を生徒に伝える指導も行う。

「数ヶ月前までは現役でしたし、実際にプレーを見てくれたことのある生徒もいます。選手時代の経験、そして大怪我を乗り越えたことなどを話すと真剣に耳を傾けてくれます。少しでも良いので、何かを感じてもらえれば嬉しいです」

「年齢も近いですしお兄ちゃんみたいな感じではないでしょうか」と、生徒達との関係性を語る。「『新任とは思えないほど打ち解けている』と他の先生にも言われます」と笑顔も見せてくれた。

「高校、大学と主将をやってきたことの影響があるのかもしれない。特に駒大苫小牧高時代は、全国制覇が絶対目標のような環境。重圧がかかる状況下でチームを1つにまとめ結果に繋げる役割でした。大変な仕事でしたが、経験できたことは本当に大きかったと思います」

駒大苫小牧高3年時、主将としてインターハイ優勝を飾ったことが大きな支えとなっている。

~地元・八戸開催の“全中”で頂点を目指す

授業が終われば“本職”の指導も行う。部員25名(男子21名、女子4名)のアイスホッケー部コーチとして、地元・八戸開催の全国大会優勝を目指すチームを支える。

「週5日、氷上練習と陸上トレーニングを行なっています。部活動体制としては、今年の全国中学校アイスホッケー大会が最後となります。地元開催なので有終の美を飾るために懸命に頑張っています」

アイスホッケーを教えることに戸惑いはない。フリーブレイズ時代にジュニアのスクール指導をした経験が役立っているようだ。しかしそれでも、中学生の部活動となると異なる部分もある。

「3年と1年のレベル差(技術、身体能力)が大きいのが難しい部分です。疲労具合も違いますし、怪我の心配もあります。レベル差を考慮して、メニューや組む相手を決めることに神経を注ぎます」

“氷都”と呼ばれる八戸市だけに、プレーできる環境や場所には恵まれている。家族・関係者の協力もあり、氷上練習の回数は数多くこなせる。

「氷に乗れる回数が多いことはありがたいです。しかし北海道の学校とは、まだまだ実力差があります。生徒達に早い段階で現実を知ってもらいたいので、強豪の集まる北海道苫小牧市へ遠征を行うなど実戦力を強化しています」

全国中学校アイスホッケー大会は、日本中学校体育連盟主催(“全中”)としては今年度が最後。今後はクラブ単位形式での実施になる予定で、地元開催となる最後の“全中”で頂点を狙う。

地元・八戸開催の全国中学校アイスホッケー大会(全中)での優勝を目指すチームを熱心に指導する。

~この道が正解だと思う

クラスでの授業と放課後のアイスホッケー部の活動。教員1年目から学校内外での“二刀流”に全力を注ぐ。

「本当にやりがいがあります。毎日多くのことが起こりますが、全てが新鮮で勉強になります。教員は生徒の人生を左右する責任重大な職業ですが、高校時代の主将を務めた時に比べたら重圧には感じません」

「子供達の成長や変化を間近で見られるのが嬉しい。一人ひとりと接することで、性格や考え方が全く違うことがよくわかる。声をかけたり対応する時、間違うこともあるとは思います。でも決して目を逸らさず、しっかり寄り添っていこうと思います」

生徒達にとって最も近い場所にいる“大人=教員”の重要性を認識している。そして「部活動を通しては、少しでもアイスホッケー界に恩返しできれば…」とも付け加える。

「生徒に寄り添う先生であり続けたい。部活指導者としては、アイスホッケー界に少しでも貢献できれば嬉しい。どちらも僕にしかできないことだと思います」

多くの努力を重ね、アイスホッケー選手と教員という2つの異なった夢を叶えた。

競技者に対する未練はなく、夢だった教員という職へ真っ直ぐ向き合っている。氷上から教室へと舞台を変え、未来を歩む子供達に影響を与え始めている。

「『アイスホッケー選手時代は良かった』という思いは全くない。選手としては納得いくまでやれたので、教員に全精力を注げています。もちろん部活指導者も含まれます。自分のやりたいことに辿り着けたという思いがあり、この道が正解だと感じます」

「アイスホッケーは夢の1つであり、最高の寄り道でもありました」と笑顔で話を終えてくれた。安藤永吉先生が今後どのような教員になっていくのか、楽しみでしかない。

(取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:安藤永吉、取材協力/昆恵美子)

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