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サッカーでストライカーが活躍するチームの条件とはースポチュニティアンバサダー ストライカーコーチ 長谷川太郎ーパート2

 スポチュニティアンバサダーの一人である長谷川太郎氏。彼は、今年全国地域チャンピオンズリーグで全国優勝を果たしたブリオベッカ浦安のストライカーコーチという肩書を持つ。

 今回の記事では、前回のパート1に引き続き、長谷川氏がストライカーコーチとして活動を始めたきっかけや、ブリオベッカ浦安が全国地域チャンピオンズリーグ1で優勝した要因について、話を聞くことができた。(パート1はこちら)

ストライカーコーチとしての活動のきっかけは子どもたち

ー長谷川さんがストライカーコーチとして、活動することになったきっかけを伺えますか。

2011年に浦安JSC(ブリオベッカ浦安の前身)に加入したのですが、その頃から選手としてプレーする一方で子どもたちにサッカーを教えていました。すると、あるコーチから『子どもたちに、1時間くらいシュートトレーニングをしてくれ』と頼まれたことがあったんです。その時は『子どもたちに1時間のシュートトレーニングなんて、時間が長くて飽きちゃうかもしれないな』と思ったんですが、実際にやってみると、子どもたちは飽きることなく1時間のトレーニングをこなしたんです。その時に、こういうトレーニングって需要があるんだな、と思いました。

 私自身はストライカーコーチになるために、学校のようなところに行って学んだわけではないので、自分が蓄積してきた知識や経験を教えることで、改めて自分も学んでいった感じですね。例えば、2005年に私がJ2の得点王になった頃コーチから教えてもらったこととか、柏レイソルにいた友人が『うちのチームのフランサ(フランソアウド・セナ・デ・ソウザ 。日本の柏レイソルと横浜FCでプレー経験もある元ブラジル代表。現在も日本在住。)って、ボールを持っていないときの動きがすごいんだよ』といえば、フランサの動きを注意して見ていたりとかしていました。また、1994年のFIFAワールドカップアメリカ大会で得点王だったフリスト・ストイチコフとも話をしたりすることで、いろいろ学んでいきました。

 そして、2015年のアジアカップで、日本代表が決定力不足で負けたのを見たときに、『やはり自分はストライカーコーチとして、活動する必要があるんじゃないか』と強く思ったんです。」

ブリオベッカ浦安の全国優勝は、ゴールまでのイメージが共有できた成果

ーでは、ストライカーコーチである長谷川さんから見て、今年ブリオベッカ浦安が、全国地域チャンピオンズリーグで優勝した最大の要因とは、どのようなものだったと思われますか。

「今回のブリオベッカ浦安はチーム全体で成し遂げた成果であるという前提でお話させていただきますと、優勝の要因は、シーズン前からやってきたことのイメージがチーム内で合うようになってきたこと、そしてシュートトレーニングを選手の意見を取り入れながら改良してきたことの2つがあると思います。

 チームにとって今年のターニングポイントになった出来事がありまして。ある時一人のフォワードの選手が『なかなかボールが出てこないし、どうも他の選手と目が合わない』と、私に話をしてくれたんです。実はそのころ私も同じことを感じていたので、それから選手同士の目が合うようなトレーニングを多くして、ゴールまでのイメージをチーム全体で合わせることに重点を置いてみました。すると、そのようなトレーニングをしたあとからゴールが生まれて、試合の結果にもつながるようになりました。また、同じ時期に別の選手にもそれまでやってきたシュートトレーニングの成果がでてきて、ゴールを決めることができるようになったんです。そうした選手たちから『太郎ちゃん(長谷川氏)のおかげだよ!』って言ってもらえたのが、コーチ冥利に尽きるというか、とても嬉しかったですね。同時にほっとしました。

 それまでも、試合で起こるであろう状況を想定して、日々シュートトレーニングはしていました。でもその上で、選手の意見を取り入ながらトレーニングを改良してきた結果が、今回のJFL昇格に繋がってくれたのかなと思います。

 そういえば、今シーズン中に、ストライカーだけでなく、ミッドフィルダーの選手にも『ストライカーにこういうパスを出して欲しいんだけど、今日シュートトレーニングに付き合ってくれないか』と私が頼んだことがありました。そうすると『あ、パスの出し手もシュートトレーニングに参加して良いんだ』という感じになって、他のポジションの選手もトレーニングに参加してくれるようになったんです。

 それまでは、シュートトレーニングでは、ストライカー以外の選手には『トレーニングに来れる選手が参加してくれればよい』と私は思っていました。でも、パスの出し手もトレーニングに参加することで、ストライカーとパサーのコミュ二ケーションが良くなったのだと思います。そして、ミッドフィルダーの選手がシュートトレーニングに加わったら、今度はディフェンスの選手も参加してくれるようになりました。その結果、チームのみんなの頭の中にゴールまでの統一したイメージが作られたことが、優勝につながったのだと思います。

 逆にシーズン中にチームが上手く機能しない時期というのは、試合中ボールを回していても、最後のパスを出す選手やゴールを決める選手が見えてこない時期でもありました。ブリオベッカ浦安は良いチームなので、ボールを動かすことは問題なくできるのですが、誰がラストパスを出して誰がゴールを決めるのかというイメージが見えてこない時期の成績は、良くなかったですね。

 私はストライカーや最後のパスの出し手が、チームの中に複数存在してもよいと思っています。『この場面では、〇〇選手がラストパスを出して、△△選手がゴールを決める』というように、ゲームの状況に合わせたゴールまでのイメージがチーム全体で共有できるのであれば、ストライカーやラストパサーが複数いたほうが、ゲームに勝つ可能性が高くなると思います。」

ー最後の質問になります。ちょうど今(2022年12月中旬)、FIFAワールドカップカタール2022が開催されています。長谷川さんから見て、今回のワールドカップのベストストライカーは誰だと思いますか。

「ワールドカップに出るような選手は本当に良い選手ばかりなので、ベストストライカーを選ぶのは難しいです。その中でもメッシ選手(アルゼンチン)は『俺がゴールを決めるんだ』という意志が非常に強いように見えます。やはり、彼は名ストライカーですよね。」

 インタビュー中、長谷川氏はゴールまでの「イメージを合わせる」ことの重要性を何度も語った。ゲームにおいて、相手からボールを奪ってからゴールを決めるまでの道筋をチーム全体で共有できるようにすることが、ストライカーコーチの重要な役割であることがよく分かるインタビューとなった。

 来季、 ブリオベッカ浦安はJFLでシーズンを戦うことになる。「上のクラスに行くと、個人個人の力が重要になる」と語る長谷川氏だが、「Jリーグ」で彼のストライカーコーチの役割の重要性を披露する最高の舞台となるであろう。

1.全国地域チャンピオンズリーグとは、全国9ブロックから勝ち上がった地域リーグのチーム(9チーム)と全国社会人サッカー選手権大会の上位3チームが、地域リーグ日本一を目指して戦うもの。日本国内で地域リーグに所属するサッカーチームは143ある(2022年時点)。

(写真提供 長谷川太郎)

(インタビュー・文 對馬由佳理)

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