宇田川、大関に続け…元プロコーチお墨付きの仙台大・武者倫太郎&相原雄太が「勝負の大学3年目」に臨む
近年、仙台大出身投手の躍進が目覚ましい。オリックス・宇田川優希投手(2021年卒業)は昨季支配下登録を勝ち取りブレイクを果たすと、活躍が評価されWBC日本代表に選出された。昨季7勝をマークし、オールスターにも出場したソフトバンク・大関友久投手(2020年卒業)は、自身初の開幕投手に内定している。
在学中の投手にもプロを狙える逸材が複数おり、中でも坪井俊樹コーチが伸び盛りの投手として名前を挙げるのが、新3年生の武者倫太郎投手(帝京)と相原雄太投手(伊奈学園総合)だ。宇田川、大関を指導し、自身もロッテで投手としてプレーした坪井コーチが期待を寄せる右腕2人に、話を聞いた。
「体重移動」意識し連日の自己最速更新
昨年11月の仙台六大学野球秋季新人戦。仙台大は決勝で東北福祉大に敗れ準優勝に終わったが、チームで唯一連投した武者の好投が光った。2試合ともに救援登板し、計2回3分の1を投げ4奪三振無失点。準決勝の東北学院大戦で自己最速を2キロ上回る146キロを計測すると、決勝の東北福祉大戦ではそれをさらに上回る148キロを叩き出した。
その後の練習試合でも結果を残し、明治神宮大会では上々の全国デビューを飾る。初戦の國學院大戦、2点ビハインドの7回に4番手として登板し、満塁のピンチを背負ったものの無失点で切り抜けた。
帝京高時代は投打で活躍した、伸びのある直球と制球力の高さが武器の右腕。大学2年目の昨年は、右肩上がりの1年だった。春は公式戦の登板機会を得られなかった一方、秋は開幕戦で1年春以来のリーグ戦のマウンドに上がった。しかし、秋のリーグ戦でベンチ入りしたのはこの1試合のみ。「球速もコントロールも変化球も、今の仙台大投手陣の中では物足りなさがあった」と実力不足を痛感した。
それでも、ベンチに入れない期間を「自分を見つめ直す機会」と捉えることで、自身の成長につなげた。体重移動の仕方や出力の上げ方を学ぶ中で、投球の際に上げてから一度止めていた左足を止めずに投げるようフォームを改良。すると徐々に球速が上がっていった。武者は「右足に体重を乗せてから左足に移し替える流れをつかむうちに、球速が出るようになった」と手応えを語る。
成長を後押しする仙台大の刺激的な環境
普段生活している寮の同部屋には、川和田悠太投手(八千代松蔭)、ジャクソン海投手(エピングボーイズ)、濱崎鉄平投手(土浦三)、といずれもブルペンで150キロ以上の直球を投げる新4年生の右投手がおり、「自分も速くなりたいという思いが自然と湧いてくる」と刺激を受けている。部屋で常にストレッチをし、野球談義に花を咲かせる3人の姿を目に焼き付けているという。
今オフはリーグ戦での先発登板を視野に入れながら、食トレや筋トレによる体づくりに励んできた。また150キロ以上の球速を目指す一方、5種類の変化球(カーブ、スライダー、チェンジアップ、ツーシーム、カットボール)も磨き、試合をつくることをイメージしながら練習に取り組んでいる。
「ドラフトまであと2年と考えずに、今年が勝負だと思って結果にこだわりたい」。プロを志す上で、この1年は大切な1年になる。大学3年目は、一段とスケールアップした投球を見せてくれるはずだ。
トミー・ジョン手術を経て135キロ→152キロ
昨秋の新人戦で武者を上回る最速149キロを連発したのが、同学年の相原だ。身長190センチ、体重92キロ。恵まれた体格から投げ下ろす直球は、仙台大投手陣の中でも随一の威力を誇る。
昨春リーグ戦デビューし、2試合に登板。秋は登板機会に恵まれなかったが、新人戦直前の練習試合でそれまでの最速を6キロ上回る152キロをマークするなど、大きく飛躍した。
埼玉県立の伊奈学園総合高出身。「エース兼4番」として臨んだ3年夏は、県大会1回戦で敗退した。当時の最速は135キロで、野球は高校までで辞めるつもりだった。それでもポテンシャルの高さを見込まれ仙台大へ。ただ、3年の11月にトミー・ジョン手術を受けた影響で、大学入学後しばらくはリハビリ生活が続いた。
再び投げられるようになったのは、大学1年の12月頃だった。この時ブルペンで投げると、高校時代に計測したことのない140キロがいとも簡単に出た。実戦復帰後もコンスタントに140キロ台の直球を放ることができ、「軽く投げても強い球を投げられる感覚。まっすぐで押せるのが気持ちよくて、嬉しかった」と初めての感覚を味わった。
モチベーションの源泉は先輩右腕とチームメイトの存在
相原は、リハビリ期間中に球速が伸びた要因は二つあると考えている。一つは下半身の強化。投げられない分、ウエイトトレーニングに多くの時間を費やした。もう一つはフォームの変更。スリークォーター気味のフォームを肘、肩に負担をかけないよう上から叩き下ろすフォームに変えたことも、球速アップにつながったという。
大学2年目の昨年は、公式戦のマウンドも経験する中で意識の変化が現れた。球速が伸びたことで得た自信と、春のリーグ戦終盤でベンチを外れた悔しさが、プロを目指すきっかけとなったのだ。下半身の強化や体幹を鍛えるトレーニングを継続するなどし、秋にかけてさらに球速を伸ばした。
理想は「来ると分かっていても打てない」直球と、落差のあるフォークを操れる本格派投手。大学の先輩である宇田川はまさに理想だ。宇田川の投球動画を繰り返し見て参考にしているといい、「宇田川さんをはじめとした先輩たちがプロへの道をつくってくださった。その道に続いていけるよう、プロのスカウトにアピールしたい」と力を込める。
速球派投手の多い仙台大において、先輩や同期はもちろん、左で150キロ前後の直球を持つ渡邉一生投手(日本航空/BBCスカイホークス)をはじめとした新2年生の投手陣からも刺激を受けている。武者同様、チームメイトとの競争がモチベーションを高める最大の要因だ。他を圧倒するような投手となり、プロへの道を突き進むことはできるか。相原の成長から目が離せない。
(取材・文・一部写真 川浪康太郎/写真提供 仙台大硬式野球部)