2年連続明治神宮大会出場を目指す仙台大、森本吉謙監督の打線へのこだわりと“山村学園出身1、2番コンビ”の奮闘
仙台六大学野球秋季リーグ戦は第2節までを終え、2年連続の明治神宮大会出場を目指す仙台大は開幕4連勝スタートを切った。打線は本塁打こそ出ていないが要所要所でつながりを見せており、4試合で計28得点。中でも、高校の先輩後輩で同じ左打ち外野手である川島優外野手(3年=山村学園)、平野裕亮外野手(2年=山村学園)の“山村学園出身1、2番コンビ”は高い出塁率を誇り、相手バッテリーの脅威となっている。チームを率いる森本吉謙監督の打線へのこだわりと、期待に応える1、2番コンビの現状を取材した。
「いろんな選手を起用」「9番に良い選手を」指揮官が思い描くつながる打線
「打順を固定してもあまり面白くないし、いろんな選手を起用して日替わりヒーローが出るチームは強いと思う」。7-0と快勝した東北大2回戦の試合後、森本監督にスタメンや打順を決める際のこだわりを聞くと、そんな考えを明かしてくれた。最終的なオーダーを決めるのは試合当日の朝。この日も状態の良かった木村泰賀内野手(1年=常磐大)を「8番・指名打者」でスタメン起用すると、その木村が2回に貴重な追加点を呼び込むリーグ戦初安打初盗塁を記録し、勝利に貢献した。
森本監督が打順を決める際に重視しているのは、9番に誰を置くかということ。「9番で下手を打って上位に回したくない。9番に良い選手を置くというこだわりがある」。下位から上位につなげ、得点力を向上させるのが狙いだ。今秋、当初はオープン戦で好調だった川島を9番で起用する予定だったが、「あまりにもよかった」ため1番に抜擢した。
一方、空いた9番にはここまでの4試合で伊藤颯内野手(2年=鶴岡東)、小田倉啓介内野手(2年=霞ヶ浦)、小笠原悠介内野手(4年=北海道栄)と3選手が入っており、状態や相性を見極めながらの起用となっている。
積極的な打撃と俊足が光る新リードオフマン
森本監督は現状固定できている1、2番について「スピード感があり、『よーいどん』で先頭が出て送りバントだけではない様々なオプションを考えられる良いコンビ」と評価している。実際、開幕からの4試合中3試合で初回に川島が出塁しているが、平野がバントで送るケースは一度もなかった。出塁率は川島が5割(20打席10出塁)、平野が5割5分6厘(18打席10出塁)とともに高く、投手にとっては厄介な存在だ。
川島は50メートル5秒7の俊足が最大の武器。自主練習ではスタート練習に力を入れており、最も走りやすい体のかたちを身につけ、短い距離でもすぐにトップスピードに入れるよう、日々感覚を確かめている。ここまで早くも盗塁を7回企画し、成功は5回。4試合すべてで決めており、「自分が出塁してどんどん掻き回したい」との思惑を体現している。
山村学園時代は川島が9番、一学年後輩の平野が1番を打つことが多く、当時から平野につなぐことを意識していた。9番が前を打つ8人から球種などの伝達を受けられる一方、1番は最初に先発投手と対戦する上、打席に立つ回数も多い。打順の違いに戸惑いながらも、早いカウントからセンター返しを狙う積極的な打撃を見せている。
また現在は川島がレフト、平野がセンターで左中間を守っており、守備の息もピッタリ。高校では川島はセカンドだったが、「どこの位置まで打球を捕りにいくかなどはお互いに感覚で分かっている」と話し、声掛けも最小限で済むという。「平野は心強い後輩。『山村コンビ』の攻撃を初回から見せられたら」と胸を張った。
2年生のヒットメーカーは試行錯誤中
川島は1番を任される上で「嫌なバッターだと思われたい」と考えているが、その川島が「一番嫌なバッター」と表現するのが2番を打つ平野だ。
1年秋からレギュラーの座をつかみ、このシーズンはリーグ2位の打率3割5分1厘(37打数13安打)をマーク。優勝に貢献し、ベストナインと優秀新人賞に輝く鮮烈なデビューを果たした。今春もまたしてもリーグ2位となる打率5割1分3厘(39打数20安打)を残し、2季連続のベストナインを獲得。2年生ながら順調に結果を出し続けている。
今秋の開幕戦となった宮城教育大1回戦では、第1打席から第5打席まですべて四球で出塁。その後も四球での出塁が多く、第2節の東北大1回戦、今季14打席でようやく初安打となる逆方向への三塁打が飛び出した。東北大2回戦でも逆方向を意識し、第2打席で左中間を破る適時二塁打。徐々に安打も出てきたが、本人はここまでの打撃内容に満足していない。
「春はあまり攻められなかったインコースをズバズバ攻められていて、打つボールを絞れていない。四球を選ぶことも大事だけど、もっと打たないと勝てない」。意図的に四球を選べているわけではなく、より厳しくなった攻めに対応しきれていないとの自己分析だ。春に任されることの多かった1番や3番とは異なる役割を求められるが、1番とクリーンアップに好打者がいるからこそ、打ってつないで相手投手にプレッシャーを与えるのが理想だと考えている。「足の速い川島さんが出塁して、自分がつなげばチャンスが広がる。二人で掻き回したい」とさらなる活躍を誓った。
激化するチーム内競争、次のヒーローは誰だ
現状、1、2番以外に固定されているのは4番・三原力亞外野手(3年=聖光学院)、5番・坂口雅哉捕手(3年=八王子学園八王子)の二人。一般的に強打者が座り、打線の軸とされる4番には、長打力が武器の三原を起用し続けている。レギュラーを獲得した今春は東北学院大2回戦で1試合3本塁打を放つなど、リーグトップタイの4本塁打をマークした。秋は打率3割3分3厘(15打数5安打)、5打点と勝負強さを発揮している。
ただ森本監督は「4番バッターにはこだわっていない。『順番』で考えて、どうつながってどう点が入るかしか考えていない」と話しており、あくまで「4番目の打者」との認識で選んでいる。今後タイプの異なる打者が4番に入る可能性もあり、その起用法に注目だ。
今季は代打などで学年問わず様々な選手が起用されており、チーム内競争も活発化している。春はあと一歩のところで逃した優勝、そして2年連続の明治神宮大会出場へ―。次なるヒーローの出現に期待が高まる。
(取材・文・写真 川浪康太郎)