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開幕から6連勝、「新たな主戦投手」と「好調打撃陣」で快進撃を続ける昨秋王者・日体大

 首都大学野球春季リーグ戦も、残り半分となった。ここまで明治学院大学(昨秋6位)、武蔵大学(同3位)、東海大学(同4位)と戦ってきた日本体育大学は、無傷の6連勝で勝ち点3を獲得。連覇へと歩みを進める。

 快進撃の理由を探るため、日体大ナインを取材した。

打撃戦で打ち勝てる打線

 日体大の勢いが止まらない。開幕から6連勝は、日本一となった2017年秋以来だ。

 チーム打率は.273で6チーム中2位ながらも、51安打のうち二塁打10、三塁打3、本塁打5と長打が多い。それに加え、2位の筑波大(7試合9盗塁)を大きく引き離す17盗塁を記録。試合をこなすごとに守備も堅くなり、走攻守すべてにおいて隙のない野球をしている。

 越谷市民球場で行われた東海大戦のあとには、古城隆利監督も「土のグラウンドで荒れていてエラーをしているチームもありましたが、しっかり守ってくれたというのは大きかったですね」と、ナインの守備について言及した。

 チーム5本塁打のうち2本は、右打者・重宮涼内野手(4年・明石商)が打った。昨年の春は、目立った活躍をした試合もあったが、すぐに調子が下がってしまった。秋は、股関節分離症で開幕に間に合わず、最後まで出場機会はなかった。

本塁打を放ち、笑顔の重宮

 「去年の春、結果を出したあとに(調子が)下がってしまった分、今季は燃えています」と、冬の間さまざまなトレーニングに励んで今春を迎えた。高校のときは食べて体を大きくしていたが、大学に入ってからはバッティングでの最大出力を目指し、ウエイトトレーニングや体幹トレーニングで体づくりをしてきた。「最近は肩まわりに筋肉がついてきて、前より軽く振っても打球が飛ぶようになりました」とその効果を感じている。

 180cm・88kgで、がっしりとした体型。「まっすぐはバットに当たれば他の人より飛ぶので、その確実性を上げたいと思い、近い距離から投手に投げてもらって打つ練習もしました」。オープン戦では、打率3割超えで本塁打も1本打った。

 明学大との開幕戦、重宮は六番・指名打者でスタメン出場した。体が大きく、ストレートは飛ばせるという自信もある。そのせいか、打席では変化球を投げられることが多い。「まずは、緩いボールに対してアジャストすることが大事です。1打席目は、かなり考えて打席に立ちました」。狙いどおり、変化球をレフト前に運んだ。

 「変化球をアジャストすると、次の打席からはまっすぐが増えるので、打ちやすくなってきます」との言葉通り、2打席目に右中間への三塁打を打ったあと、3打席目はストレートをレフト芝生席まで持っていった。

「1本目が抜けてくれたので気が楽になって、そのあともいい打席になりました。去年の春のように、調子の波があってはいけない。これが一番上ではなく、もっとステップアップしていきたいです。気負い過ぎずに、しっかり取り組んでいきたいと思います」

 開幕戦後の取材でそう言った重宮の成績は、6試合を終えて打率.500 2本塁打7打点。リーグトップを走る。残り2カードも好調が維持できれば、日体大打線にとって大きなアドバンテージとなるだろう。

 今季、全試合で四番に座っているのが南大輔内野手(3年・花咲徳栄)だ。昨秋は、スタメン出場した10試合のうち、9試合で三番、1試合だけ四番を打った。チームトップ、リーグ2位の打率.400でリーグ戦を終え、オープン戦でも結果を残してこの春を迎えた。

適時二塁打を打ち、ベンチに向かってポーズをとる南

 だが「いい当たりでも、打つところ打つところ守備の正面にいってしまいました」と、開幕から3試合は無安打だった。4試合目の武蔵大2回戦で今季初安打となる二塁打を打つと、次の東海大1回戦で適時二塁打を放ち、初打点を挙げた。試合後には「これまで、状態は悪くなかったけど結果が出ていなかったので、今日は四番としての仕事はできたかなと思います」と、ホッとした表情を見せた。

 花咲徳栄高時代は、2年まで三塁手。3年で初めて外野を守ることになった。日体大に入ってからも、そのまま外野手として試合に出ていたが、今季は三塁手として開幕を迎えた。久しぶりの景色に「昔はずっとサードだったので、懐かしいなって感じです」と笑う。直近2試合は、また外野を守っているが「内野、外野どちらの守備にも自信を持っている」と頼もしい。

 体重が落ちやすい南は、他の練習が大変でも365日ウエイトトレーニングや体幹トレーニングを欠かさないという。瞬発力を高めるなどの明確な目的も持ち、時間をやりくりしてトレーニングに励む。

 重宮、南だけではない。試合を重ねるごとに打線全体の勢いが増している。走攻守すべてにおいて理想的な試合運びとなっている日体大。この勢いはどこまで続くか。

安定した投手陣の筆頭は新戦力

 6試合を終えて、チーム防御率は1.17。それも、誰かひとりが完投、完封するという形ではなく、みんなでつないで投げてこの結果だ。もともと日体大投手陣はレベルが高い。ただ、故障明けの投手や初登板の投手ばかりの今季は、未知の部分が多かった。どんなに力がある投手だと言われていても、実際に公式戦で投げてみなければ、結果を出せるかどうかはわからない。

 そんな中、ここまで3試合に登板し、3勝・防御率0.00の結果を残しているのが寺西成騎投手(3年・星稜)だ。公式戦デビューとなったのは、開幕戦の明学大1回戦。三番手で登板すると、4回無失点で勝ち投手となった。武蔵大1回戦では先発し、5回2失点(自責0)。東海大1回戦も5回無失点と、安定した投球を続けている。

チームを引っ張る投球をする寺西

 高校3年春に右肩関節唇損傷の手術を受けた。リハビリに励んだが、投げるとどうしても痛みが出てくる。日体大入学後も、一進一退の日々だったが根気よく続けた。「病院のリハビリの先生に教えてもらったインナートレーニングと、日体大にはいいピッチャーが多いので、みんながやっているそれぞれの筋力トレーニングを教えてもらいながらやっていました」。

 また、辻孟彦コーチの作ったメニューも、寺西を支えた。「もともと『強化班』とか『投げられない組』とかがあって、主に1,2年生がそういうメニューをやるんですけど、めちゃくちゃきつくて、その期間がすごくいいなと思いました。辻コーチのメニューをやってきて、足も速くなりましたし、体の出力も上がっていると思います」。地道な努力が実り、昨年12月にやっと痛みがなく投げられるようになった。

 2月のキャンプから実戦で投げ始め、大学3年となった4月1日、リーグ戦初登板を迎えた。力のあるストレートに、スライダーやフォークで打者を打ち取っていく。「カーブももっと使っていきたいです」と、次の試合を見据える。先の見えない日々は終わった。

 試合後には、星稜高時代のチームメイト内山壮真捕手(ヤクルト)から「初勝利おめでとう」とLINEが来たという。「さすがプロだな」というアドバイスももらった。「自分の目指しているところはプロ野球なので、全国の舞台に行って、そういうところでピッチングを見てもらいたいです。プロを目指すことで自分の取り組みも変わっていきますし、レベルも上がっていくと思うので、意識を高く持ちたいと思っています」と、まずは自分の投球でチームを全国の舞台へ連れて行く。

 同じくプロ入りを目指しているのが、もうひとりの先発・篠原颯斗投手(2年・池田)だ。明学大2回戦で3回無失点、武蔵大2回戦で5回1/3 1失点、東海大2回戦で5回無失点と3試合に先発し、1勝・防御率0.68と好投を続ける。

好投を続ける篠原

 篠原も肘の故障などがあり、日体大に入学してから1年間はリハビリの日々だった。「投げる以外のことはできたので、投げられる人よりも意識を持ってウエイトトレーニングなどをしてきました」と、できることに精一杯取り組んできた。

 昨年12月に投げ始め、春の開幕に間に合った。3回目の登板で、念願の初勝利。「ずっと怪我をしていてここ(2年春)で投げられると思っていなかったので、大学生活を通して考えると早かったなと思います」と心境を語った。

 高校時代に出したという最速149キロを明学大戦でもマーク。「高校時代から、気持ちを出して抑えていくというタイプ。そこは大学でも変えずにやっていこうと思っています。カーブ、スライダー、スプリットも高校時代から投げている球種です。得意な球は変化球だとスライダーですが、基本はまっすぐを生かせるようにしていきたいです」。

 日体大の投手たちは「ピッチャー陣で勝つ」をテーマにしているそうだ。「バッティングは水物なので調子いい、悪いがあると思うんですけど、ピッチャー陣がゼロで抑えたら負けることはないので、それを目指してやろうと話しています」。ここまで6試合で投手陣の自責点はわずか7。投打ともに助け合い、いい試合を続けている。

 6連勝にも、古城監督は「やっと打線が当たってくれるようになりましたけど、たまたまうまくいっているだけです」と、気を緩めない。それだけ、首都大学野球は何が起こるかわからないリーグだ。

 次は、打率リーグ1位の桜美林大と戦う日体大。2連勝すれば優勝が決まる。開幕日に、主将の相澤利俊内野手(4年・山梨学院)が力強く言った「日本一という目標を掲げていますが、まずはリーグ戦全勝優勝を目指します」という言葉は、現実のものとなるか。

好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいと思い、OLを辞め北海道から上京。 「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦する生活を経て、気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターに。 大学野球、社会人野球を中心に、記者が少なく情報を手に入れづらい大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信することを目標とする。

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