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星新体制発足からまもなく3ヶ月 東北学院大硬式野球部に現れ始めた変化

 東北学院大硬式野球部は今年2月、OBで元巨人、西武の星孝典氏を新監督に迎え入れた。初陣となった4月15日の東北大1回戦は7-3で勝利。2回戦はタイブレークの末5-4でサヨナラ勝ちを収め、星監督は指揮官として初の勝ち点をつかんだ。しかし、翌週の東北福祉大戦は2連敗。チームの目標の一つである「東北福祉大に勝利」を成し遂げることはできなかった。新体制発足からまもなく3ヶ月、チームの現状や課題を探る。

早くも出始めている“星カラー”

 リーグ戦開幕前、「去年のチームのオーダーはほとんど見ていない。全員横一線で競わせる」と話していた星監督。15日の初戦では3年次までリーグ戦出場経験のなかった山中海渡外野手(4年=東北学院榴ヶ岡)を「3番・指名打者」でスタメン起用し、その山中が先制打含む5打数4安打4打点の活躍で勝利に貢献した。2戦目以降もスタメンを固定しておらず、特に中堅、左翼は複数選手が熾烈なポジション争いを繰り広げている。

 投手陣も開幕節は石川岳人投手(3年=石巻西)、井上聖南投手(3年=東北学院)、翌節は野中大輔投手(4年=花巻東)、古谷龍之介投手(4年=北星学園大付)が先発するなど、あらゆるタイプの投手を起用している。

東北大2回戦で勝利し、安堵の表情を見せる星監督(中央)

 ただ現時点で采配が全てプラスに働いているわけではなく、星監督は東北福祉大2回戦の試合後、「結果につながっていない部分も多いので、私自身、まだまだ見る目を養う必要がある。選手の特徴や持ち味をもっと勉強しなければいけない」と自らを奮い立たせていた。NPBで6年間のコーチ経験があるとはいえ、監督業は初めて。試行錯誤の日々は続く。

「力不足」痛感した東北福祉大戦

 東北福祉大戦は1回戦が9-16、2回戦が0-2。星監督は強敵との2試合を「良いところと悪いところが出た2試合。それなりの試合はしたように見えますけど、まだまだ力不足です」と振り返った。

 1回戦は初回と4回に7点ずつを失う苦しい展開に。投手陣の課題が露呈した一方、打線は2回に秋田真内野手(3年=札幌国際情報)の満塁本塁打などで6点を奪うと、リードを広げられた直後の4回にも3得点し食らいついた。しかも2回は櫻井頼之介投手(2年=聖カタリナ学園)、4回は後藤凌寿投手(4年=四日市商)といずれも150キロ前後の速球を持つ好投手を打ち込んだ。

東北福祉大2回戦で今季初登板した古谷

 昨年の東北福祉大戦は春が無得点、秋が1得点(春秋ともに2試合)とほぼ完璧に抑え込まれていた。得点力不足の現状を知った星監督は「点を取られたらすぐに取り返す」をテーマに掲げ、選手たちへの意識づけを図ってきた。この試合は結果的にコールド負けとなったものの、一つの成果が現れた試合でもあったと言えるだろう。

 2回戦は古谷、石川の粘投で失点を2点に抑えながらも、打線が前日から一転、つながりを欠いた。5回以降は3度得点圏の好機をつくったが、北畑玲央投手(4年=佐久長聖)の多彩な変化球や堀越啓太投手(2年=花咲徳栄)の速球に翻弄され、あと一本が出なかった。また2失点はいずれも野手の失策が絡んだもの。この試合は3失策、1回戦と合わせると計5失策と守備面の課題も浮き彫りになった。

 「選手たちがこの2試合をどう感じるかというところも含めて、チームが変わっていく起点になる試合になったらいいと思う」(星監督)。東北福祉大戦での連敗を健闘と捉えるか、惨敗と捉えるか。どちらにせよ、今回の連敗を次節以降どう生かすか注目だ。

練習でも、試合でも生まれてきた一体感

 東北学院大は直近の2年間、学生が監督を務めていた。大人がいないことで「緩い」雰囲気が漂っていること、選手間のコミュニケーションが希薄になっていることに危機感を覚えた星監督は、挨拶をはじめとした礼儀の大切さや相手に思いや意見を伝えることの重要性を説いてきた。その考えは、徐々にチーム内に浸透し始めている。

 主将の高橋寛太捕手(4年=古川)は、「去年はAチームとBチームに温度差があった。星監督に代わってからはコミュニケーションが増えて、チームに一体感が出てきた」と話す。試合中も、去年からの変化が現れているという。失策した選手や好機で凡退した選手がベンチに戻ってきた際は、「想定内だよ」「謝らなくていい」など前向きな言葉が飛ぶ。大量失点を喫した後や無得点のイニングが続いた時も、声を出し続ける選手が増えてきた。

主将としてチームを牽引する高橋

 チームメイトと切磋琢磨しつつ、互いを認め合う関係性も築かれつつある。高橋自身は開幕2戦目こそスタメンマスクをかぶったものの、東北福祉大戦は2試合とも同学年の及川恵介捕手(4年=大船渡)にスタメンの座を譲った。その及川は2回戦で3つの盗塁を阻止するなど躍動。ライバルがアピールする中、高橋は守備を終えた及川の防具を外す作業を率先して行うなどベンチでサポート役に回り、「恵ちゃんにしかああいうプレーはできないので、頼りにしています」と賛辞を贈っていた。

「野球の神様」を微笑ませるために

 東北大2回戦でサヨナラ打を放った猪俣俊介内野手(4年=健大高崎)も、「去年までは学生だけだったので、『なんでもあり』ではないが緩さがあった。星監督が来てくださってから、チームが一つになってきた」と変化を感じている。

 猪俣自身も私生活の言動を省みるようになったといい、「誰が自分たちを見ているかわからない。その中で、東北学院大硬式野球部の看板を背負っているという意識は常に持っている」と力を込める。星監督の「野球以外のことをしっかりすることが、野球の結果につながる」との言葉の意味も理解できるようになってきており、サヨナラ打の直後には「もしかしたら野球の神様が味方してくれて打てたのかも」と頬を緩めた。

東北大2回戦でサヨナラ打を放った猪俣

 「東北福祉大に負けたからといって、落ち込むようなメンバーは誰一人いない」とは主将の高橋。監督が代わったとはいえ、結果はすぐに出るものではない。それでも、短い期間で確かな変化、成長が見られたことは確かだ。「2強」の牙城を崩すため、一歩ずつ前進していく。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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