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【DDTプロレス MAO】プロレスという限られた枠の中で、いかに自分の好きなように戦えるかを追求している

DDT人気No.1ユニット「The37KAMIINA(サウナカミーナ)」のメンバーとして活躍するMAO。現在The37KAMIINAの勝俣瞬馬とタッグを組み、第76代KO-Dタッグ王者として君臨。これまで5回の防衛に成功している。タッグ王者として波に乗るMAOは、5月3日DDTのビックマッチ「MEGA MAX BUMP 2023 in YOKOHAMA」で遠藤哲哉の持つDDT UNIVERSAL王座に挑戦する。

DDTプロレスの大人気ユニットThe37KAMIINAのメンバーとして活躍

MAO、1997年1月28日生まれ、宮城県大崎市出身。中学の頃、プロレスに出会いYouTubeに「中学生プロレス技をやってみた」を投稿。それがDDTプロレスの高木三四郎社長の目にとまる。高校在学中、夏休みなどを利用しDDTの練習に参加。2015年高校卒業後、上京しDDT入門。

2015年8月23日、両国国技館にてデビューを果たす。

2018年7月、マイク・ベイリーとのタッグ「MOONLIGHT EXPRESS」で第65代KO-Dタッグ王座戴冠。

現在MAOが所属する「The37KAMIINA(サウナカミーナ)」は、テレビ番組「マツコの知らない世界」にサウナを説明するプレゼンターで出演したこともあるDDTを代表する人気ユニット。

メンバーはMAO、勝俣瞬馬、上野勇希、小嶋斗偉、そしてアメリカのプロレス団体AEWで活躍する竹下幸之介。

2019年8月、竹下が巡業先で勝俣と上野をサウナに誘ったことがきっかけとなり「DDTサウナ部」を結成。そこにMAOが加わりThe37KAMIINAに。

だが結成当初、MAOは「若い4人がキャッキャと楽しくしているノリに嫌悪感を抱くお客さんがいるのは理解しているけど、僕は絶対に必要だと思っています」と自ら冷静に分析していた。現在はどのように考えているのか。

「The37KAMIINAきっかけで、DDTを観に来てくれるお客さんも多いので、やってきたことは間違いじゃなかった。どんなに面白い試合をしても、観てもらえなかったら意味がない。サウナという面からアプローチをかけたり、『マツコの知らない世界』に出演したり、イベントを開催したり。DDTを観てもらうため、間口を拡げる意味で欠かせないユニットであることをキチンと自覚しています」

コロナ禍での葛藤、初のシングルタイトルDDT UNIVERSAL王座戴冠

2022年3月20日、両国国技館大会でMAOは佐々木大輔、葛西純とのハードコア3WAYマッチを制し、自身初のシングルタイトルであるDDT UNIVERSAL王座を獲得。自由奔放にプロレスをするMAOらしさが戻ってきた。

「コロナで2020年と2021年はしんどかったというか、とにかく辛かった。この2年間は重苦しい記憶しかないんです。それが2022年8月から声出し可能になり、自分を取り戻してきた感じがしますね」

無観客の方が試合に集中できる選手もいるが、「僕は声援がないと気持ちが盛り上がらないタイプです。どんどんお客さんが乗せてくれれば僕は乗ります。僕は『プロレスを全力で遊んでいます』。誤解のないように言うと、プロレスという限られた枠の中でいかに自分の好きなように戦えるかを追求しています。お客さんにも全力でプロレスを楽しんで欲しい。今は僕とお客さんがマッチしてきていると思います」と笑った。

現在、第76代KO-Dタッグタイトルを保持する「しゅんまお」

勝俣瞬馬とのタッグ「しゅんまお」で第76代KO-Dタッグ王者に君臨

現在MAOはThe37KAMIINAの勝俣瞬馬とタッグを組み「しゅんまお」としてKO-Dタッグ王座を保持している。最初のパートナーであるマイク・ベイリーとは約8か月間保有。

2度目のパートナー・朱崇花とは、初防衛戦でハリマオ(樋口和貞&吉村直巳)に敗れ王座陥落。3度目は「しゅんまお」で戴冠。勝俣とは長い期間タッグを組んでいたが、なかなか結果がついてこなかった。

「瞬馬とのタッグは2016年から組んでいるので、今年で8年目。途中離れたりくっついたりしている時期もありました。2022年にタッグマッチのリーグ戦『Ultimate Tag League(アルティメットタッグリーグ)』があり、『しゅんまお』でエントリー。ただ全く成績が振るわなかった」

2022年1月〜2月に開催されたUltimate Tag League(アルティメットタッグリーグ)は10チームが参加、A・Bブロックに分けられたチームがリーグ戦を争う。「しゅんまお」はBブロックにエントリーし1勝3敗の2点だった。

「去年CDK(高梨将弘&クリス・ブルックス)としゅんまおは、タッグや6人タッグで何回も戦いました。その時、すごくハイレベルな攻防が生まれた。当時KO-Dタッグ王者のハリマオは重量感もあり、「強さ」を打ち出したタッグでした。でも吉村のケガで王座返上、今年1月3日の後楽園でしゅんまおとCDKの間で王座決定戦を行いました。しゅんまおvs CDKは、ハリマオのパワーを押し出したものと全く違う方向性の戦い。昨年負け続けたCDKに勝利することができKO-Dタッグを戴冠。『去年1年頑張ったからなんだろうな』ってすごく思いました」

2022年は結果が出なかった「しゅんまお」だが、今年1月のベルト戴冠から5回防衛し、KO-Dタッグ王者として抜群の安定感と「どんなことを見せてくれるのか」というワクワク感をいつも観客に提供してくれる。MAO自身、勝俣とのタッグに手応えを感じたのはいつ頃だったのか。

「単純にお互いが成長したからだと思います。昨年1年間、しゅんまおとクリスでハードコアマッチを戦ったり、クリス&葛西純vsしゅんまおだったり。戦いを通じて個々のスキルが上がった。そのタイミングで1.3後楽園のKO-Dタッグ王者決定戦だったからチャンピオンになれたと思いますね」

DDTプロレスを日本だけでなく世界に拡げたい

今年2月21日に東京ドームで開催された武藤敬司引退興行。プロレスリング・ノアや新日本プロレス、全日本プロレスの選手が出場する大会で、DDTが提供したのは「MAO・勝俣瞬馬・上野勇希・小嶋斗偉vs遠藤哲哉・岡谷英樹・高鹿佑也・正田壮史」という若手主体のカードだった。

「会社がこのメンバーを選んでくれて、全員の年齢を計算したら平均年齢25歳だったんですよ。DDTには男色ディーノもいるし、HARASHIMAさんも高木三四郎社長もいる。「The DDT」ではなく、『今のDDT』を見せたくて選んでもらったんだなって。だから『今のDDTをありのままにお伝えしよう、届けよう』という気持ちでした。僕は場所がドームだろうが、どこであろうが変わらないですね。『東京ドームだから気合を入れて、いつもと違うことをしよう』ということもなかった。これは悪い意味でなく良い意味で、『いつもの地方大会に来れば、そのままのDDTが観れますよ』って。東京ドームだからと特別にブラッシュアップされたものを見せて、いざ地方大会でトーンダウンしてスケールが小さくなってたら嫌じゃないですか。だから、『いつもやってる、どこでもやってるThe37KAMIINA』をありのままに東京ドームでお届けした感じですね」

The37KAMIINA(後列)左・小嶋斗偉、中・上野勇希、右・竹下幸之介
(前列)左・勝俣瞬馬、右・MAO

4月1、2日と二日間に渡り世界最大のプロレス団体WWEのレッスルマニアがアメリカで行われた。この大会が開催される1週間は「レッスルマニアウィーク」と言われ、世界中から様々なプロレス団体が集まり大会が行われる。DDTは3月30、31日に4年ぶりのアメリカ遠征。ハリウッドでの大会は初開催だった。

「珍しく、気合いを入れていったんです。生放送もあり海外の人にDDTを知ってもらえるチャンス。『ここに勝負かけないで、いつ勝負かけんだよ』っていう気持ちで(笑)」

その後、MAOはThe37KAMIINAの勝俣瞬馬、上野勇希とともにロスからニューヨークに自費で移動した。目的はAEW出場。だが出場の確約はなかった。「出場できるかどうか分からないけど、AEWのバックステージを見たり、雰囲気だけでも感じられたらいいなと思ってニューヨークに向かいました」と笑顔を見せた。

「会場に到着。とりあえずお腹空いたのでケータリングを食べていたらAEWで活躍している、さくらえみさんが来て『試合組まれたじゃん、おめでとう!』と教えてくれたんです。僕たちは『マジっすか!』と3人で驚きましたね」

誰に言われるわけでもなく自分で行動した結果、AEW出場を手繰り寄せた。

「行かなかったら出ることもなかった。ロスからニューヨークに移動し食費も宿泊費も、お金もすごくかかった。でも行動して良かったです。考えるだけではなく実際に行動しないとダメだなって思いましたね」

3月30日の試合後のバックステージ。MAOはプロモーターに挨拶し自ら売り込みをかけ、決まっていた試合以外にもブッキングすることに成功した。

自分の足で動き、自分の顔を知ってもらいプロモーターやレスラーと繋がった。限られたアメリカでの時間を最大限有効活用したMAO。その行動が未来の扉を開くに違いない。

5.3横浜武道館で遠藤哲哉の保持するDDT UNIVERSAL王者に挑戦!

5月3日、DDT横浜武道館大会でMAOは遠藤哲哉の持つDDT UNIVERSALベルトに挑戦。このベルトは、昨年MAOの腰に巻かれていたものだ。

「DDT UNIVERSALベルトは僕にとって初のシングル王座ですし、思い入れがあります。あの頃は声出し応援ができなかったり収容人数の制限など規制がありました。でも今は想像もできなかったぐらい世の中が良くなっている。海外から自分が注目されているのを理解しています。去年ベルトを持っていた時とは、ちょっと意味合いが違ってくるんですよ。今回、DDT UNIVERSAL挑戦表明した時はハリウッド大会の前。前王者の土井成樹さんと遠藤さんがタイトル戦を行い、その勝者に挑戦しようと考えていました。正直、僕は土井さんが勝つと思っていた」

前哨戦で激しくぶつかる挑戦者・MAO(左)とDDT UNIVERSAL王者・遠藤哲哉(右)

昨年9月、ドラゴンゲートからフリーとなった土井は全日本プロレスの世界ジュニアタイトルも獲得し、多くの団体のリングで活躍する。MAOは土井のことを「DDT UNIVERSAL王座の名に恥じない王者」だと話す。MAO自身、アメリカで自分の足で見て学んでプロモーターにコンタクトして、試合出場にこぎつけた。

だが遠藤に対しては「本当に何もしてなくて、もう自分の足で全く動かないし、他の大会観に行くわけでもない」と語気を荒げた。

「誰がどこから見ても、どの国の人が見てもDDT UNIVERSALベルトをMAOに獲得して欲しいだろうな〜という雰囲気を感じる。現王者の遠藤哲哉が見せる景色とMAOがベルトを獲得し見せられる景色は全く違う。僕がDDT UNIVERSALベルトを持った方が、みんなにいろんな景色を見せていける。世界中から『MAOと試合したい』という声も届いている。僕がベルトを獲ったら海外から日本にいろんな選手を呼べる。もしくは僕が海外に行きDDT UNIVERSAL戦を行なってもいい。今はすごく注目されてるという自覚がある。DDTを拡める意味でも絶対に僕がベルトを持つべきだと思っているんで、5月3日横浜、MAOがDDT UNIVERSAL王座を絶対獲ります!」

自由の国アメリカで行動し結果を引き寄せたMAO。勢いのある挑戦者が王者からDDT UNIVERSALベルトを奪取するのか?それとも増量し、ハイフライヤーにパワーもプラスした遠藤哲哉がバーニングのリーダーとして防衛するのか?両者のイデオロギーがぶつかり合う、5月3日 横浜武道館大会まであと少し…
(おわり)

取材・文/大楽聡詞 写真提供/DDTプロレスリング

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