【プロレスリングWAVE 狐伯】誰もが知っているプロレスラー狐伯になりたい

5月から7月にかけリーグ戦「CATCH THE WAVE」開催中のプロレスリングWAVE。25選手が5ブロックに分かれ優勝賞金100万円と志田の持つReginaへの挑戦権、そして「波女」の称号を目指し激しい戦いをおこなう。狐伯はAブロックに出場、WAVE所属の野崎渚や桜花由美が欠場する中、WAVEの看板を背負いキャリアで上回る先輩レスラーと火花を散らす。リーグ戦を戦いながら、スターダムをはじめ他団体のリングでも活躍する狐伯に迫る。

プロレスに興味を持ったキッカケはテレビで観た長与千種さん

2001年4月17日生まれの岡山県岡山市出身。両親、5つ上の兄と4つ下の弟と狐伯の5人家族。小さい頃は、よく怪我をする子供だった。そんな彼女がプロレスに興味を抱いたのは小学4年生。

「ある時、テレビのチャリティーマラソンで、北斗晶さんが家族4人で120キロ走っているのを観ました。ゴール後、メチャクチャ金髪で肌も白くてインパクトのある人が、北斗さんと抱きあっていた。それが長与千種さん。女子プロレスラーだと知り、動画サイトで『女子プロレスラー」を検索したら、目に入ってきたのが流血の北斗晶さんと神取しのぶさんの試合。『無理だ、これは観れない』と(苦笑)。でも長与さんが気になり、数日後に検索したら歌も歌うし、お芝居もする。その長与さんに魅せられました」

リングネーム「神童ミコト」としてマーベラスでデビューを果たす

2017年、16歳の狐伯は「長与さんが好きだから、長与さんのところ以外は考えてなかった」とマーベラスに入門。2018年8月8日、「神童ミコト」のリングネームで7年先輩の世志琥(シードリング所属)とデビュー戦をおこなった。

「当初、デビュー戦の相手は同期の星月芽依(現在、星来芽依)とシングルマッチの予定でしたが芽依のケガでできなくなり、デビュー2週間前に世志琥さんに決まりました。正直、世志琥さんが怖くて眠れないし。反面、どこか冷静で『明日も練習だし考えていても仕方ないや』と、すぐ寝ていました(笑)。デビュー戦は、入場する前と試合後は覚えています。ただ試合中の記憶がないんです。試合後、映像を見返し『バックフリップでやられたんだ…』とデビュー戦を振り返りました。緊張すると記憶に残りませんね」

2019年6月、愛海(センダイガールズ)を破りセンダイガールズワールドジュニア王座に輝く。センダイガールズにレギュラー参戦、他団体のリングでも活躍し傍目には順風満帆に見えた狐伯だが、余裕はなかった。

「順調に行ってるかどうかも考える余裕がなく、毎日『試合→練習→試合→練習…』の繰り返し。自分が怪我しないように試合をし、もちろん相手に怪我させてもダメ。とにかく『今日の試合をキチンとやろう』しか頭になかったですね」

1試合1試合に集中し、日々積み重ねていた。そして2021年8月、「自分のステップアップのため」にマーベラスを退団した。

「プロレスを辞める気はなかったけど、少しだけリングを離れたかった。とりあえず1ヶ月は身体と心を休めるためになにもせず、2ヶ月目から運動再開。あと運転免許も取得しました。そのためにちょっと働きましたね」

プロミネンスの柊くるみ(左)にドロップキックを放つ狐伯(右)

リングネームを「狐伯」に改名、プロレスリングWAVEで再スタート

リングから離れていた狐伯は、2022年2月WAVEの後楽園大会に来場。リングネームを改名しWAVEに入団することが発表された。

「2022年1月、GAMIさんと会う機会がありました。その時、GAMIさんに状況を説明し『プロレスを辞める気はない』と伝えました。そしたら『だったらWAVEにくればいい』と言ってくれました。プロレス界に、どうしたら復帰できるのか悩んでいたので、本当にGAMIさんとWAVE社長の桜花由美さんに感謝しています」

2022年4月1日、狐伯の再デビューが決まった。対戦相手は鈴季すず。すずは2021年末に所属していたアイスリボンを退団し、世羅りさを含めた5名で「プロミネンス」を結成。デスマッチやハードコアもおこなうファイトスタイルで存在感を増していた。

「2月から会場でセコンドに付いていました。すずは普通の試合なのに凶器を使用する。止めに入ったらコブができるほど殴られました(苦笑)。当時、彼女はアイスリボンを退団しプロミネンスを結成したばかり。『自分たちでやらなきゃいけない』と気迫を感じました。復帰戦はすずに敗れたけど、いいスタートがきれたと思います」

2022年のリスタートから一年が経過。後輩の育成で心に変化が…

WAVEから再デビューし1年が過ぎた狐伯。その間、野崎渚や桜花由美が欠場し後輩の田中きずなと炎華がデビューした。狐伯は環境の変化を、どのように捉えているのか。

「やはり後輩ができたことで、『しっかりしなくちゃいけない』という気持ちが強くなりました。それまで甘えていたわけじゃないけど、『一番下』っていう気持ちが自分の中にあり、自由にさせてもらっていました。これまでは自分の練習を先輩方が見てくださっていた。でも後輩ができてから、後輩の練習を見るので自分の練習時間がない。そこで『先輩たちも同じように自分の時間を削って、私に教えてくれたんだ』と気づきました。後輩たちには、しっかりとしたレスラーになってもらいたい。だからキチンと教えます。後輩に言ったからには、自分でもやらなければいけないですし」

CATCH THE WAVE 2023 Aブロック 狐伯(左)vs朱崇花(右)

開催中のCATCH THE WAVE 2023について

プロレスリングWAVEで開催中のリーグ戦「CATCH THE WAVE 2023」。全25選手が2ヶ月に渡りしのぎを削る。狐伯はAブロックにエントリー。同じブロックには、海外でも活躍するセンダイガールズワールドシングル王者の朱崇花(フリー)、第5代COLOR’S王者の網倉理奈(COLOR’S)、キャリア6年目で18歳の愛海(センダイガールズ)、第28代アーティスト・オブ・スターダム王者の柊くるみ(プロミネンス)ら強者が名を連ねる。

現在、狐伯は2試合を終えて1敗1分。初戦の柊くるみとは引き分け。2戦目は今回のリーグ戦、頭一つ抜けている朱崇花だ。「朱崇花さんに勝てたら自信になる」と語っていた狐伯だが、善戦むなしく敗戦。網倉理奈、愛海との対戦を残す。

「マーベラス時代、愛海さんとはシングルで何度も戦いました。センダイガールズワールドジュニア王座を賭けたタイトル戦もあった。多分、プロレスラーの中で一番試合をしている相手。お互いの手の内はわかっています。ただWAVEに入って、これまで戦う機会がなかった。ですから、今の愛海さんを知りたい。今の愛海さんを知って勝ちます」

先日の朱崇花戦、試合後朱崇花は「狐伯に思いのほか、攻められちゃったから焦った部分もありました」と狐伯の成長を口にした。

今回の取材の最後に、今後の目標を聞いてみた。

「経験として海外には行ってみたいですね。アメリカとかメキシコに。あとは『女子プロレスラー狐伯って知ってる?』と聞かれた時に『あっ、知ってる!』と言われるぐらい知名度と力をつけたい。『誰もが知っているプロレスラー狐伯』になりたいですね」

2018年にデビューして今年で5年目。狐伯は6月2日にスターダム「NEW BLOOD9」に出場。タッグマッチで飯田沙耶と激しくやり合い、シングルマッチを予感させた。

以前、WAVE代表のGAMIさんは「狐伯はあと二皮くらい剥けないとダメ。喪が明けるじゃないけど、何かが変わる瞬間は突然やってくる」と話していたが、ハードコアや他団体参戦、後輩を持つことで成長している。

小学4年生で見つけた「女子プロレス」。その世界に憧れ飛び込んだ少女は、レスラーとして確実に成長している。自ら殻を破り、新たな狐伯が見られる日も、そう遠くはないだろう。
(おわり)

取材・文/大楽聡詞 写真提供/プロレスリングWAVE

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