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「自分達のラグビーを取り戻す」リコーブラックラムズ東京 武井日向が語る”ブラックラムズらしさ”と駆け抜けた2年間

いよいよ開幕する「NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(以下、リーグワン)。国内最高峰のラグビーリーグが始まろうとしている。

ディビジョン1のリコーブラックラムズ東京は、昨年9位からの巻き返しを狙う。今回はキャプテンを務める武井日向(ひなた)選手に今シーズンに向けた取り組みを訊くとともに、入団から2年間を振り返ってもらった。

(取材協力 / 表紙写真提供:リコーブラックラムズ東京 、文:白石怜平 ※以降、敬称略)

「本当に自分を必要としてくれている」語った入団の理由

栃木県出身の武井は、国学院栃木高校から明治大学に進学。大学から現在も務めるHOとなり、1年生時から先発で出場した。

2年時から3年連続で全国大学選手権の決勝へ進出し、3年時には天理大学を下し22大会ぶりに大学王者に輝いた。4年時から主将に就任し、対抗戦では全勝優勝。しかし、大学選手権決勝戦で早稲田大学に敗れ連覇はならなかった。

卒業後の進路も考える中、武井は当然ながら複数のチームから誘いを受けていた。その中でブラックラムズを選んだ理由をこう語った。

「明治大は朝練があるので、6時半ぐらいから始まるんですが、チーム採用の小浜(和己)さんが朝練の前から来て、終わるまでいて下さっていました。

夏の暑い日も冬の寒い日も欠かさず来てくれて。そこで話をした際もチームの良さを伝えていただきましたし、本当に自分を必要としてくれていると感じたので、入団を決めました」

ブラックラムズ入団の経緯を語った

強みを出せた1年目、全試合出場を果たす

そして、武井は1年目から主力として活躍する。21年2月20日の(現:埼玉)パナソニックワイルドナイツ戦で後半21分から途中出場すると、以降はプレーオフトーナメント含む全試合にスタメン出場し、レギュラーの座を掴んだ。(※)準々決勝は開催中止

「とにかく自分の持ち味・強みを全面に出そうと思い臨みました」と語ったルーキーイヤー。どんな強みを発揮できたかを含め振り返った。

「チームで一番身体を張ること、これはラグビーを始めた時から自分に対して課していることですので、それを1年目から体現しようと考えていました。あとは、ブレイクダウン周りのジャッカルにおいても強みを出せたのではないかなと感じています」

ブラックラムズが所属したトップリーグ(現:リーグワン)は国内最高峰のリーグ。日本代表で活躍する選手や、世界の舞台で輝きを放った選手とも何度も対戦した。

武井もそのレベルの高さを痛感しながらのプレーだったという。

「外国人選手も多いですし、試合の強度っていうのはすごく高かったです。試合翌日の疲労感とか、身体の痛みというのは、大学時代とは比べ物にならないほどありました。

ラグビーの面で言いますと、少しのミスで『あ、しまった』と思ったところを瞬時に的確に突いてきます。その隙を見逃さない点もやはりトップ選手になればなるほど来るというのは感じましたね」

1年目から主力として活躍した(提供:リコーブラックラムズ東京)

1年目の活躍が評価され、昨年9月には宮崎で行われた日本代表の合宿に招集された。将来日本代表に選出されるポテンシャルを持った人材である、NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド ※)の一員に選出。

しかし、合宿中に負傷してしまい途中離脱を余儀なくされ、悔しくも試合に出場するまでには至らなかった。

「自分らしいキャプテンでいよう」2年目で担う重責

チームでは、1年目のシーズン終了直後に早くも動きが起きていた。武井を翌シーズンからのキャプテンに任命したのだ。

西辻勤GMから内々で話を受け、新チームが始動する7月に正式に打診を受けた。

「最初打診を受けたときは、え!?という感じでした(笑)内心、”大丈夫かな…” という思いもありましたが、1年目からリーダーのグループにも入れていただいていましたし、今までの経験もあったので、正式に話があった際は”はい!”とすぐ返事をしました」

武井は、高校そして大学でもキャプテンを務めてきており、チームをまとめる経験は豊富。「チーム関係なく、自分らしいキャプテンでいればいい」と語り、これまでと変わらないスタンスで臨んだという。

入団2年目で早くもチームの主将へと抜擢された(提供:リコーブラックラムズ東京)

ここでさらに、”武井らしいキャプテン”とはどんな姿なのかを深掘りした。

「1プレイヤーとして違う立場から見たときに、発言と行動が一致している人は説得力があると感じていましたし、影響力も持ち合わせていました。

そこが大きな違いになると考えていたので、自分も発言と行動はしっかり一致させることを常に意識してやっています」

24歳の若武者に伴った重責。自覚を高めて2年目のシーズンへと臨んだ。

「チームや自分を俯瞰して場をつくる」

そして迎えた2年目の昨シーズン、武井にとってはキャプテン1年目でもあった当時の話題に入るにあたり、実はルーキーイヤーに感じてたことがあったと吐露した。

「外国人選手など文化の違う選手が多かったですし、ベテランの方もいますので遠慮しちゃった部分が正直ありました」

そこから自らの実力をいかんなく発揮し、1年で早くもチームの象徴として引っ張る立場へとなった。

コーチ陣らともコミュニケーションも積極的に図っていった。様々ある中で、まず武井が考えていたのは”行動で示す”ことだった。

「まずは、プレーにしっかりフォーカスしようと。ディテールを最後まで取る部分であったり、特に自分の中で意識していたのは、しっかり自分とチームをコントロールすることです。

勢いや元気があるときは、自分を冷静に俯瞰をしたり、士気が落ちているなと思ったら、自らエナジーを上げに行くなど、場をつくることを意識して取り組んでいました」

武井ならではのキャプテン像が確立されている(提供:リコーブラックラムズ東京)

キャプテン1年目の昨シーズン「満足のいくシーズンは送れなかった」

前年(2021シーズン)リーグ成績はホワイトカンファレンス4位(3勝4敗)。そして迎えた2021−22シーズン、武井は自身のアピールをしながらもチームの課題として「前半リードしていても、後半失速して最後の最後で勝ち切れない」と感じていた。

リーグワン元年の初代制覇を目指すべく臨んだが、松橋周平が膝の大怪我を負い、そして自身も足の怪我で離脱するなど苦難が続いた。チームもディビジョン1では9位でシーズンを終えた。

「チームとしては、満足できる結果ではないです。個人としても怪我の多いシーズンだったので、個人としてもチームとしても満足いくシーズンを送れませんでした」

昨シーズンは満足できなかったと語る(提供:リコーブラックラムズ東京)

プレー面では、1年目は身体を張るといった、自身の強みを出すことにフォーカスしていた。それを踏まえ、2年目は次のステップとしてどんなことに力を入れていたのかを訊ねた。

「プレー全体における判断の部分です。そのプレーが本当に必要なのかといった瞬時の判断、プレーの一つ一つに対して質を上げていこうという取り組みをしていました」

自身にとっても悔しいシーズンだったが、2年間で確実にステップアップしている。スキルの部分で改めて強みと認識したことを語った。

「ジャッカルはやはり自分の強みなのかなと。1年目も2年目も結果を出せたと思いますし、そこは成長できている部分と考えています」

「泥臭くそして、ハードワークをし続けるラグビー」

いよいよ明日、2022−23シーズンが開幕する。昨シーズンの悔しさを晴らすべく、今どんなことに取り組んでいるのか。

「チームとしてはまず、『ブラックラムズのラグビーとは何か』それをもう一度改めて考え直しました。それはどういうものかと言いますと、”泥臭くハードワークをし続ける”ラグビーです」

ここでさらに”ブラックラムズのハードワーク”が何かを説いた。それは、武井がラグビーを始めた時からのプレースタイルそのものでもあった。

「何度も立ち上がってタックルし続けるなど、体を張り続けるというのがブラックラムズらしさだと考えています。去年は満足行くプレーをお見せできなかった部分でしたので、もう一度チームで見つめ直しました。

日々の練習から泥臭い部分や、最後まであきらめないハードワークをし続ける、ブラックラムズらしいラグビーを取り戻すべく今取り組んでいます」

”ブラックラムズらしいラグビー”をチームで見直したという

そして武井自身も課題を持って取り組んでいることがある。ここで明かしてくれた。

「個人としてはセットプレーです。1年目から課題と感じている部分です。特にスクラムがシーズンを通してうまくいかなかったので、個人そしてチームとしても力を入れて練習に取り組んでいます。

後はスローイングの精度を上げることもです。セットプレーは自分の中ではすごく課題意識を持って取り組んでいます」

ブラックラムズは引き続きディビジョン1に所属し、埼玉パナソニックワイルドナイツや東京サントリーサンゴリアスら強豪チームらとしのぎを削る。

今シーズン、どんなラグビーを展開したいか抱負を語ってもらった。

「1年を通して、体を張ったブラックラムズらしいラグビーを率先して出していきたいです。最後まであきらめない姿勢や体を張り続けるプレー、そして泥臭さ。そういったラグビーをファンのみなさんにお見せします」

そして、さらに続いていくラグビー人生。武井日向の今後の目標を最後に訊いた。

高い目標に向けて逆算して取り組んでいる(提供:リコーブラックラムズ東京)

「近い目標で言いますと、日本代表でプレーすることが目標です。それに向けて逆算をして、目の前の練習に取り組んでいます。そのためにはチームとしても強くならないといけないですし、個人としても高いパフォーマンスを安定して出し続ける。それが重要になってくると考えています」

ブラックラムズ、そして武井の”ハードワーク”をもうすぐ見ることができる。漆黒のジャージがグラウンドで輝きを放つ時をファンも楽しみに待っている。

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