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首都大学野球秋季リーグ戦、開幕週の結果と注目選手は!?【前編】

 待ちに待った、首都大学野球秋季リーグ戦が開幕した。

 2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大により各大学は休校やオンライン授業を余儀なくされ、大学野球も全体練習のできない日々が続いた。首都大学野球リーグでは春季リーグ戦が中止となり、この秋季リーグ戦が今年初めての公式戦となる。

 現在、首都1部に属するのは東海大学、武蔵大学、筑波大学、日本体育大学、帝京大学、桜美林大学だ。

 通常は、6校の総当たりでそれぞれ2勝先勝した方に勝ち点が与えられる勝ち点制で行われるが、今秋は1戦総当たりの勝率制で行われる。各校、負けられない5試合を戦うためにどんな準備をしてきたのか。開幕週に行われた6試合を前編・後編に分け、各校ごとに振り返る。

連続完封と攻撃的な打順でスタートダッシュを決めた日本体育大学

<19日> 日体大 4-0 武蔵大

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日体大100000030410
武蔵大00000000001
森博人(4年・豊川)7回、恩田慧吾(2年・前橋育英)2回-小口丞太郎(4年・関西中央)

<20日> 日体大 2-0 帝京大

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日体大1000000046
帝京大00000000006
筒井恒匡(3年・松本工)4回、北拓海(3年・智辯和歌山)1回、矢澤宏太(2年・藤嶺藤沢)2回、吉髙壮(4年・明石商)2回-小口丞太郎(4年・関西中央)

 2017年秋、日体大は37年ぶりの大学日本一に輝いた。当時1年生だった部員たちも今年4年生となり、この秋が最後のシーズンとなる。古城隆利監督は開幕前、観客の入場制限により観戦ができないメンバー外の部員、そして普段とは大きく異なる状況下で戦う出場メンバーに対しメッセージを送った。そのメッセージの最後は、力強い言葉で締めくくられていた。

 「部員一丸となって戦い、必ず優勝を勝ち取る。絶対に引かぬ。攻めて、攻めて、攻めまくる」

 その言葉通り、開幕戦では攻めの打順を組んできた。古城監督が「入学が決まったときから1番で使おうと思っていた」と言うのは、昨年夏の甲子園で、華麗な守備に加え内野安打、三塁打、ホームスチールと観客を魅了するプレーの数々を披露した松浦佑星(1年・富島)だ。その松浦を1番に置き、2番・中妻翔(1年・常総学院)、3番・矢澤宏太(2年・藤嶺藤沢)、そして9番には本間巧真(1年・東海大相模)と俊足で活きのいい下級生が並ぶ。

 この起用が当たり、大事な開幕戦の初回から、松浦の二塁打、中妻の内野安打、矢澤の一ゴロでさっそく1死2、3塁のチャンスを作る。その後、2死満塁から6番・小儀純也(2年・霞ケ浦)の左前適時打で日体大は1点を先制。8回表にも中妻、矢澤が連打で出塁し、敵失と三野原愛望(3年・東福岡)の2点適時打で3点を加え、4-0で武蔵大に勝利した。

 この試合の先発投手は、ドラフト上位候補として注目される最速155キロ右腕、森博人(4年・豊川)だった。1年時からリーグ戦で登板してきた森は、将来のドラフト候補としてずっと注目を浴びてきた。当初から速球派でありながらコントロール面はこれからという右腕だったが、年々スピードとキレが増し、安定感も備わってオープン戦では余裕を感じる投球も見られるようになった。最終学年になり初めての公式戦となったこの日は、無死満塁のピンチを守備に助けられた場面もあったが、7回1安打3四死球無失点とエースとしての役割を果たした。

 「まっすぐの走りが良くなかったです。でも、悪い中でも試合を作れたのは良かった。変化球で相手の目線をずらすなど去年できなかったことができて、長いイニング投げられたというのは自信にしたいです。チームが勝ったのは良かったですけど、自分のピッチングには納得いっていないので次に向けてしっかりやっていきたいです」

 試合後、そう落ち着いた口調で話す森からはエースの風格がにじみ出ていた。

 第2戦の初回も、先頭の松浦が内野安打で出塁。2死1、2塁から5番・三野原の左前適時打で1点先制する。8回には再び先頭の松浦が四球で出塁。敵失などで1死1、3塁とすると、代打の堀口遼馬(3年・日大藤沢)の左前適時打で1点を追加し、2-0で帝京大をくだした。

 2戦連続完封リレーで勝利した日体大は、単独首位となった。第1戦で8回裏から登板した恩田慧吾(2年・前橋育英)、第2戦の先発・筒井恒匡(3年・松本工)、5回裏を投げた北拓海(3年・智辯和歌山)など、公式戦初登板の投手も打撃のいい武蔵大、帝京大に対し無失点で切り抜け、日体大の投手は森だけではないということを知らしめた。

 また、首位に立っただけではなく、インパクトを残したのも日体大だった。第2戦の6回裏では、大学野球では珍しいDHの解除を行った。それもこれも、観る者に夢を与えてくれる二刀流の矢澤宏太がいるからだ。

 第1戦、第2戦とも3番ライトでスタメン出場した矢澤だが、第2戦の6回にはDHを解除し、投手として3番手でマウンドに上がった。昨年よりも体が一回り大きくなった左腕は、140キロ台中盤のストレートを中心に6回、7回を1安打無四球無失点と、危なげない投球を見せた。そして、8回からはまたライトの守備へとつく。投球だけではなく、守備では大きな当たりを背面キャッチするファインプレーを見せ、攻撃では9打数3安打1盗塁の結果を残すというオールラウンダーぶりを発揮した。

 自身の試合での出来と二刀流について問われた矢澤は「(投球については)腕は振れていて、ストレートも強さがあったので良かったです。自分の中で投手、野手、どちらかに保険をかけているつもりもないし、どちらも勝負しているつもりです」と力強く答えた。昨年よりも随分と大人びた雰囲気になり1年の成長を大きく感じさせた矢澤が、今後どのように変化していくのか楽しみだ。

 そしてもうひとり、注目を集めたのが、2018年秋以来マウンドに上がった吉髙壮(4年・明石商)だ。

 明石商業高校のエースだった吉髙は、日体大に進学するにあたり、ずっと痛みに悩まされてきた右肩を手術した。日体大入学後は、辻孟彦コーチの下で復活に向けて慎重にリハビリを続け、2年生の秋にとうとう公式戦デビューを果たした。ところが、再び右肩痛が吉髙を襲い、リハビリの日々を余儀なくされた。そんな吉髙が、大学最後のシーズンで満を持して復活登板を遂げた。

 2回を投げ、2安打無四球無失点と復活登板としては十分な結果だったが「力んじゃいましたね。いい球もあったんですけど、全体的に見るとバラつきがあったので自分の中ではいいとは言えないです」と自身に厳しい評価を与えた。

 すでに日本生命の野球部へと進むことが決まっており、この先の野球人生も考えると無理は禁物だ。「僕自身の気持ちでは完投もやってみたいんですけど、もう一回怪我して選手生命にかかわっても困るので、やっぱり辻さんとも体とも相談しつつやっていこうと思います」と、はやる気持ちを抑えて今できる範囲でベストを尽くす。

 冒頭で触れた、開幕前に古城監督が部員に送ったメッセージには、4年生に向けたある言葉も含まれていた。それは、2017年秋季リーグ戦開幕前日におたふくかぜになり、その後髄膜炎と診断されて闘病の末、リーグ戦中に亡くなった相曽幸宏さん(当時1年生)への思いだった。

 「彼は戻って来られませんでしたが、必死に戦っていました。そして、その中でその時のチームは日本一を獲得しました。彼が見守ってくれていたと思います。同級生が最終シーズンを迎えたこのチームも見守ってくれていると思います。相曽の墓参に優勝旗を持って行き、その時未成年で飲めなかった祝杯を優勝カップで分かち合えるように、全身全霊をかけて戦ってもらいたい」

 相曽さんの写真と共に最後まで戦い抜き、日本一となったあの日から3年。日体大野球部ホームページの4年生メンバーの中には、今も相曽幸宏の名前がある。最終シーズンも相曽さんと共に、そして部員240名の心を合わせ頂点を目指す。

4連覇の重圧を感じながらも層の厚さを見せる東海大学

<19日> 東海大 4-0 桜美林大

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東海大230000110712
桜美大00000010004
高杉勝太郎(3年・東海大札幌)7回、松山仁彦(4年・東邦)1回、小郷賢人(4年・関西)1回-亀田啓太(3年・東海大甲府)

<20日> 東海大 1-2 筑波大

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筑波大00000010126
東海大00000010014
安里海(3年・東海大相模)7回、小郷賢人(4年・関西)2回-亀田啓太(3年・東海大甲府)

 73回のリーグ優勝を誇る東海大は2018年春から4季連続で優勝しており、昨秋は10連勝と圧倒的な強さを見せた。さらに、昨春の全日本大学野球選手権、秋の明治神宮大会共にベスト4と、全国大会でもしっかり結果を残している。

 4年生主体だった昨秋から大きくスタメンが変わる東海大は、どんなチームになっているのか。リードオフマンを任されたのは、昨夏の甲子園準優勝メンバー、東海林航介(1年・星稜)だ。オープン戦でも1番センターで出場していた東海林は、初の公式戦の初打席で右前安打を放った。2番・小松勇輝(2年・東海大相模)が初球で犠打を決め、3番・串畑勇誠(4年・広陵)の左前安打で1死1、3塁とすると、続く小玉佳吾(3年・東海大菅生)は一邪飛に倒れたものの、5番の竹内絋生(3年・明石商)が2点適時打を打ち先制。

 2回も東海林は四球で出塁すると、二盗で塁を進め、小松の適時二塁打で1点、串畑の適時三塁打で1点、さらに小玉の適時打で1点と得点を重ねた。7回、8回にもそれぞれ1点を加え、終わってみれば7-1と桜美林大に対し初戦を勝利で飾った。

 打撃力もさることながら、隙さえあれば先の塁を狙うという走塁の意識の高さ、それを成功させられる技術の高さが見られる試合だった。中でも、昨年春、秋とベスト9に輝いた串畑の、躍動感たっぷりの走塁は観る価値ありだ。

 投手では、昨年エースとして東海大を引っ張った山﨑伊織(4年・明石商)が、3月にトミー・ジョン手術を受け今季の登板がない中、昨秋の神宮大会でも先発を任された高杉勝太郎(3年・東海大札幌)に期待がかかる。この日先発した高杉は、7回4安打3四球1失点と粘りの投球でチームを勝利に導いた。

 試合後、「初戦はチームとしても大事なので、自分がしっかりした投球をするという気持ちでマウンドに上がりました。7回のあの1点は悔しいので、そこの詰めの甘さをこれからしっかりと修正していきたいと思います」とはっきりとした口調で話した右腕は「目標である(山﨑)伊織さんを超せるように頑張る」とエースの自覚を見せた。

 また、この試合では8回から左腕の松山仁彦(4年・東邦)、9回には故障から復帰した小郷賢人(4年・関西)が登板。その安定感は、もはや「東海大の勝利の方程式」だ。どちらも下級生の頃から登板している投手で、勝利の味をよく知っている。最後のシーズンもチームを勝たせる投球を期待したい。

 第2戦は、筑波大に善戦したものの惜敗という結果となった。投手力、打力、走力など全体的に高いレベルにある東海大が大敗することはめったにない。その代わり、小さなミスが重なって惜敗することがあり、そんな試合のあとは安藤強監督も「ああいうエラーをなくしていかなければならない」と口にする。今回も、1-1で迎えた9回表の守備でエラーが重なり勝ち越し点を与えてしまった。

 それでも9回裏には先頭の串畑が二塁打で出塁すると、小玉の犠打で1死3塁と大きなチャンスを作る。しかし、次の打者がスクイズを試みるも空振りし三塁走者が三本間に挟まれタッチアウトとなってしまった。結局この回は得点できず、負けを喫した。

 負けはしたが、リーグ戦初先発の安里海(3年・東海大相模)が7回5安打4四死球1失点と好投したのは、今後に向けても明るい材料となった。そして東海大は、昨年の長倉連、今年の戸﨑慶(4年・東海大相模)と、主将を代打の切り札にしている。この試合でも、0-1の1点ビハインドで迎えた7回1死2塁の場面で、代打の戸﨑が適時打を打ち同点とした。その試合が負けられない試合であればあるほど、主将が重要な場面で出場し結果を出すことはチームに大きな影響を与えるのではないだろうか。

 5連覇を達成するには、もう1試合も負けられない。ここから地力の強さを発揮して欲しい。

【後編】に続く

首都大学野球秋季リーグ戦、次の試合は10月3日、4日、10日です
http://tmubl.jp/

首都大学野球連盟のYouTubeチャンネルで試合をLIVE配信
https://www.youtube.com/channel/UCevsT7WGiCc4y8XiVCeR1ZA

※球場での観戦は事前に登録した人のみです

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好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいと思い、OLを辞め北海道から上京。 「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。 大学野球、社会人野球を中心に、記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。 面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。

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