「お尻の筋トレが健康寿命を伸ばす」元アイスホッケー選手、現柔道整復師・石岡知治氏

「お尻の筋トレが人生100年時代を可能にする」

元アイスホッケー選手で現在は柔道整復師として活動する、石岡知治氏が提唱するメソッドが話題になっている。

石岡知治氏はアイスホッケー選手時代の経験もあり、「お尻の健康」を重要視する。

~二足歩行をする人間にとってお尻は重要

「アスリートのみならず、全ての人にとってお尻は非常に重要な場所です」と石岡氏は語り始めた。

「お尻を少しくらい雑に扱っても良い、と思っている人は少なくないと感じます。しかしそういった考え方は大きな間違いなので、今すぐ改めて欲しいと思います」

「自重(体重とも言える)と足元から伝わる重力の反発力が交差して、お尻には常に大きな負荷が掛かっています。運動をしていない人や子供でも、お尻の筋肉は厚く発達するのはそのため。お尻は重要な箇所であることの証明です」

例えば、子供の頃にお尻へ注射された経験がある人もいるのではないか。今では体罰として大問題になるが、何か悪いことをした時にお尻を叩かれた経験がある方もいるはずだ。「お尻を雑に扱っても良いと考えている事を顕著に表す行為だったと言える」と付け加える。

「人間は唯一、二足歩行をする生物です。特殊な骨格で生きており、それらを支えるためにもお尻は非常に重要な役割を担っていることを忘れないで欲しいと思います」

柔道整復師として活動すると共に、法政大アイスホッケー部メディカルコンディショニングコーチも務める。

~治療や施術は身体全体に良い影響を及ぼす

北海道釧路市出身、アイスホッケーではU-18、U-20 等の日本代表にも選出され、名門・西武鉄道(現在は廃部)へ入団した。また、インラインホッケー日本代表監督兼プレーヤーとして世界大会出場を果たした経験も持つ。

「現役時代は常に腰痛に悩まされていました。そんな時に出会った整体の先生からお尻の背術をしてもらったことが、今の道へ進む大きなきっかけとなりました」

現役引退後は柔道整復師の国家資格を習得、埼玉県入間郡毛呂山町で「いしおか整骨院」を開院した。セカンドキャリアを決めるきっかけとなったのが、自身の腰痛を劇的に改善してくれた施術だった。

「試合当日に入った行きつけの喫茶店の方に、『腰が悪いなら診てもらいなさい』とお客さんの整体の先生を紹介していただいた。すぐにお店の奥の倉庫部屋で横向きに寝かされ、お尻を揉みほぐしてもらいました」

「先生の手を見ると強く力を入れてる感じもなかったのですが、施術を始めると絶叫するほど痛かった。その後、強烈な痛みは、痛気持ち良い感じに変わってきた。施術後には腰の痛みは完全になくなり、重だるかった脚が軽くなる効果が出ました」

「その後の試合では、自分のパフォーマンスが信じられないほど高まりました。腰痛を庇いながらやっていたのが嘘のようでした。身体が普段以上に動き、チームの全ポイントに絡む活躍ができました」

腰痛が氷上のパフォーマンスにまで影響を及ぼしていたという。それがお尻部分の背術のみで飛躍的に改善、試合中の活躍に直結した。

「治療や施術というのは患部の痛みを取るだけではなく、身体全体に良い影響を及ぼすのがわかりました。心の底から感動を覚え、引退後のセカンドキャリアでは医療の世界を目指そうという気持ちにも繋がりました」

アイスホッケーではアンダー世代の日本代表に選出、インラインホッケーでは日本代表監督兼プレーヤーとして世界大会出場経験もある。

~お尻は車のサスペンションと同じ

柔道整復師となりお尻への関心はより高まった。「お尻は車のサスペンション」と例え、人間が健康に暮らすために重要な箇所と語る。

「歩く、走る、という日常生活での動作は、バランスを崩してから再び立て直すという動きの連続で成り立っています。その際に股関節部分に瞬間的に大きな負荷が掛かる。その負荷を減免吸収する機能を担っているのがお尻です」

「お尻は車のサスペンションに相当します。サスペンションがイカれた車に乗っていたら、振動が身体に直接伝わり大変なストレスを感じます。乗り心地などの以前の問題であり、車両本体にも相当なダメージが蓄積されます。人間の身体も同じです」

「お尻の筋肉が硬くなったり筋肉量が減ってしまうのは、サスペンション機能が低下した状態。これを放置すると身体全体にさまざまな悪影響を及ぼします。お尻の筋肉は常に健康な状態であり、また、必要な量があることが重要です」

お尻の筋肉が硬くなったり、痛めたりすると機能が悪化する。そうするとお尻周辺はもちろん、歩く、走るを含めた身体全体に悪影響が及んでしまうのだ。

スピードスケート五輪メダリスト・岡崎朋美氏(写真左)と石岡知治氏(同右)。

~お尻の筋肉ケアと運動の両方が重要

お尻のサスペンション機能を十二分に活かすためには、お尻の筋肉をケア(=マッサージやストレッチ)する意識を常に持つことが必要だと続ける。

「日常的に負荷が掛かっている箇所に対して何のケアもしなければ、その部分の筋肉には疲労がどんどん蓄積されます。必然的に硬くなってしまい、サスペンション機能を十二分に発揮することができません」

「お尻の筋肉のケアとは、疲労が蓄積して硬化することを防ぐことです。長持ちさせることもできます。人間にとって非常に大事な箇所であるお尻を大事に扱い、硬くなることを防ぐのが重要です」

またお尻の筋肉のケアに加え、運動をすることも重要だという。運動しないで筋肉量が減少することで、関節可動域が小さくなり身体も動かなくなる悪循環に陥ってしまう。

「若い頃は色々な形で運動する機会もありますが、歳を重ねるごとに減ってしまい身体の退化が起こります。お尻も同様で使わないと筋肉量が減ってしまいます。関節可動域が小さくなり、身体も動かなくなってしまう。またお尻が垂れることにも直結します」

お尻の本当の役割を理解して、それに沿った動作で筋肉に刺激を与えていくことが大事だと強調する。

新日本プロレス・メディカルトレーナーの三澤威氏(写真左)と石岡知治氏(同右)。

~お尻の機能低下が原因の症状が存在する

お尻の健康の重要性を説く、石岡氏が著者の「お尻の力」(日本写真企画、9月1日発売)が発売前から話題だ。

「私が臨床や筋トレのレッスンで得た事実のみです。脚色や大袈裟に表現した部分は一切ありません。多くの方々に共有して頂きたいと思うことだけをまとめました。医療知識がある方ほど驚く体験談も連載されています」

現役時代からのさまざまな経験に加え、長年に渡って蓄積された知識による珠玉のメソッド書は多くの注目を集めている。競技経験の有無や年代、性別を超え、多くの人々に刺さっている。

「お尻の機能低下によって一般的に出やすい症状があります。また女性特有やアスリートに関わるものもあるので、理解して欲しいと思います」

「お尻の筋肉を柔らかくするセルフケア方法、そして効果的にお尻をメイク(=鍛える)する筋トレ方法とメニューも紹介しています。無理せず継続できるようになっているので、ぜひ取り組んでみていただきたいです」

競技者、柔道整復師として過ごしてきた時間の中で知り合い、意気投合した他競技アスリートとの対談も掲載されている。

「スピードスケート五輪メダリスト・岡崎朋美さんは、施術させていただいたこともあります。柔軟性ある発達した筋肉に驚きました。新日本プロレス・メディカルトレーナーの三澤威先生は柔道整復師を志した際の専門学校の同級生です。お二人と多くのことを話し合う機会を得られました」

「お尻のコンディションが全身にさまざまな影響を及ぼす」ことに共感したもの同士、対談は大きな盛り上がりを見せた。

「お尻の力」(株式会社日本写真企画/石岡知治著)が9月1日に発売となった。

「人生100年時代と言われ、寿命が延びています。死ぬ直前まで元気にいることが幸せな人生ではないでしょうか。運動によってボケない、病気にならない、痛くならない、といった元気でいることが可能になります。ぜひお尻の筋肉を大事にして鍛えることをお勧めします」

身体のケアや筋トレというとハードルが高く感じるかもしれない。しかし、お尻という1カ所フォーカスすれば決して難しいことではない。お尻を大事にすることで、人生が少しだけ良いものになれば幸せになれるはずだ。

(取材/文・山岡則夫、取材/写真/協力・株式会社ハウオリ・プロジェクト、株式会社日本写真企画)

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