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ジャンク5×甲子園夢プロジェクトによるBaseball5体験交流 ベースボール型スポーツを通じた共生社会の実現へ更なる一歩に

5月某日、桜美林大学でジャンク5によるBaseball5体験会が行われた。

「甲子園夢プロジェクト」とタッグを組んだ本イベントでは、同プロジェクトメンバーが初めてBaseball5に挑戦。

40人以上が参加し、ボール一つで新たな絆が生まれた一日となった。

(写真 / 文:白石怜平)

「ジャンク5」が掲げる“共生社会の実現

本体験会はBaseball5の強豪チーム「ジャンク5」が中心になって行われた。

2020年末に本格始動して以降、先駆者として主に強化・普及・教育の3軸の全てで日本のBaseball5を牽引している。

24年1月に初めて行われた「侍ジャパンチャレンジカップ Baseball5日本選手権」の初代優勝チームとなり、同年開催された世界大会では多数の侍戦士を輩出。

侍ジャパンBaseball5代表の指揮官を務める若松健太監督や主将の島拓也選手を筆頭に、大嶋美帆・唐木恵惟子・三上駿の4選手が昨年ワールドカップを戦った。

Baseball5の強豪としても君臨するジャンク5(1月の日本選手権にて)

ただ強さを求めるのみではなく、教育とリンクさせ地域課題の解決にアプローチするなど、好影響の起点となり競技を普及させている。

チームの母体が「ジャンク野球団」という一般社団法人であること、若松氏

が桜美林大学の准教授であるからこそ実現できた数々の取り組みがある。

昨年は大学と連携し、町田市や周辺地域の小中学生を対象にBaseball5を通じての教育プログラムを展開した。

これは同市における女子児童の体力平均値が他の地域よりも低いデータが出たことから、その課題に向けたアプローチとして行ったものであった。

さらにBaseball5の輪は特別支援学校へと広げていく。昨年8月には東京都立羽村特別支援学校への出張授業を開催したが、これは若松氏が東京都からある課題があると聞いたことがきっかけだった。

「特別支援学校での体育授業や卒業後の健康面で課題があることを聞いた時、『これは何か貢献することができるのでは』と考えるきっかけになりました」

ここでジャンク野球団として、新たなミッションを掲げた。

ーベースボール型スポーツで『共生社会』を実現するー

そのミッションを最初に具現化したのが今年の1月。

羽村特別支援学校・東京都立南大沢学園(八王子市)・東京都立町田の丘学園・東京都立多摩桜の丘学園の4校によるBaseball5体験会を初開催した。

1月に世界初として行われた特別支援学校によるBaseball5体験会

特別支援学校が集まってBaseball5体験会を行うのは“世界初”の取り組み。参加した児童は「早くこの日が来てほしい」とこの日を待ち侘び、全力でボールを追いかける姿を見ていた保護者が涙を見せるシーンもあった。

健康・スポーツそして福祉がコラボレーションされた空間は笑顔と感動で満ち溢れた歴史的な一日だった。

甲子園夢プロジェクトがBaseball5に初挑戦

そして共生社会の実現はまた一歩、今回も大きな動きとともに前進した。それは、ジャンク5と「甲子園夢プロジェクト」が共催したことである。

同プロジェクトは、全国各地の特別支援学校に通う生徒たちが硬式野球に取り組む活動。知的障がいがある球児たちが甲子園を目指そうと、21年3月に発足した。

愛知県や東京都で甲子園予選に出場を果たし、硬式野球で躍動するメンバーを多く輩出してきた。今回甲子園夢プロジェクトとしては、Baseball5へ挑戦するのは初。

この日はプロジェクトの代表を務める阿部隆行・玉川大学准教授が実現に至った背景を明かしてくれた。

「我々は『知的障がいを持つ高校生に甲子園挑戦の機会を!』を合言葉にプロジェクトをスタートして4年を迎えました。

甲子園の予選出場を果たし、夢が叶ったメンバーもいる一方で野球部すらなく、夢叶わず卒業していくメンバーも何人も見てきました。

そのような状況下で、甲子園夢プロジェクトとしても新たな取り組みをしていきたいと考えていました。

Baseball5が障がいの有無関係なく楽しめるスポーツであることを知っていて、導入するきっかけを探していたのですが、そんな中で玉川大と同じ町田市にある桜美林大の若松先生と出会う機会に恵まれました。

それで、ジャンク5と甲子園夢プロジェクトがコラボしたら面白い取り組みができるのではないかと意気投合して実現に至ることができました」

甲子園夢プロジェクトの阿部氏(写真左)とジャンク5の若松氏(同右)

桜美林大学のベースボール型競技の各部活動からも参戦

甲子園夢プロジェクトからは、特別支援学校を卒業した5名と現役の生徒2名が参加した。全員硬式野球・軟式野球・ソフトボールのいずれかを経験している生徒たちである。

また、ジャンク5に加えて桜美林大学Baseball5部、さらに同大の硬式野球部とソフトボール部の選手も参加するなど、総勢40人以上が集まった。

混合チームを複数つくり、打撃・守備の練習からスタート。自らの手で打ち、グローブを使わずに捕る経験を重ね、その新鮮さに早速笑顔が見られた。

特に打撃ではBaseball5経験者が一人ひとり丁寧に教え、瞬く間に打球の速さが増していった。

競技特有の素早い動きにすぐ対応した

最後は試合形式へ。直前で得た技術を披露するように鋭い当たりを連発し、黒で覆われた頑丈なフェンスからは迫力ある音が響き渡った。

打球を全力で追いかけ、アウトにした時にはそのプレーを讃えるなど、1プレーごとにコミュニケーションが深まっていく。

そして、競技の特徴であるスピーディーさが走・攻・守全てにおいて表現され、ベースボール型スポーツの経験をここでも発揮した。

打球音が館内全体に届いた

次第に外野には人が集まり、コートでプレーする全員に向けて声援そして拍手で鼓舞する。自然と会場全体でその熱気が選手を後押しした。

終了後はお互いに礼とハイタッチで、相手もしっかりとリスペクトした。

この体育館そして迫力を生み出したフィールドなど、若松氏の熱き想いと行動でこの熱気を生み出した。その光景を見て自らも奮い立った。

「ジャンクとして共生社会の実現に向けて本気で取り組んでいますが、やはりあの環境が生み出す雰囲気。

これが更に我々の背中を押してくれました。甲子園夢プロジェクトのメンバー全員も初めてとは思えないプレーで素晴らしかったです」

試合では真剣勝負の雰囲気が醸成された

近い将来「パラ・ジャンク5」の誕生へ

この熱気が冷めやらぬまま会は終了。阿部氏も高ぶる気持ちと共にこう総括した。

「インクルーシブなスポーツとしてBaseball5の持つ可能性を感じた1日だったと感じていますし、今回のイベントが特別支援学校に通う小中高校生や卒業生などにBaseball5を普及していくための第一歩となりました。

Baseball5の魅力はもちろんのこと、桜美林大生・特別支援学校の在校生・卒業生・ジャンク5のメンバーなどが一緒に楽しんでいる姿を目の当たりにして、スポーツの価値・素晴らしさについて改めて認識するイベントとなりました。

『障がい者の生涯スポーツとしてベースボール型スポーツの普及』を目指して、普及活動を全国で展開していくためにも甲子園夢プロジェクトのメンバーを中心にチームを組み、いずれ健常者の大会に出場していきたいです」

Baseball5を通じて新たな絆がつくられた

そして、ジャンク5は現在新たな構想を具現化するべく、準備を着々と進めている。それは「パラ・ジャンク5ユース」「パラ・ジャンク5」の発足である。

これは阿部氏も準備に加わり、お互いの経験や知見を組み合わせたものになろうとしている。両者は描く展望を語った。

「日本発で、知的障がい児者のためのBaseball5の大会を、ジャンク5さんと一緒に築いていき、いずれ全国大会にし、日本代表を輩出していきたいです」(阿部氏)

「パラジャンク5を少しずつ進めていますので、甲子園夢プロジェクトと一緒に形へとしていきたいですね。またこの活動をいろいろな特別支援学校にも発信して、特別支援学校の体育の授業で取り入れてもらいたいです!」(若松氏)

ベースボール型スポーツを通じた共生社会は、実現へと着実に前進している。両者は歩みを止めずにさらに突き進んでいく。

(おわり)

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