青春をもう一度 ママさんバレーで全国を目指すプリティ川東
ママさんバレーボールで全国大会を目指す。
結婚・出産を経てから、もう一度目標を持って挑戦し、青春を味わえるのがママさんバレーボールの一番の魅力である。青春時代と同じようにボールを追いかけ、試合に勝っては喜び、負けては泣く。そんなママさんバレーを子育てしながら楽しんでいるプリティ川東の選手たち。
愛媛県新居浜(にいはま)市に拠点を置くプリティ川東は全メンバーが子育てに奮闘しながら、バレーボールで全国大会を目指している。今回はチームを立ち上げ、チーム内で選手兼監督を務める佐々木恵さんに話を聞いた。
コロナ禍を経てバレーボールを 2022年6月に発足したプリティ川東
プリティ川東は2022年6月に創設された新鋭のママさんバレーボールチームだ。チームを立ち上げた佐々木さんは中学、高校時代にバレーボールを経験。就職後は9人制バレーボールの社会人チームに所属し、プレーを続けていた。
しかし、コロナ禍の影響で社会人チームの活動が休止に。行動制限が緩和され、活動が再開できるようになったが、メンバーの多くが結婚や出産をしたことや大学生など若いチームが出てきたことを機にママさんバレーボールに移行を決断した。愛媛県新居浜市を拠点に、プリティ川東を結成した。
プリティ川東は佐々木さんと共に社会人チームで活動していたメンバーが半分を占める。一方、いわゆるママ友つながりで新たに参加したメンバーも多い。現在は13人が在籍し、新居浜市内の小学校で毎週月曜日と土曜日の週2日、夜の2時間と限られた時間の中で練習を実施。毎月、練習試合を行うなど、精力的に活動している。
大人になってからでも始めやすいママさんバレーボール
「ずっと続けられるスポーツであり、学生時代にバレーを経験していない素人でも始めやすい」と佐々木さんはママさんバレーボールの魅力を話す。
ママさんバレーボールには年齢の上限がなく、プリティ川東の所属選手も20代から50代までと年齢層が幅広い。50歳以上(いそじ大会)、65歳以上(ことぶき大会)、70歳以上(おふく大会)など、年齢別の大会も開催されている。年齢制限がないため、生涯バレーボールを継続することができる。
また、一般的な6人制バレーボールではなく、ママさんバレーは9人制。6人制バレーボールでは、リベロといった守備専門のポジションがあるが、サーブ権が変わる度にポジションが移るローテーションが行われる。そのため、前衛、後衛とさまざまなポジションの練習が必要だ。
一方、9人制バレーボールは、6人制でみられるローテーションがない。前衛に5人、後衛に3人、その間に1人が配置されるのが、基本的なフォーメーションとなる。自分の身体的特徴や強みに合うポジションを1つこなすことができれば、試合で活躍することができる。大人になってから、バレーボールを始めたという人でも、楽しめるのが大きな魅力だ。実際にプリティ川東にも、春高バレーに出場した経験を持つ実力者もいれば、大人になってからバレーボールを始めた人も在籍している。
そのほか、社会人一般のバレーボールと比べても、ネットの高さが低くなり、ボールのサイズも小さくなる。サーブも1回まで失敗が許されるなど、初心者でも入り込みやすいルール設計がされている。
ママさんバレーで青春をもう一度
中でも、佐々木さんは「子どもが生まれてからも、もう一度目標を持って、バレーボールに取り組め、もう一回青春ができるのが一番の魅力」と話す。これは佐々木さんだけでなく、プリティ川東の全メンバーが口にしていることでもある。
一般的に結婚、出産、子育てといったライフイベントにより、スポーツから離れてしまうことが多い。だが、プリティ川東のメンバーは全員子育て奮闘中のママさんで構成されている。全国ママさんバレーボール連盟の規定では、独身者でも30歳以上であれば、チームに所属できると定められているが、プリティ川東は子育て中のママさんを対象としている。
同じ地域に住み、同じ子育て中という共通項も多い。だからこそ、互いに助け合いながら、バレーボールに打ち込むことができる。子どもを練習場に連れていき、子ども同士の交流もさかん。練習日によっては、大人より子どもの数が多い時もあるという。そのほか、バーベキューや忘年会を開催するなど、バレーボール以外のイベントも行われている。
忘年会といったオフの時間もあるが、バレーボールも本気だ。練習では経験者が未経験者に教えたり、試合で課題となったプレーを行ったりとバレーボールを楽しみつつ、メリハリを持って取り組んでいる。試合で負けて、悔しさのあまり、泣いてしまうメンバーも出るほどだ。そんなプリティ川東にはある大きな目標がある。
2025年は全国大会へ挑戦
来年2025年で創設4年目を迎えるプリティ川東は、全国大会出場という目標を掲げている。全国大会のチャンスは、8月に行われる全国ママさんバレーボール大会、11月に行われる愛・チャンピオンズリーグの計2回。全国大会への出場権を得るには、各都道府県で行われる予選大会を勝ち抜く必要がある。
2024年9月に開催されたテレビ愛媛杯では県3位に輝くなど、力が付いているが、産休のメンバーがいたこともあり、2024年度の予選大会には出場しなかった。それだけに、産休のメンバーが復帰する2025年は全国大会出場にかける思いは大きい。
その一方で課題もある。プリティ川東に限らず、ママさんバレーボール界全体でプレー人口が年々減少。チーム数もピーク時の2005年には全国で284チームが登録されていたが、2022年には165チームにまで縮小している。愛媛にも50チームほど登録されているが、人数が揃わず大会出場を断念するチームもあるという。プリティ川東も現在は13人が在籍しているが、県内では少ない方で、メンバーも随時募集している。
ママさんバレーボール界全体のプレー人口が増加すれば、プリティ川東のメンバーも増えると考え、プリティ川東では、練習や試合の様子をインスタグラムおよびTikTokといったSNSでママさんバレーボールのおもしろさを発信。実際にインスタグラムでの投稿をきっかけにプリティ川東に加入したメンバーも出てきている。また、ママさんバレーボールは居住地区によって、所属できるチームが限られるため、入部希望者を他のチームに紹介するケースも。結果的にSNS投稿がプリティ川東のメンバー増加、ママさんバレーボール界全体のプレー人口増加につながっている。
そのほか、金銭面での課題もある。スポンサーが付くチームもあるが、ごく一部であり、全国大会への出場を決めても、遠征などの費用面で断念するチームもあるという。プリティ川東も例に漏れず、ボールの買い替えなど、金銭面での苦労が絶えない状況だ。
それでも、プリティ川東は目標である全国大会出場に向けて、歩みを進めようとしている。目標に向けて取り組む中で、ママさんバレーボールの注目度アップやプレー人口の増加に寄与できればと佐々木さんは願う。子育てに奮闘しながらも、バレーボールに打ち込むプリティ川東の挑戦に注目だ。