パラスポーツを牽引!デフバレーボール日本代表候補に潜入取材

デフバレー代表候補 多くの選手が仕事をしながら世界を目指す!

過去最高のメダル獲得を牽引!今注目のデフバレーとは

「デフリンピック」という言葉をご存知でしょうか?「デフリンピック(Deaflympics)」は、聴覚障害者のためのスポーツ競技大会で、4年に1度世界規模で行われています。
デフリンピックの前進である”世界ろうあ者競技大会”に遡ると歴史は古く、1924年から開催されています。そんなデフリンピックにおいて、日本は2017年の夏季大会で、過去最高となるメダル27個を獲得し、日本選手団は日本障がい者スポーツ協会からの表彰も得ています。

そのデフ競技の中でもデフバレー(聴覚障害者によるバレーボール)は、2017年に女子チームがデフリンピックにおいて金メダルを獲得し、第2回日本パラスポーツ賞を受賞しており、今注目の競技です。
今回は、2021年デフリンピックのメダル獲得にむけて強化合宿を行っている、デフバレー・男子日本代表候補メンバーの強化合宿を取材してきました。
(※2020年7月に予定されていた世界選手権は、新型コロナウイルスの影響で中止となりました。現在は、開催未定となっております。) 

女子金メダルにつづけ!男子デフバレーの2020年

今回取材させていただいた男子デフバレーは、2017年デフリンピックにおいて決勝トーナメントに進出し7位という成績をおさめています。次回2021年のデフリンピックにおいてメダル取得を目指す男子デフバレーチームを率いるのは、2018年に就任された村井貴行監督。
ご自身も中学校・高校と千葉県選抜として全国大会に出場された経験もお持ちで、2017年の第23回デフリンピックサムスン大会では女子代表チームのコーチも務めた方です。

この日は、日本代表候補の強化合宿で、千葉県でベスト8の実績を残している八千代松陰高校との練習試合が行われました。
デフバレーは、コートや用具、競技形式など一般のバレーボールのルールと同じなので、スピード感・迫力ともに見応え充分です。 

こちらは試合前のミーティングの様子。選手間でも聴力に差があるので、ミニホワイトボードと手話通訳にて、ミーティングを行います。

 
代表選手の迫力あるスパイク!


試合中のコミュニケーションは、手話や肩をたたいたり手でのアクションを取って行うことが多いですが、展開が早く、通常のバレーボールの試合と変わらない点に驚きました。

代表候補選手は全国各地にいるため、代表チームでは、月1回の合宿にて今回のような練習試合や合同練習を行っています。また、選手の半数以上が日中は仕事をし、限られた時間で練習を行っています。
代表候補というと、実業団チームのような半日仕事・半日練習などを想像していたのですが、そんなことはなく、普段は様々な企業や団体で健聴者と仕事をこなしています。そのうえで、練習や合宿に打ち込み、日本代表として世界と戦うことを目指している選手が多くいます。

3足のわらじを履く谷川潤一郎選手!

続いて、仕事、デフバレー、さらにはイクメンと、3足のわらじをはく谷川選手にインタビューを行いました。

谷川選手

―― はじめに、普段のお仕事を教えて下さい
谷川さん:平日に、設計の仕事をしています。勤務時間は、8:30~17:15が定時で、残業をするときだと20時くらいまで行います。

―― フルタイムで働く上に、残業まであるんですね!平日のトレーニングはどうされているんですか?
谷川さん:以前は、平日は仕事のあとにジムに行ってトレーニングをしていましたが、去年6月に子供が生まれたので、平日だけでなく、休日も家でトレーニングをしつつ、皿洗いや洗濯など家事を手伝っています。

―― フルタイムで働く上、家事までされてるとは頭が下がります。バレーボールの練習はどのタイミングで行うんですか?
谷川さん:地元のデフバレーチームに所属しているんですが、土曜日が練習日なので、そこが定期練習ですね。あとは月1回の代表候補の練習に参加しています。広島に住んでいるので、今回は金曜日に半休をいただき、茨城に来ました。笑

―― 広島からですか!すごいですね。難聴は生まれつきですか?
谷川さん:そうですね、もともとは親も気づかなかったようなのですが、3歳の頃に病院でみてもらい、難聴がわかりました。

―― デフバレーを始めたきっかけを教えて下さい。
谷川さん:もともとサッカーやテニスなど、スポーツは好きで小学校から行っていましたが、デフバレーをはじめたのは社会人になってからで、デフの友人に勧められたのがきっかけです。

―― なるほど。サッカーとバレーボールではどのような違いを感じますか?
谷川さん:サッカーやテニスもチームで戦いますが、個人技で勝てる要素があります。その点バレーボールは、よりチームで戦う点が大きな違いだと感じます。

―― 今の職場には、デフバレーをやっていることは伝えていますか?
谷川さん:日本代表候補に選ばれたことを部長が社内で周知してくれたので、知ってくれています。選ばれるかはまだわかりませんが、代表に選ばれると海外での試合があり、休暇が必要になる点も・・・一応話してはいます。笑

―― インタビューありがとうございました。ぜひ頑張ってください!
谷川さん:ありがとうございます!
 
一つ一つ言葉を選びながらも、明るく話してくれる谷川選手

今回インタビューした谷川選手以外にも、日中は本業を持ちつつ、代表候補選手に選ばれている選手が多いとのこと。難聴であることを物ともせず、仕事・デフバレーと両立しながら、2021年のデフリンピックを目指す日本代表チームに注目です!
 

Tsuyoshi
埼玉在住のライターです。自身での競技経験は学生時代の格闘技のみですが、さまざまなスポーツの素晴らしさを皆様にお伝えできるよう、精一杯務めさせていただきます。

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