バレーボールを人気スポーツに~バレーボール新リーグ構想~

2016年に開幕したバスケットボールの新しいプロリーグである「Bリーグ」や、
2018年秋の開幕を目指す、卓球の新リーグである「Tリーグ」構想など、
現在、さまざまなスポーツの新しいリーグ体制が誕生している。
 
バレーボールもその一つである。
先日、日本バレーボール機構から、2018年秋に開幕する新リーグ名称及び、新リーグのロゴデザインが発表された。
新リーグ名称は「V.LEAGUE」、ロゴは「つなぐ」、みんなで一緒にやっていく、という思いを込めて決めたという。
 
新リーグ構成は、
V・プレミアリーグ以上の高い競技レベルを目指すV1リーグ、
V1リーグを目指すV2リーグ、
地域に密着し、底辺拡大を狙うV3リーグの三部構成となっている。
各リーグS1からS3までのライセンスを取得する必要があり、V1リーグ、V2リーグは入替戦も実施されるがV3リーグの入替戦はない。
V1リーグは男子10チーム、女子12チーム、V2リーグ、V3リーグ男子のチーム数は調整中、V3リーグ女子はチーム数増加時に開催を検討、となっている。
 
2017年12月現在の各ライセンス取得チームは以下のとおり。
〈男子〉
【S1】
・東レアローズ
・豊田合成トレフェルサ
・ジェイテクトSTINGS
・サントリーサンバーズ
・パナソニックパンサーズ
・堺ブレイザーズ
・JTサンダーズ
・FC東京
・大分三好ヴァイセアドラー※
・VC長野トライデンツ※
・つくばユナイテッド Sun GAIA※
 
【S2】
・富士通カワサキレットスピリッツ
・大同特殊鋼レッドスター
・トヨタ自動車サンホークス
・警視庁フォートファイターズ※
・埼玉アザレア※
・東京ヴェルディ※
・きんでんトリニティーブレッツ※
・長野GaRons※
 
【S3】
・近畿クラブスフィーダ※
・兵庫デルフィーノ※
・奈良NBKドリーマーズ※
・東京トヨペットグリーンスパークル※
【S3審査中】
・ヴァレアス北海道
・ヴィアティン三重
その他、1チームが新規申請中
 
〈女子〉
【S1】
・NECレッドロケッツ
・久光製薬スプリングス
・日立リヴァーレ
・JTマーヴェラス
・トヨタ車体クインシーズ
・東レアローズ
・デンソーエアリービーズ
・上尾メディックス
・岡山シーガルズ
・PFUブルーキャッツ
・KUROBEアクアフェアリーズ
・JAぎふリオレーナ※
・フォレストリーヴス熊本※
・ブレス浜松※
 
【S2】
・大野石油広島オイラーズ
・トヨタ自動車バルキューレ
・柏エンゼルクロス
・群馬銀行グリーンウィングス
・プレステージ・インターナショナルアランマーレ
・GSS東京サンビームス※
・大阪スーペリアーズ※
 
【S3】
1チームが新規申請中
 
※は一部条件付きのライセンス許可
 
〈新リーグ構想についてはこちら〉
http://corp.vleague.or.jp/special/

 

バレーボールは人気スポーツ?? 

バレーボールは、部活としてはもちろん、小中学校の体育の授業、遊びの中など、やったことがない、という人はあまりいないだろう。
ルールは知らなくても、どのような競技が想像できない人もほとんどいないだろう。
これだけ国民に競技が浸透しており、オリンピックの種目にもなっているが、日本を代表する人気スポーツとは言い難い。
 
今回は、バレーボールが人気スポーツの仲間入りをするための二つの課題について記したいと思う。

 

バレーボールを人気スポーツに
~地域から見たバレーボール~

まず、地域性の観点から一つ。
首都圏や三大都市、地方中枢都市に集中しておらず、地域との繋がりもあまり強いわけではない、ということ。

野球では、12球団中5チームが首都圏を本拠地としており、
その中には、球界を引っ張る立ち位置のチームの一つであるジャイアンツや、
新たに若者の人気を集めているベイスターズなど、注目度の高いチームが揃っている。
そのほか、札幌(ファイターズ)、広島(カープ)、福岡(ホークス)など、
人気、強豪チームも、地方中枢都市に属しており、球場のアクセスも悪くない。

サッカー(Jリーグ)は、青森、福井、滋賀、三重、奈良、和歌山、島根、高知、宮崎以外の38都道府県にチームがあり、
松本山雅のように、J1でなくとも地域から根強い支持を受けているチームもある。
J1スタジアムも、首都圏だけで8ヶ所もある。また、ホームとビジター、アウェイを設け、各チームのホームタウンで試合が行われている。

それに対しバレーボールは、
サントリーやパナソニックなど、強豪は大阪に多くあるが、その他は静岡、愛知、佐賀など、点々としている。
また、国際大会や天皇杯などの大きな試合は都内や主要都市で行われることが多いが、
シーズンは新潟や大分、広島など、ホームタウンに関わらず全国各地で行われている。
地域の人にも馴染みが薄く、応援しようと思っても、アリーナが簡単に足を運べる場所にないなど、
“アツい”バレーボールファンがつきにくい、といったところが現実ではないだろうか。
新リーグ構想により、一定数のホームゲームの開催が義務化されることで、地方に足を運ぶほどではなかったファンをつなぎとめ、
徐々に“アツい”ファンへのランクアップが見込めるのではないかと私は考えている。
 
また、新リーグ構想により、チーム名に「ホーム地域名」の使用が可能になった。
今までは企業団のチームであったので、東レアローズ、サントリーサンバーズのように企業名がチーム名に採用されていることが多い。

それも地域に根付きにくい一つの原因ではないだろうか。

地域から愛される=ファンを増やすということは、チームの発展に欠かせない要素である。
地域から愛され、大きくなったチームとして、広島東洋カープは良い例だろう。
V3リーグも地域密着を目指したものであり、協会としても地域密着を意識していることが分かる。
新リーグ構想により、地域から愛されるたくさんのチームが誕生することを願っている。

バレーボールを人気スポーツに
~全日本で終わらせない~

もうひとつの理由として、バレーボールの注目が「全日本」で終わってしまっていることを挙げたい。

全日本の試合を目にすることはあるが、その代表選手がどのチームに所属し、シーズンを過ごしているか知っている人は少ないだろう。
女子では、長年日本のエースとして活躍した木村沙織さんや、
その木村沙織二世と呼ばれている古賀紗理那選手、
男子では「ゴリ」の愛称で知られる清水邦広選手や、
「NEXT4」の一人、これからの男子バレーを担うであろう石川祐希選手など、名の知れた選手は多くいる。
しかし、その選手が普段、どのチームでプレーしているか知っている、言える人は少ないのではないか。

「全日本は知っているけれど、その先は知らない…」

全日本のテレビ中継を見ていても、選手の所属チーム名は大々的には表示されておらず、
シーズン中のプレーも放送されているところはあまり見受けられない。
全日本の視聴率は全試合安定して高いわけではないが、10%を超えることは多い。
多くの人が全日本を目にしているが、その選手は「全日本」で終わってしまっている。
その下の所属チームまで目に入っているのだろうか。
国際大会といっても、年に数回、数試合放映されるだけで、年中目にするわけではないが、
逆に言えばここがバレーボールファン以外の人が世界レベルのバレーボールを目にする数少ないチャンスである。
野球であれば「坂本は巨人」、サッカーであれば「槙野は浦和レッズ」など、代表選手と所属チームがマッチしているように、
チームに注目がいけば、社会人チームや高校など、アマの世界まで、草の根のように“アツい”バレー界のファンを増やすことができるだろう。

 

バレーボールのさらなる発展に向けて

代表から所属チームのつながりが見える、わかる、気づかせること。
そして多くの人に全日本からそれに付随するリーグ、チームまで興味を持たせ、会場に足を運んでもらうこと。
さらに、プロ化により、地域との繋がりが強まり、ホームタウンの人々に愛されるチームになること。

これらの要素が揃い、うまく循環できれば、国民的人気スポーツとしての第一歩を踏み出せるのではないだろうか。
今後、新リーグ構想により、バレーボールがどのように発展していくのか。その動向に注目したい。

呉地梨紗
早稲田大学文学部卒。学部を飛び越えてスポーツビジネスを学び、スポチュニティコラム編集担当として活動中。

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