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クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 岸岡智樹のラグビー体験会 ラグビーの難しさを知り、「上手くなるための根拠」を追求

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの岸岡智樹選手が昨年11月某日、ファン向けにラグビー体験会を開催した。

現役選手と直接ラグビーを教わることができるという特別な2時間が今回も展開された。

(写真 / 文:白石怜平:以降敬称略)

現役選手が企画からレクチャーを行うラグビー体験会

本体験会は岸岡が運営しているラグビーサークル「トモラボ」の一環として24年1月から行われている。コミュニティの参加メンバーからの希望があり昨年1月に実現し、約1年かけて4回行われてきた。

毎回リピーター・新規問わず30人近くが集まり、楕円を通じてお互いの絆を深めている。

岸岡もシーズンの最中であっても企画・参加し、さらに”特別ゲスト”として共にスピアーズで戦っている現役選手が登場しているのが大きな魅力である。

前回はビーチラグビー経験のある玉置将也がゲストを務めた

第1回からPR山本剣士・FB島田悠平が駆けつけ、スクラムやパスといった選手のポジションに合ったテーマを決めて岸岡がゲストを選定している。

プログラムは回を重ねることにより実践的な内容へと進化しており、前回24年5月はビーチラグビーに進出。

ビーチラグビーの経験者であるFL玉置将也が直接レクチャーを行うだけではなく、同年6月には和歌山で行われた大会にレクチャーを「トモラボ」メンバーが出場。予選リーグ3連勝を収める結果も残した。

今回の特別ゲストを務めたのはFL梁本旺義。チームのムードメーカーらしく、開始の仕切りを任された。

オレンジアーミーフェスティバルでは盛り上げ役を担った(写真中央)

テーマは「表」と「裏」での出し合い

梁本は開始前から参加者とパスを回しながら会話していたが、挨拶は「緊張しました」と意外な(?)スタートを見せた。

これまでは一つのテクニックをテーマにしていたが、今回は趣向を変えて行われた。それは、ラグビーのボール出しで用いられる「表」と「裏」でお互いに連携するプレー。

岸岡・梁本にいかに取られないようにするか、2人組で考えながらボールを出し合った。

”表と裏”で頭を使いながらパスを出した

岸岡はこの狙いを体験会終了後、このように明かしていた。

「今日頭を使って絶妙に難しいポジションでやってみました。というのも、今回はラグビーの難しさを知ろうというのをテーマにしました。

ラグビーは体が大きくてしかも速い、いわゆるフィジカル面のイメージが強いと思うのですが、頭や反応も大事だとよいうのを伝えたかったんです」

今回は”ラグビーの難しさ”を伝えた

その意図通り、ボールの出し合いではボールを奪おうとする2人の動きに反応し、時にはパスを出せず立ち止まるケースも。ここで、岸岡は一つヒントを与えた。

「着目ポイントとして、向かいの相手は体のどこが動かないでしょうか?それは腰です。なので、どの方向にパスを出せばいいかは腰を見て判断をして見てください」

ただ、梁本はレクチャーの際に参加者とのやりとりを通じて感じたことがあったという。

「僕が言いたかった”ボールを見る”というキーワードが教える前に出てきたんです。開始前からボール回しをしても感じたんですが、やはりレベルが高いんだと」

梁本のレクチャーも熱が入っていった

2人の現役選手が分かりやすく伝え、そしてこれまでの体験と実践により上達を重ねてきた参加者はすぐに理解。

ボールを渡しながら岸岡らのマークをかいくぐるシーンが何度も見られ、周囲から拍手が起きた。岸岡は参加者が適応する姿を見て、上述に続き以下のように話した。

「これまでは、ラグビーの”楽しさを知ろう”というイメージを持っていたのですが、みなさんが前向きに取り組んでくださったので応用編を取り入れました。

頭を使って新しい視点として気づいてもらうことで、『選手はすごいんだ』というのを伝えられたと思います」

参加者もすぐ応用編に順応した

また梁本も、これらのプレーについて終了後に解説を加えた。

「お互いに前に出過ぎないことです。ラグビーはチームスポーツなので、コミュニケーションが合わなかったらディフェンスは崩れてしまう。ですので、2人の距離感が重要となります」

頭を使って”仕掛ける”

梁本が語った「距離感」がさらにこの後のメニューのキーワードになった。岸岡が次のメニューとして「”仕掛ける”をやります」と伝えた。

ここで仕掛けるとは「1:1の状態に持っていくことです」と説き、その状態からどう味方にボールを渡すかシミュレーションを促した。

次は”仕掛ける”をテーマに行われた

直前の練習をより試合に近づけたメニューで、参加者はさらに頭を絞らせる。みんなが楽しくも迷いを見せた様子を見て、岸岡はポイントを3つ伝えた。

「距離・スピード・方向です。それぞれのバランスを考えてボールを出します。スペースを広げてパスの距離が伸びるとなるとその精度が必要です。

また、走るよりも球の方が速いのでそれ以上になることはない。早く投げすぎないように相手の方向を見るのが大事です。

なので、さきほど言った”腰の動きを見て”使い分けてみてください」

さらに応用の要素が加わったが、相手の動きをみながら徐々にパスを効率的に回せるようになった。レベルが高いと話していた梁本も、さらに驚きと笑顔を見せた。

岸岡が創り上げている価値とは?

頭を使い込んだ後は体を使うタッチラグビーへ。

5回タッチしたら攻守交代となり、さらにタッチの回数を減らして交代の数を多くするなど、短い時間で全員が試合に参加できるよう臨機応変に回していった。

2時間かけて行われた体験会は、今回も怪我なく全員が笑顔で終えることができた。参加者も第4回を終えてみて

「今回はすごく頭使いました」
「いい運動ができたと共に、考えてラグビーできました」

と、充実した表情で振り返ってくれた。

最後はタッチラグビー形式で体を動かした

岸岡は体験会のアップデートを重ねており、約1年間継続して感じた手応えを振り返った。

「ラグビーが上手くなるための根拠を追求できることが、この体験ならではの価値だと思っています。

今回は運動量は少なかったかもしれないですが、ちょっと”モヤモヤする”感じ。それが”もっとやりたい”とか楽しさに繋がるので、さらにラグビーにのめり込める環境をつくれたと感じています。

僕は、みなさんに観ているときの視点が変わればいいなと考えているんです。より玄人目線になれる、そういう体験会だと感じています」

そして、最後に訊いたのは現在開幕しているシーズンに向けて。まず梁本にシーズンに向けて取り組んでいること、そして自身について話してもらった。

「オフは体重も増やして戦える体づくりを行いながら、接点のスキルを上げてきました。チームは優勝、個人としては公式戦に1試合でも多く出れるようにすることが目標です」

スピアーズの勝利にそれぞれ貢献する想いを語った

そして岸岡。昨年は本職のSOに加えてSHでも出場し、出番を大きく増やした。

今シーズンに向けてはフラン・ルディケHCと話し合い、「SHで勝負すると話しました」と決断したことを明かした。

「去年の経験はとても大きかったです。今シーズンも自分が出せる味を出していきたいですし、チームとして勝つこと。自分のプレーが勝利に直結すると思うので、勝つことを貪欲に追い求めていきたい」

オレンジアーミーと共に2人がグラウンドで躍動するシーズンが幕を開けている。

(おわり)

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