小池純輝 Tomoshibi FC ―情熱の火を灯す7人制サッカーチーム―

 2025年、Tomoshibi FCという新しい7人制のサッカーチームが誕生した。このチームの発起人は、JFL所属のサッカークラブ・クリアソン新宿でプレーする、現役のサッカー選手の小池純輝氏である。

 自身が現役のサッカー選手である一方で、今回7人制のサッカーのチームの発起人となった理由は何だったのか。そして、Tomoshibi  FCが目指すものとは何なのか。小池純輝氏に新チームについて話を聞くことができた。

クリアソン新宿に所属する現役のサッカー選手である小池氏

7人制サッカーとは

Tomoshibi  FCとは、どのようなチームですか。また、このチームでの小池さんの役割というのは、どのようなものですか。

小池純輝氏(以下、敬称略)「2025年に立ち上げた、ソサイチと呼ばれる7人制のサッカーのチームです。全国各地で年間を通じてリーグ戦が行われています(試合数は地方によって異なる)が、Tomoshibi FCは関東リーグの4部で活動しています。私はこのチームの発起人として、主に運営サイドで活動しています。」

小池さんは現役の11人制のサッカー選手ですが、その一方で、今回7人制のサッカーに関わるようになったきっかけとは、どのようなものだったのでしょうか。

小池「理由は3つあります。1つは、7人制のサッカーであるソサイチを盛り上げることで、フットボールの裾野を広げ、普及につなげられると考えているからです。というのも、近年人口減や環境の変化により、11人制のサッカーチームを組めないというケースが増えています。サッカーをする子ども達も減って、1つのクラブでチームを組めず、近隣のクラブと合同チームを組んでやっと11人集まるかどうか、というクラブが今増えているとお聞きします。7人制サッカーなら11人制に比べチームが組みやすくなり、サッカーをするための新しい選択肢を増やせると考えています。

 2つ目は、私たちが挑戦していくことで、同じように夢や目標を持っている方々の挑戦の力になれると思っているためです。Tomoshibi  FCは日本のソサイチはもちろん、情熱を持ち挑戦したいと思う方々が集まっています。そのような方々の挑戦する姿を目の前に実際に見ていただくことで、少しでも夢を持つ人の後押しになれればいいなと考えています。

 3つ目は、私自身が個人として世界に再び挑戦していく姿を、お見せしたいと思ったからです。私は浦和レッズにいたころ、7人制の国際大会に2006年と2008年の2回出場したことがあり、2006年には優勝しました。その時に7人制のサッカーの面白さに気づき、もっと知りたいな、と思ってはいたのですが、その後はずっと11人制のサッカーをしていました。約20年後にこうした形でまた7人制サッカーに関わることができて、すごく嬉しいです。

 ちなみに2006年に優勝したとき、その時のMVPは浦和レッズの選手ではなく、決勝の相手のイングランドのクラブの選手だったんです。本当に上手だったので、当時はMVPをその選手がとるのも当然だと思っていました。その後、その選手はイングランド代表として活躍するようになりましたが、7人制で直接対決していたころからすごい選手であることはよくわかっていたので、あのような選手がイングランドのトップ選手になるんだなと非常に印象に残りましたね。」

7人制のサッカーと11人制のサッカーの違いとはどのようなところにありますか。また、どのような選手が7人制のサッカーに向いていると思いますか。

小池「7人制の方がボールに触るチャンスが多いということですね。また、7人制はゲーム自体は20分から25分ハーフで行われることが多いので、攻守の切り替えが本当に速いです。さらにオフサイドがないので、11人制とは違う戦術が必要だと感じています。

 7人制は選手交代も好きな時にできるので、チームによっては常にフレッシュな選手を出場させ強度の高いプレーを続ける戦術をとることもあります。そうなると、インターバルトレーニングをずっとやっているような感じになりますし、試合中にはボディコンタクトも増えます。

 特にドリブルを得意とする選手は、11人制よりも7人制の方がプレーを楽しめるかもしれませんね。」

7人制サッカーの強豪国はどこでしょうか。

小池「ブラジルです。7人制サッカーの発祥国ですし、約70年前からこの競技がプレーされていることもあり、強いチームが多いです。」

心に火を灯す存在に

Tomoshibi  FC のチーム名の由来はどのようなものですか。また、チームメイトには、どのような人がいますか。

小池「チームの名前は、人の心に火を灯す、「心に灯を。」をコンセプトに、誰かが情熱を持つための機会を作る存在になりたいという気持ちを込めて、Tomoshibi(灯)としました。

 チームメイトはさまざまなバックグラウンドを持った方々がいます。私のようにかつてJリーグでプレー経験のある方もいますし、ずっとフットサルでプレーをしている方もいます。現在はスポーツ関係の仕事をしている方もいますし、プロにならなかったけれどいろいろな形でサッカーを続けている方もいます。

 でも、このTomoshibi  FCで、挑戦していきたいという意思を持っている選手ばかりです。」

今年から活動を始めたチームとのことですので、いろいろ大変なこともあるのではないでしょうか。

 小池「Tomoshibi  FC自体が新しいチームであることもあり、まだ、公式試合をたくさん経験しているわけではないのが現状です。また、試合当日に初めて直接会う選手もいたりするので、試合の前は『初めまして』の挨拶からのスタートとすることもありました。

 もちろん、選手には前もってチームのコンセプトや思いなどを私から直接伝えてからチームに来てもらっているのですが、やはり当日現場で初めて会った直後というのは、お互いになんとなく硬い雰囲気になってしまいますよね。

 でも不思議なもので、そんな硬い雰囲気で始まっても、ウォーミングアップをして試合になると、選手同士の中でコミュニケーションがきちんと生まれてきます。『ボールをもうちょっと前で出してくれる?』のように、選手同士でプレーを作り上げるようになってきます。

 そのように、試合の中でその場にいるみんながチームになっていく姿を私は現地で毎回目にしています。その姿を見るたび、みんなと一緒にストーリーを作っているような気がしていますし、私もとても嬉しくなりますね。」

20年の時を経て、再び7人制サッカーへ

モチベーションは「喜んでもらうこと」

小池さんは、クリアソン新宿に所属する現役のサッカー選手である一方で、F-connectのような社会活動もされていて、そのうえ今回Tomoshibi  FCの運営にもかかわっておられます。お忙しい日々を過ごしていると思いますが、そのようにいろいろな活動をするための小池さんのモチベーションはどこから来るのでしょうか。

小池「サッカーが楽しいということが、最も大きなモチベーションとなっているのだと思います。また、自分が行動するときに『自分を応援してくれる人に喜んでもらいたい」という気持ちが基本にあるんです。それがサッカー選手としては『ゴールを決めたい』とか『試合に出たい』という思いになりますし、今回の7人制のサッカーに関しても、さまざまな思いがモチベーションになっています。」

もしもサッカー選手になっていなかったら、自分の人生はどうなっていたのだろうと想像されることはありますか?

小池「サッカー選手として20年近くやってきましたし、初めてサッカーボールを蹴った小学生のころから数えると、もう30年近くの年月が経っています。それだけ人生で長い間サッカーと一緒にいたので、今ではサッカーをやっていない自分を想像することは、本当に難しいですね。

 ただ、今回のTomoshibi  FCやF-connectのように自分でプロジェクトを考えて実行していくということは、私自身非常に好きなことなんです。だから、もしサッカーをしていなかったら、ビジネスの世界で頑張っていたかもしれません。」

小池さんにとって、夢を追うことの意味とはどのようなものですか。

小池「自分が未来にこうなっていきたい、という希望が表現される場所が夢という言葉なんだと思います。今自分は、サッカーを手段として、自分たちの活動の中で”好き” を増やすとか、夢を持っている人を増やすとか、そういうところを目指しています。お仕事されている方は、それぞれのお仕事を手段として、何らかの目的やゴールを達成したいと考えているのではないでしょうか。

 将来なりたい自分の姿を追い求めることが、夢を追うということの意味なのかもしれません。」

小池さんにとって、夢を追う過程は楽しいものですか。それとも、苦しいものですか。

小池「楽しさも苦しさも、両方ありますね。私自身は自分の好きを大切にして今まで生きてきましたが、その一方で好きには責任があるとも考えています。好きの裏側には努力とか継続性も同時に存在しているので、そうした裏側にあるものも追究していかなくては、好きなことも続けられないのではないでしょうか。

 だから、夢を追う過程は楽しいことばかりではないです。苦しさとか挫折といったことにも必ず出会います。でもそうした裏側の経験をすることで、表にある好きなことの意味も膨らんでいくのだろうと思います。」

好きには責任がある、と語る小池氏

 Tomoshibi  FCは、日本のソサイチはもちろん、世界の舞台で活躍するチームになることを目指して生まれたチームである。しかし、その夢への過程は決して簡単なものではないことは、発起人の小池氏が誰よりもよく認識している。

 その一方で、世界で戦う夢をかなえるには「好き」という気持ちが一番強力なモチベーションとなることを、よく知っているのも小池氏である。

 自分たちが夢を叶えることで、多くの人の夢に火を灯すために、Tomoshibi  FCの戦いは始まったばかりである。

(写真提供 小池純輝氏)

(インタビュー・文 對馬由佳理) 

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