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宮崎サンシャインズ・本村信吾監督・「独立リーガーでいられる時間は限られている」

独立リーグ・宮崎サンシャインズは体制を一新、チーム再建への道を歩み始めた。今季から指揮を執るのは NPB・ダイエー(現ソフトバンク)等でプレーした本村信吾監督。地元・宮崎へ野球人として最後の恩返しをするため、厳しさを持って根底からの立て直しを行なっている。

「野球どころ・宮崎」のプロ野球チームとして、グラウンド内外で誇りを持てるチームを目指す。

~周囲への裏切りに見える取り組み方をしている選手が多かった

サンシャインズは2023年に「九州アジアリーグ」へ参入、2年連続リーグ最下位(4チーム中)に沈んでいる。参入1年目は11勝、昨年は10勝(年間76試合)に終わるなど、低迷状態のチーム再建に取り組むのが本村監督。練習、試合を含めた野球への取り組み方から1つずつ変えようとしている。

「結果が出せていない状況が続いています。サンシャインズは新しいチームなので体制的に不十分な部分もあります。しかし、何よりも気になったのは選手の野球に対する取り組み方の甘さ。独立とはいえプロとは言えない姿勢なので、まずはそこから着手しています」

「悔しいと言いながらも、それに対しての向き合い方ができていないと感じました。『上手くなりたい、勝ちたい』と思うなら、それ相応の準備や練習が必要です。しかし、自主練習をする練習はゼロに近く、十分なウォーミングアップもしない状態で試合に挑む選手もいたくらいでした」

リーグへの新規参入というだけでも、他チームより後方からのスタートとなる。「差」を埋めるための尽力が絶対的に必要だが、そこへの意識が低過ぎたという。

「ベンチ裏に下がってスマホを見ていた選手がいたくらい。『どこがプロ野球選手なんだ?』と誰が見ても思うはずです。チームの勝敗はもちろん、支えてくれる人々や応援してくれるファンの方々への裏切りとも感じた。だからこそ厳しく接することにしました」

「選手だけでなく私を含め、コーチやスタッフも同様です。試合に勝つ、組織として強くなるためには、お互いがもっと高め合わないといけません。そのためには喧嘩とまでは言いませんが、言いたいことを言い合える環境が大事。そこに関しても少しずつ改革を始めています」

中日、広島、ダイエー(現ソフトバンク)でのプレー経験を持つ本村信吾監督。

~プロ野球選手として生き抜く術が必要

宮崎県小林市出身の本村監督は、都城高、社会人・熊本鉄道管理局を経て、1986年ドラフト6位で中日入団。89年に広島、90年途中からはダイエーでプレー、91年限りで現役引退した。右投右打の外野手としてNPB通算53試合出場、28打数5安打の成績を残している。

「身体は大きくなかったので(公称171cm 75kg)、生き抜くために何ができるかを常に考えました。守備の堅実性を高め、バントなどの小技を確実にこなすために反復練習を繰り返した。プロの厳しさを多少なりとも経験したので、選手たちに求めるものも高くなるのかもしれません」

現役引退後はクラブチーム・宮崎ゴールデンゴールズのコーチを8年間務める。2014年からは社会人・宮崎梅田学園コーチに就任、2018年の社会人日本選手権(京セラドーム)、2019年の都市対抗野球(東京ドーム)出場にも貢献した。2021年限りで現場から離れ、サンシャインズ立ち上げのトライアウトも手伝った。

「『チームが混迷しているので手伝ってくれないか』とGMから話をいただいた。現場から離れていたタイミングでもあったので決断しました」

前監督の金丸将也氏は広島の後輩にあたり気にかけてはいたが、チーム低迷もあり昨年6月20日で退任。サンシャインズとの縁もあって声がかかった形で、「(立て直しのためにも)早い方が良いだろう」と7月5日にヘッドコーチとして加わった。

「チームはかなり厳しい状態だったので、『変化を起こせるのか?』と思いました。しかし、宮崎梅田学園時代に弱小チームを全国まで行けるようにした経験があった。社会人チームが大学生に勝てない程でしたから。その時のことがあったので、『やってやろう』と考えました」

プロで生き残る術を見つけ出すためにも、個々の意識を高めることが重要。

~パワハラと言われることばかり気にしても仕方ない

7月のヘッドコーチ就任からシーズン終了までチーム状態を細部まで観察した。「チームが勝てない、選手が育たない」理由、そして改善点をいくつか見つけることができた。

「ウォーミングアップから練習まで、メニューを全て変えました。選手対してはかなり厳しく接しましたし、怒鳴りつけたこともあります。面白く感じなかった選手もいたと思います」

「周囲からは、『プロなんだからそこまでやらなくても…』という声があったのも事実です。でも、『選手全員が入れ替わるくらいでないと変化は起こらない』と覚悟もしていました」

今の時代は何かあればパワハラと言われてしまう。「そこばかり気にしていてもチームは変わらないので、間違っていないことに関しては厳しく言います」と断言する。

本村監督就任後はウォーミングアップから練習までのメニューが一新された。

「独立リーグはどのチームも毎年多くの選手が入れ替わります。だからこそ、『意識が高く、これは野球選手としてやっていけるかも…』と目をかけた選手には厳しく言いました。そういう選手は少しのきっかけで、練習態度も別人のように変わり成長します」

「NPBや他リーグへステップアップできれば良い。しかし現実は厳しく、年齢的にもチャンスは限られています。独立リーグは野球選手を諦めさせる場所でもあります。そこをしっかり理解して時間を無駄にしないで欲しいです」

「1-2年で結果を出してサンシャインズを去る覚悟がなければ、ユニホームを脱げ」と選手に対して言ったこともある。

「何年もここでプレーするのを面倒見られません。結婚して家庭を持つなど、選手個々の生活や人生もあります。独立リーグの給料だけでは無理だと思います。趣味の延長で遊びのように野球をやっている時間はない」

「『肩は消耗品なので球数を投げたくない』という投手もいました。そんな時間はあるのか、と聞きたい。今が勝負なのに、出し惜しみしてどうするのか。今、全てを出し切ってダメなら割り切れるはずだと思います」

「一瞬に全力を尽くし続けることで宮崎に何かを残せるチームになれる」と信じている。

「1試合1試合、全部を勝ちにいきます。勝ちにこだわることでチームも変わると思います」

「今季は何勝くらいを見据えていますか?」と聞かれることが多いが、答えは常に変わらない。先のことを考えている余裕はない。今、一瞬に全力を投じることで道が開けると信じている。

「生まれ育った宮崎の野球に、小さくても良いから何かを残せたら嬉しいです」と最後に付け加えてくれた。

長年に渡りプロ野球の春季キャンプが行われている「野球どころ」にできた宮崎サンシャインズ。道は平坦ではないが、野球人としての矜持だけは忘れずに進み続ける。

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・宮崎サンシャインズ、宮崎野球協議会)

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