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退部→マネージャー転向でセンバツ出場 ”未練”感じ踏み入れた「心から楽しめる」軟式野球の世界

高校時代に突如断たれた野球選手としての道。マネージャー転向を経て、大学で「軟式野球」と出会ってその道に舞い戻った。宮城教育大軟式野球部の小池涼太(3年、石橋)は日々、野球ができる喜びを噛みしめている。

溢れる感情、声と笑顔が光る宮城教育大・小池涼太

5月6日、東北地区大学軟式野球連盟春季リーグ戦の最終戦。東北工業大戦に「7番・二塁」でスタメン出場した小池は2安打を放って勝利に貢献した。第1打席の中前打は6試合、24打席ぶりの安打に。長いトンネルを抜け出し、飛び跳ねて喜びを爆発させた。

24打席ぶりの安打を喜ぶ小池

「打撃でも守備でもチームの足を引っ張っていたので、だいぶ苦しかったです。久々に一本出て気持ちが晴れたというか、肩の荷が降りて、嬉しくて感情が溢れてしまいました」

そう言って充実した表情を浮かべた小池。試合中は感情をむき出しにしてプレーしつつ、威勢の良い声を出してチームを盛り上げた。「自分は心から野球を楽しんでいます。楽しもうとしているわけではないので、自然と楽しめているのだと思います」。紆余曲折の末に今があるからこそ、グラウンド上で笑顔の花が咲く。

退部を経てたどり着いた甲子園「選手たちに感謝」

小池は栃木県那須烏山市出身。小学5年から野球を始め、小中は軟式野球をプレーしたのち、県内屈指の進学校である石橋高に進学した。

希望に満ち溢れた高校野球生活がスタートした矢先、1年の夏前頃から片頭痛や喘息を繰り返すようになる。午前中で学校を早退する日が続くほど状態が悪化し、野球どころではなくなってしまった。その後、監督に退部を申し出るのには時間を要さなかった。

「チームが甲子園を目指している中で練習に顔を出せない部員がいると、どうしても士気を下げてしまう。もともと高校まで野球をやってそこで終わりだと考えていたので、悔しい気持ちはありましたが、これ以上チームに不利益は出せないということで退部を決断した時は踏ん切りがついていました」

高校時代は酸いも甘いも噛み分けた

覚悟は決めたつもりだった。しかし、のちに主将になる同期に誘われ、1年冬にマネージャーとして野球部に復帰。石橋高初の男子マネージャーに就任すると、ノッカーや打撃投手、キャッチボールの相手など裏方のあらゆる業務を務め、時には選手にアドバイスを送った。

3年春には21世紀枠で選抜高校野球大会初出場を果たし、ノック補助員として甲子園の土を踏んだ。「もう高校野球には関われないと思っていた中でチームメイトが必要としてくれたことが本当に嬉しかった。自分は居場所を作ってもらって、甲子園に連れて行ってもらった立場なので、選手たちに感謝しかないです」。どん底から這い上がり、輝ける場所を見つけた3年間は、かけがえのない時間だった。

宮城教育大軟式野球部で思い出した試合に出る「喜び」

完全燃焼で終えた高校野球。とはいえ、未練は完全には消えていなかった。受験期に実技試験を控える部員とキャッチボールをすると、野球がやりたくてうずうずした。教員になる夢を叶えるべく進学した宮城教育大で軟式野球部の存在を知り、体調も回復傾向にあったことから、「学生のうちにできることはやろう」と入部を決めた。

ブランクを感じ、中学以来の軟式球に苦戦しながらも、練習に打ち込んで徐々に順応した。2年時から出場機会を増やし、今春は全試合にスタメン出場。小池は「本当に楽しくやれているというのが一番。試合に出て野球ができる喜びを思い出すことができました」と顔をほころばせる。

当初は苦戦した軟式球にも慣れてきた

さまざまなバックグラウンドを持つ選手が集まる宮城教育大軟式野球部の風土も肌に合っていた。「『楽しい』と『勝ちにいく』を共存させられるのがこのチームの魅力。畠山さん(畠山和也監督)も、無理なく野球を続けつつ勝つための指導をしてくださる。同期や先輩・後輩も良い人たちばかりですし、宮教の軟式野球部に巡り合えて本当に良かったです」。グラウンドで躍動する小池の姿を一目見れば、それが本音だとすぐに分かる。

マネージャーの経験も財産になっている。高校時代に培った視野の広さや自己犠牲の精神は、選手に戻った今も小池の強みであり、個性だ。現在もベクトルを自身のみに向けるのではなく、練習中に他の選手にアドバイスをしたり、試合中に作戦やポジショニングを発案したりしてチームを支えている。

磨いた強みと個性を生かし、大学でも全国の舞台へ

5月23日からは全日本大学軟式野球選抜大会出場を懸けた東北王座決定戦に臨む。昨年は東北福祉大が優勝、仙台大が準優勝と同リーグのライバル校が全国の舞台で結果を残しており、両校の背中を追う宮城教育大も躍進を期す。

試合中も笑顔が弾ける

「打てる、打てないよりも、声を出して、笑顔で雰囲気を盛り上げてチームを支えたいです」と小池。野球を始めて以来、磨いてきた強みと個性を生かして、甲子園以来の全国切符を今度は選手として掴みにいく。

(取材・文・写真 川浪康太郎)

読売新聞記者を経て2022年春からフリーに転身。東北のアマチュア野球を中心に取材している。福岡出身仙台在住。

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