アメフト・Club TRIAX「『LIFE・WORK・PLAY』を重視して、さらに“おもろい”存在へ」

アメフトXリーグ・X1AREA所属のClub TRIAX(以下TRIAX)は、チーム理念『LIFE(生活・家庭)、WORK(仕事)・PLAY(トライアックスでの活動)』を再度、胸に刻み込み戦いへ挑んでいる。
Xリーグのライセンス制度導入による“新リーグ編成”に伴い、「アメフトをプレーする意義」を問い直した。「原点に立ち戻ること」を再認識、2025年スローガン『COMMIT』の元、まずは所属カテゴリーでの“常勝”を目指す。

~Club TRIAXは新たなフェーズに突入する
TRIAXは2000年に創設、「アメフトを続けたい」との思いを共有した6チームが合流する形で現在に至っている。2017年にX2(当時)昇格、20-21年と2年連続でX2全勝。21年にはX1との入替戦に勝利、翌22年からX1AREAに加わり、X1SUPER昇格を目指していたが事態は大きく変化した。
8月4日、Xリーグから2026年からの“新リーグ編成”詳細が公式リリース。リーグ運営の安定化のため、運営費2億円以上、本拠地スタジアムの確保などが最高位リーグ『X Premier』参入条件とされた。これによってTRIAXの参入・昇格が当面は難しくなったのだ。
東京大から本格的にアメフトを始め、リーグ屈指の選手に成長した主将・馬渡健裕(マワタリタケヒロ)。現場に加え、クラブのテック関連まで任されるヘッドコーチ・落合展(オチアイヒロム)氏。40歳までプレーを続け、現在はGMとしてフィールド内外を司る信太隆(シダリュウ)氏。各部門リーダーといえる3人に、クラブの現在、そして未来へ向けた率直な気持ちを聞いた。

~フィールド内外の課題をクリアすることが個々の成長に繋がる(主将・馬渡健裕)
「文武両道ではなく、文武一道。『アメフトに仕事のアイディアが活かせないかな?』と思うこともある。そうやってプレーしているので、毎日が充実していて楽しいです」
馬渡主将は、WRとして2023年のX1AREA・リーディングレシーバーにもなったリーグ屈指の好選手。個人での結果を出すのと同時に、主将としての責任感にも満ち溢れている。
「イチ選手としては、昨年は手が届かなかったリディングレシーバーを取り返したい。上達するためのヒントを常に探しています。仕事中もアイディアが浮かんだりした時は、すぐにメモして、練習時に試しています」
「学生時代はずっと副主将。『主将をやりたい』という思いはありましたが、立候補することができず後悔の念もありました。だから、TRIAXで主将の話が来た時には2つ返事で受けました。そうやって任せてもらった役職なので、クラブのために全力を尽くします」
みんなに「このクラブで良かった」と感じてもらいたい。しかし現状での『X Premier』参入は厳しく、主将として困難な役割も担ってしまったことになる。
「TRIAXには資金面など、いろいろな課題があります。でも全てが揃っていたとしても、勝ち上がっていけるほどの実力が伴っていない。フィールド内外での課題を1つずつクリアするしかない。その間は、多くのことを学べる成長過程だと思います」
「『LIFE・WORK・PLAY』をやり切っているクラブということが伝われば、注目度や人気も高まるはず」と付け加える。先は長いが実直に歩み続ける思いが伝わってくる。

~『LIFE・WORK・PLAY』、やるべきことは変わらない(ヘッドコーチ・落合展氏)
「カテゴリーがどこだろうと、今までと一緒です。僕はミーティングでも仕事の話しかしません。アメフトに関する話も、全てを仕事に紐付けているほどですから」
落合ヘッドコーチは、『LIFE、WORK・PLAY』による相乗効果を何よりも重視する。
「ひとりの人間として『LIFE・WORK・PLAY』は全てがリンクしており、繋がっています。お互いに影響し合うことから避けられません。どれか1つのために何かを犠牲にしてしまったら、破綻する。だから何かの目的を達成しようとした場合、この3つ全部がお互いに良い作用を及ぼし合ってこそ、最高の結果が得られると信じています」
「『仕事にも言えることだけど…』ということをなるべく話すようにしています。アメフトに関わることを通じて、仕事にも気付きが生まれる。もしくはその逆の体験をしてもらいたい。各選手が少しずつそれを実感できれば、TRIAXのチーム力も自然と上がっていくはずです」
“新リーグ編成”によってフィールド外の条件が整わない限り、勝ち続けてもTRIAXは最高位リーグ参入できない。選手個々のモチベーションが下がることへの心配はないのだろうか。
「あまり関係無いと思っています。『LIFE・WORK・PLAY』を追求することで結果を出す、という活動に魅力を感じて今後もやっていきたいです。選手達は知りませんが、私は、リーグの決定は『そんなものだろう』と割り切っています。我々がやりたいことは変わらないです」
この日は、「ミッションに『COMMIT』するには、スムースな進行=即応性が大事。任せられる仕事を周囲に振るのは、ビジネスでもアメフトでも同じ」と語る姿があった。常に仕事を例に出すことで、選手達にもわかりやすくなる。

~チームが常勝化すればフィールド外にも動きが生まれるはず(GM・信太隆氏)
「所属リーグで全勝、入替戦を勝って、上のリーグに行くのがモチベーションだった。でもそこまでの成績を残せていない。だからこそ、まずは所属リーグでの“常勝”“敵なし”を目指します」
信太GMは、「“新リーグ編成”への動きはリアルタイムで把握していた」という。さまざまな葛藤を抱えつつ出した答えは、「強いクラブになる」ことだった。
「入替戦に入れる成績も出していなかったので、今回の“新リーグ編成”に関しても『今は何も言える資格はない』と。『常に入替戦に出られるレベルに達してから意見しよう』と心に決めました」
「近年は選手の入れ替えが早く、新しい選手もどんどん入ってくる。各選手が学生時代の同期や後輩を誘ってくれるからです。プレー環境を含め、選手の満足度が上がっており、学生時代の同期や後輩を誘ってくれるからです。『この1年が勝負』と緊張感も高まっており、フィールド内は良い循環になっています」
自然な形のリクルートができており、結果的に“名門大学”OBが揃うようになった。「考えて自発的に動き、効果的に結果に繋げる」ことを選手が好むのは、そういった部分にも理由があるかもしれない。
「フィールド外で言うと、スポンサーの確保は絶対条件。そこに関しても、クラブが常勝化していけば、少しずつ動きも出ると信じています。集客に関しても同様で、強くて魅力あるクラブであることが大事。まずは所属リーグで勝ち続けることを考えます」
「所属リーグでは、何度対戦しても同じ結果(=勝利)を出せる再現性を生み出したい」と続ける。そのためにも、「若い選手達が、週末はアメフトへ全力で取り組める環境作り」の準備に全力を注ぐ。
「コロナ禍でプレーできなかった経験をしている世代がクラブの中心。当時の悔しかった思いがあるから、社会人でもプレーを続けている選手も多いはず。そういう思いに応えてあげたい気持ちも持っています」
(6チームが合流する形となった)クラブの歴史を振り返っても、TRIAXは「アメフトを続けたい」という執念を持った人々によって支えられてきた。信太GMはその思いを受け継ぎ、これからも舵取りをしていく。

~Club TRIAXは“おもろい”クラブ
「今季スローガン『COMMIT』を大切にしたい。日常生活から『COMMIT』して、『LIFE・WORK・PLAY』の相乗効果で頑張ります。メンバーも増えて勢いあるクラブ。“おもろい”奴もたくさんいるので、そういう姿も見てもらい成長を一緒に分かち合いたいです」(主将・馬渡健裕)
「選手個人の個性や活気、熱量が表に見える媒体になりたい。観客の皆さんにも伝われば、何かを感じて楽しんでもらえるはず。集客等に関してもデジタルアプリ等を使って、色々と仕掛けていきます。『何か“おもろい”ことをやっているクラブだ』と感じてもらえるはずです」(ヘッドコーチ・落合展氏)
「多摩川の河川敷で練習していたようなクラブが、一歩ずつ前進して今の位置まで来ている。若い選手も増えて熱と勢いがある状態です。『アメフトを続けたい』という執念にも溢れている。今のままでは終わらないし、さらに“おもろい”クラブになります」(GM・信太隆氏)
3人からは図ったかのように、“おもろい”という共通単語が出てきた。それぞれの役割を遂行する中で、手応えを感じている証拠だろう。

今はまだ、『X Premier』という光は見えない状況だ。しかしいつの日か、少しずつでも近付ける日が来ることを感じさせる。
Club TRIAXは、我々にも“おもろい”ものをたくさん見せてくれそうなクラブ。今後、何をやってくれるのかに注目したい。
(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・Club TRIAX)