アメフト・SEKISUIチャレンジャーズ「アメフト、仕事、私生活には同等の価値がある」
SEKISUIチャレンジャーズ（以下チャレンジャーズ）が新たな試みに取り組み始めた。
スポーツ人材のキャリア支援サービスを行なう株式会社スポーツフィールドと共に、「アメフト選手のデュアルキャリア構築」に本腰を入れる。アメフト、仕事、私生活（家族を含めたプライベート）が同等に充実するための全面支援を行なう方針だ。
スポーツフィールド社キャリアサポート推進室長・吉浦剛史氏とチャレンジャーズGM・川口陽生氏は、同チームのプレー環境を革新的に進化させることを本気で考えている。
～アメフトも仕事も全力で挑まないとつまらない
チャレンジャーズが挑むのは競技としての「頂点」だけでなく、人生における「幸福感」。アメフトだけに生活の全てが占有されるのではなく、仕事や私生活も充実させて欲しいと願っている。
「普段は仕事に全力で取り組み、週末はアメフトで国内の頂点を目指す。両方に本気で向き合うことで、人生が豊かになるはずです」（川口氏）
「人生は自分自身で作り上げるものです。アメフトをしながらでも本気で取り組める仕事を選択できるようにサポートしたいと思います」（吉浦氏）
「アメフトをプレーすることが前提で就職先を選ぶ」のではなく、「フィールドを離れれば1人の社会人として仕事でも人生が充実する」ことを目指す。主に大学生選手の就職支援、チャレンジャーズ所属選手の転職支援やキャリア教育から始める。
～フィールド内外で多くの魅力があれば選手は集まる
「現在の日本アメフト界（Xリーグ）はパナソニックと富士通の2強時代。両チームはアメフトも社業の一環とされ、積極的なチーム強化を行って素晴らしい戦い方をしています。他チームの選手は何のためにアメフトをやるのか?』を考えてました」
川口氏は現在の日本アメフト界について考えてみた。いわゆる「セミプロ」とも言える2強に有力選手が集結、他チームが勝つのは不可能に近い状態。「フィールド外にも魅力を作れば有力選手が加入してくれるはず」という答えに辿り着いた。
「（2強は）アメフトチームとしては恵まれた環境です。しかし、有力選手の多くが集まるので、他チームならレギュラークラスの選手が2-3軍にも揃っている。『試合に出たい』という気持ちは選手全員が持っているはずですから」
「試合に出たい」思いを持った選手にチャレンジャーズを選んでもらえるようにする。そのための鍵は「デュアルキャリア」の充実にあると考える。
「デュアルキャリアとは、人生や生涯のひとつの軸をキャリアと捉え、そこにアスリートとしてのキャリアというもうひとつの軸を加えた二重性を示す概念」（日本スポーツ振興センター）と定義されている。
「仕事もできて、アメフトも強い。両立できる方が人生の豊かさに繋がるはずです。セミプロ的立場でプレーしている場合、転職すればアメフトを継続できなくなる場合も出てきます」
「クラブ形態のチャレンジャーズでは、何の業種であれ、自分が選んだ仕事をやりつつプレーできます。人間なのでやりたいこと（=仕事）には変化も生まれます。その時にも自由に職業を選びながらアメフトができるのが、デュアルキャリアの良さです」
～多種多様な選択肢から自分自身で進路を選んでほしい
「フルタイムでさまざまな仕事をしているチャレンジャーズの選手たちが、2強に勝ちにいくのはロマンがあると思いました」
吉浦氏はスポーツ界の今後を考えた場合、「プロ（セミプロ含む）以外の競技に関しては、デュアルキャリアの発展なくしては成り立たないのでは…」という危機感を抱いている。
「セミプロの選手たちが、現役引退後も同社で働き続けたいのなら最高です。しかし、別キャリアを考えているのなら、早い段階から多くの選択肢を提示したいと思っています」
「『セミプロでアメフトのみに没頭しないと競技で上を目指せない』となると、スポーツをする意義や価値も変わってきます。『アメフト、仕事、私生活を含めた人生の全てが充実することが大事』だと思うからです」
大学生アメフト選手のリクルート活動から取り掛かる。川口GMが新戦力として目を付けた選手を対象とした企業セミナーを2026年初春から行なう。また、現役選手たちの転職に関しても順次進めていく予定だ。
「『週末だけはアメフトに専念する大学生人材がいます』とお声かけしますが、理解・賛同する企業は多い。学生にとっても、選択肢が増えることに繋がります。自分で考えて選ぶことで、その後の人生はもっと良くなるはずです」
「『知名度は高くなくても超優良』という企業は多数あります。多種多様な選択肢を準備して、納得・満足して道を進める手助けができればと思います。今後はチームの現役選手たちの転職にも対応できるようにします」
～自分の人生はそれで良いのか？
「アメフトに真剣に取り組んでいる選手は、社会人として活躍できる可能性が高い」と両者は口を揃える。
「競技に必死に向き合う『根性』的部分だけでなく、綿密なプレーを理解・実行するための『学力（=学ぶ力）』にも長けている」からだ。
「チャレンジャーズには、さまざまな学歴を持った選手がいます。しかし、2強を倒すためには誰もが綿密・詳細なプレーコールを覚え込まないといけない。学ぶ意思、能力がないとついていけません」（川口氏）
「アメフトでは大学への推薦入学が、野球等と異なり圧倒的に少ない。一般受験を経て進学してプレーする選手が多いので、学力（=学ぶ力）を身につけている割合が高いと考えます。チャレンジャーズのリクルートに賛同する企業が多い理由です」（吉浦）
「学力（=学ぶ力）がある人間は、多くのことに対し自身が考えて自己決定をする」（吉浦氏）とも付け加えてくれた。
「選択肢が多いと迷うこともあるはずですが、その中で自分自身が考え決定することが重要。指導者や親ではなく自分が決める。フィールド上でもプレー時は自分で決めないといけない。選手としての成長度にも大きく関わることです」（吉浦氏）
「『自分の人生はそれで良いのか?』ということを考えて欲しい。生きて行けば、途中で転職したい時が出てくることもある。チャレンジャーズが新卒採用のみならず、転職支援も大事にしたいのはそのためです」（川口氏）
～チャレンジャーズには「やる」の一択しかない
新たな試みに挑むチャレンジャーズは、前アサヒ飲料クラブ時代の2001、02年に社会人連覇を果たし、01年はライスボウルで学生を破って日本一にもなった「名門」。復活によって、注目度が下がり続ける日本アメフト界に一石を投じることにもなるはずだ。
「時間はかかるでしょうが、リクルートやキャリア支援で日本アメフト界を変えることができると信じています。『できる、できない』ではなく、『やる』の一択しかありません」（吉浦氏）
「アメフトに関わる人全員に、この素晴らしい競技を人生の糧や生き甲斐にして欲しい。今のままでは一部の人しかそういう思いを抱けない状況だと思います。チャレンジャーズが先頭を切って変化を生み出していきたいです」（川口氏）
昨年9月16 日、チャレンジャーズは2強の一角であるパナソニックに「13-14」という接戦を演じてみせた。リーグ序盤の対戦であり多くの要素が絡んだ結果だったとはいえ、大きな期待を抱かせたのは間違いない。
「負けはしましたが、『本気の姿勢を継続すればやれる』と手応えを得た。スポーツフィールドさんのお力をお借りして、フィールド内外の魅力を上げ、戦力も高め、最終的に勝ち抜きたいと思います」（川口氏）
チームの勝利、仕事、私生活（家族を含めたプライベート）の全てが充実することで、アメフト界の明るい未来も近づくはず。チャレンジャーズは1人でも多くの人と幸せを共有しながら歩み続ける。
（取材／文／写真・山岡則夫、取材協力・SEKISUIチャレンジャーズ、株式会社スポーツフィールド）
