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東京ヴェルディフラッグフットボールチーム「チーム日本一と五輪メダリスト輩出の先に黄金時代がくる」

東京ヴェルディフラッグフットボールチームが目指すのは、チーム日本一と五輪メダリストの輩出だ。2028年 ロサンゼルス五輪(以下LA五輪)を見据えて立ち上がったチームは、試行錯誤を続けながらも来るべき日々に向けて戦い続けている。

フラッグフットボールは個人技の攻防が多く見られる魅力ある競技だ。

東京ヴェルディといえばサッカーのイメージが強い。同チームはJリーグ創設前の読売クラブ時代から日本サッカーを牽引してきたパイオニアだ。現在はサッカー以外にも、野球や3×3バスケットボールなど他競技展開も進めており、フラッグフットボール(以下フラッグ)もその1つである。

「『フラッグ女子は五輪で上位進出可能性がある』ということもあり、話がまとまりました」と同チーム代表取締役・山邉亮太氏が経緯について語ってくれた。

「LA五輪の追加競技にフラッグが入ったタイミングで男子チームを作ろうと思いました。Xリーグ選手等を集めて本気で勝ちに行くチームです。縁があって東京ヴェルディの上層部に話したところ、五輪競技に価値を感じていただきチーム結成となりました」

「時を同じくして、フラッグ女子の第一人者と言える近江佑璃夏が代表であるブルーローゼスの話を聞きました。本気で世界を目指す中で、プレー環境面で苦しんでいた。『ヴェルディフラッグの女子チームとして受け入れよう』となりました」

近江はフルタイムの会社員として働きながらブルーローゼスを立ち上げ。フラッグ女子の底上げに邁進してきた。日本代表の一員としても活躍、昨年8月の世界選手権(フィンランド)では3位に入る原動力にもなった。

「『世界で結果を出したいので、もう少し大きい母体でやりたい』ということでした。当初は男子のみで考えていましたが、世界選手権の結果を考えると女子の可能性は非常に大きい。みんなのベクトルが同じ方向を向いているので、『やりましょう』となりました」

「国内、世界の両方で結果を出したい」とチーム代表取締役・山邉亮太氏は語る。

~米国対策として男子チームとの紅白戦を組む(六川永一コーチ)

通常のアメリカンフットボール(以下アメフト)とフラッグは異なる部分もある。ヴェルディフラッグ・女子の六川永一コーチは両競技の違いと共に、日本女子が世界で勝てる秘策を教えてくれる。

「アメフトは防具をつけて攻守ではぶつかり合いで展開する。フラッグは相手選手を避けながらプレーするので個人技も多く見られます。選手同士のコンタクトがないので、老若男女で幅広くできるのが魅力です」

フラッグは1チーム5人で対戦、試合時間は前後半20分ずつで行なわれる(アメフトは1チーム11人、各15分の4クォーター制)。タックルではなく腰につけたフラッグを取って相手の攻撃を止める。フィールドサイズは小さいがタッチダウンを目指す部分は同じだ。

「アメフト経験者は同じ感覚でやっているはず。フィールドサイズや人数は違いますが、展開は同じでぶつかり合いがないだけです。一番難しいのは距離感で、フラッグでは半歩遠くないとぶつかってしまう。また、直前でスローダウンしないとタックルしてしまう」

男子チームとの紅白戦では、「攻撃はトリッキー、守備は固く」を意識することもある。

東京ヴェルディフラッグでは男女両チームの練習時間が同じため、タイミングを見て両チームで紅白戦を行なうこともある。

「男子は身体が大きくフィジカルも強くて速いので、普通に戦ったら勝負にならない。攻撃では複雑なサインプレーを入れて混乱させる。守備はマンツーマンを含め自分の役割を徹底する。攻撃はトリッキー、守備は固くを意識して戦うようにします」

敢えて男子との試合を組むのは世界を意識してのことであり、ランキング1位の米国対策でもある。

「米国は身体が大きくスピードもあるので、男子とやることで予行練習になる。五輪で金メダルを奪るためには倒さないといけない相手。そして、米国に勝てば話題になるし日本のフラッグが一気に有名になるはずです」

「米国を倒すことで結果と話題の両方が付いてくる」と六川永一コーチは強調する。

~大きな選手対して緻密さや丁寧さで勝るのが楽しい(主将・八木智代)

ヴェルディフラッグ・女子の主将を務める八木智代からは、「フラッグが好きだからもっと上手くなりたい」と前向きな言葉のみが聞かれる。

「父は大学、社会人とアメフト選手でした。3歳上の兄もフラッグをやっていたので、私も自然とプレーするようになりました。小学校卒業時に1度離れたのですが、高校2年で再開してからは楽しくて仕方ない。少しでも上手くなることしか頭にありません」

「男子とプレーすると高さやスピードの違いを感じることが多い。緻密さや丁寧さで対応できると、『最高に面白い』と感じます。国際試合でも同様で、身体の大きい他国選手にも方法次第では勝てるはずです」

日本代表として参加した世界選手権において、「開拓できる部分がある」と大きな希望を持ち帰った。

「世界1位の米国、同2位のメキシコにも『届かなくない』と感じた。今のままでは難しいかもしれないですが、日本の良さを突き詰めれば勝てる可能性はある。フィジカルの底上げに加え、戦術が加われば、強くなれるし結果にも繋がるはず」

「米国やメキシコには私と同じ大学生も多かった。育った環境は違いますが、私たちにもできないことはない。世界選手権時点での差は感じましたが、そこを少しでも埋めて、追い越すためのキーパーソンになりたいです」

「五輪が具体的な目標になっていてモチベーションは本当に高いです」と目を輝かせる。

「米国にできることは私たちにもできる」と主将・八木智代は前だけを見据える。

~LA五輪のワンチャンスを掴むことが重要(代表取締役・山邉亮太氏)

日本一とLA五輪という具体的な目標を掲げながらも、「日本におけるフラッグ、そしてアメフトへの何らかの貢献ができれば…」と山邉氏は今後についても語ってくれる。

「2028年までは五輪特需があり周囲からのサポートや注目も集まるはず。しかし、その後はフラッグが五輪競技になるのかも未定です。だからこそ、このワンチャンスを掴めるかどうかだと思います」

トップチーム強化と共に、五輪以降はジュニア世代のボトムアップを充実させる必要性も感じている

「フラッグは老若男女の誰でもできるスポーツ。アメフト要素に加え、作戦を遂行することで勝負ができる競技です。運動が得意でない子供でも輝かせられる要素があり、教育的観念にも優れていると思います」

トップチームの選手にはさらに上達してもらうため、可能な限りのサポートを行なう構えだ。

「近江はチーム所属のまま米国へ武者修行に出ています。ヴェルディフラッグとして現地への渡航費負担と練習環境のコーディネイトも行ないました。今年から立ち上がる米国プロリーグ選手を輩出できればと思います」

「ヴェルディフラッグ・女子としての目標は日本一。そしてLA五輪にはなるべく多くの日本代表、具体的には5人以上を出すのが当面のミッションです」

東京ヴェルディフラッグフットボールチームの動向が、フラッグのみならず日本アメフト界の起爆剤になる可能性を持っている。

「フラッグはLA五輪次第で人気に火がつく可能性は高い」とアメフト大好き芸人・オードリーも語っている。今でこそ注目度は高くないが、競技人口も着実に増えつつあり可能性ある競技なのは間違いない。

「フラッグが盛り上がりユース年代選手が増えれば、将来的にアメフトをプレーする選択肢も出てくる。フラッグとアメフトの両方において、米国プロで活躍する選手が出てくれれば本当に嬉しい」(山邉氏)

日本ではアメフト(フラッグ)はマイナー競技扱いと言って良い。しかし、エンタメ大国・米国で絶大な人気を誇る同競技がつまらないはずはない。

「プレーする」「観戦する」の両方で盛り上がる鍵は、LA五輪までの数年にかかっている。ヴェルディフラッグ・女子の果たす役割は想像以上に大きくなりそうだ。

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・東京ヴェルディフラッグフットボールチーム)

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