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「“Stay in the moment”を大切に」クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 押川敦治 経験と成長に彩られた飛躍のシーズン

6月1日に国立競技場で行われた2024ー25シーズンのリーグワン決勝。

東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)とクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)との試合は、トップリーグ時代も含め史上最多となる56,486人を集めた。

S東京ベイの15番として躍動していたのが押川敦治。

昨シーズン公式戦での出場試合がなかった男は、日本最高峰の舞台でまばゆいスポットライトと大きな歓声を背にピッチに立っていた。

(写真 / 文:白石怜平)

昨シーズン出場なしも、今シーズンは後半からレギュラーの座に

押川は帝京大から22年にS東京ベイへ入団し、3シーズン目を終えた。1年目の2022-23シーズンに6試合出場したが、昨シーズンは公式戦出場はなかった。

しかし、今シーズン大きな飛躍を遂げることとなる。

2月1日の第6節・三菱重工相模原ダイナボアーズ戦(ギオンス)でSOで先発し、1年9カ月ぶりとなる公式戦出場を果たした。出場機会を勝ち取ることになったターニングポイントがその前にあった。

「1月に行ったリコー(ブラックラムズ東京)との練習試合です。10番として出たんですけど、しっかりとゲームプランを遂行できました。

その時のチームの課題としてキッキングゲームが挙げられていたのですが、あの試合でしっかり優位に立てたことであったり、全体的にゲームのコントロールもアピールできました。そういった点が評価されたのかなと思います」

持ち味であるキックで出場機会を掴んでいった

第6節で勝利に貢献すると、試合後の会見でフラン・ルディケHCは

「役割をしっかり遂行してくれました。そして勝ちにも貢献してくれました。特に試合のところで言うと、コントロール。

特にキックのところでいいコントロールをしてくれたので、アタックも彼を絡めていい成功率でした。彼は能力があるのでエキサイティングな気持ちです」

と高く評価。そして、3月14日の第11節・浦安D-Rocks戦(秩父宮)ではFBへと抜擢された。

本職はSOで、FBは高校2年(京都成章高)の花園で務めて以来約9年ぶりという押川。80分間フル出場しここでも勝利に貢献するなど、その役割を果たした。

以降はFBとして15番を背負い、シーズン最後まで戦い抜いた。4月26日の第16節・三重ホンダヒート戦後には自身の変化をこのように語っている。

「今は80分の中でどう戦うかを考えるようになりました。前半リードされていても、では後半をどのように試合を運ぶかなど、80分トータルで戦っていくことを考えて臨んでいます。

出始めた頃は必死でしたし、練習の中でもスピードを出しすぎて体に負担をかけすぎてしまっていました。

なのでS&Cコーチと相談しながら、試合にピークへと持っていくために逆算して、練習から体をコントロールしていくよう取り組んでいます。そこがいい学び・経験となっていますね」

FBとして80分フル出場を続けた(4月26日:三重H戦にて)

リーグNo.1のディフェンス力の原動力にも

今シーズン、S東京ベイの強みの一つはディフェンスであった。チーム別の総失点数は361とリーグ最小で唯一の300点台。次に少ない首位の埼玉パナソニックワイルドナイツとは70点以上の差があった。

このリーグNo.1のディフェンス陣にすぐフィットできている点については、自身で以下のように分析している。

「理想は自分が1試合通じてタックル0で終わることです。自分は一番後ろから見て、前で戦っている選手のディフェンス力・ハードワークというのを心強く感じています。

自分の役割としては後ろから声をかけるといったコミュニケーションを大切にしています。特にWTBの選手とコネクションしていいディフェンスをし続けることを意識していました。

ターンオーバーに持っていくことが役目だと思いますし、その場面を多くつくれていたのでポジティブに考えています」

相手のボールから自軍の攻撃へと幾度となく転換させた

精神面そして技術面で得られた成長とは?

2024ー25シーズンはレギュラーシーズンとプレーオフトーナメントで計14試合出場を果たした。激闘を重ねた中で成長した点を明かしてくれた。

「特に今年はメンタル面がすごく成長したと感じています。私は“Stay in the moment”と言うフレーズを今シーズン大事にしてきました。

一瞬一瞬の結果だけでなく、1試合1試合に集中するという意味なのですが、そのためにチームにとって必要なプレーであったり、自分ができることを試合の中でどれだけ表現できるかを常に考えていました。

そのマインドセットが、自分の中でもすごくいい影響を与えてくれたと感じています」

メンタル面も成長し、そして強みを発揮したシーズンとなった

1試合の積み重ねがさらに押川を成長させ、大舞台でもその力は存分に発揮されていた。技術面における成長についても以下のように続けた。

「自分はキックを使ったプレーで、アタッキングキック=攻撃的なキックを強みとしています。試合で相手に強いプレッシャーをかけながら、得点につなげることもできましたので、その点が大舞台でも通用したと感じています。

ラグビーはどこでプレーをするのか、エリアマネジメントもとても重要なポイントだと考えています。

キックではエリアを確保するキックもあれば、トライに導くキックもある。その使い分けを判断できるところが自分の強みとしてあるので、それがゲームコントロールにも繋がっていきました」

S東京ベイは決勝で敗れたものの、準優勝でシーズンを終えた。その原動力の一人として経験と成長も手にした押川は、来シーズンさらなる躍進を目指す。

(おわり)

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