さらなる進化を続けるジャパンウィンターリーグ2025、11月23日開幕

広尾晃のBaseball Diversity

このコラムでも再々にわたって紹介しているが、ジャパンウィンターリーグは毎年11月末から12月にかけて、沖縄県で行われる。

「陽の目を見ない場所に光を」をコンセプトに、プロ野球を目指す選手の挑戦の場となるトライアウトや、プロ・社会人野球選手のスキルアップの場を提供する国内初の本格的なウィンターリーグだ。

そもそもウィンターリーグとは、プロ野球、アマチュア野球のオフシーズンに温暖な地域で行われるリーグ戦のこと。アメリカでは各地でウィンターリーグが行われている。

目的は2つ。

1.試合出場機会を確保することで選手個々の能力アップを目指す

2.新たなチームへの移籍、入団を目指す選手にアピールの機会を与える

1は「教育リーグ」2は「トライアウトリーグ」ということができる。

ジャパンウィンターリーグは2022年にスタートしたが、23年からはこの2つの目的をともに担っている。

2024年の試合風景

りゅうぎん総合研究所の評価

株式会社りゅうぎん総合研究所は10月22日「沖縄県内におけるジャパンウィンターリーグ開催による経済効果」というプレスリリースを発信した。

過去3回行われた、ジャパンウィンターリーグについて、りゅうぎん総合研究所は以下のように評価している。

2022年の閉幕式

① ジャパンウィンターリーグ(第1回大会)

2022 年に初めて開催されたジャパンウィンターリーグは、トライアウトリーグのみで実施され、 海外選手7名を含む66 名の選手が参加した。試合中の選手の投球や打球データを数値化し、そのトラッキングデータをYouTube にて試合中継と併せて配信する国内初の取組みを行い、リモートでもスカウティングが可能な新たな仕組みが話題となった。その仕組みが奏功し、国内のプロ野球、独立リーグ、社会人野球、MLBなどから31球団ものスカウトが参加した。その結果36名の選手がスカウトされ、うち10名が契約を獲得した。開催期間中には始球式や野球教室などのイベ ントも行われ、観客は延べ約1,000人となった。

2023年選手のデータ計測

② ジャパンウィンターリーグ2023

第2回大会では、アドバンスリーグが新設され、参加者は前年より35名増の101名に拡大し、そのうち海外選手は31名と全体の約3割を占めた。トライアウトリーグには日本、韓国、アメリカ、イギリスなど世界各国から50名の選手が参加した。また、独立行政法人国際協力機構(JICA)と提携、“「世界の野球選手に光を」プロジェクト”を実施し、アルゼンチン U-23 代表選手の招聘も実現した。

アドバンスリーグには、国内独立リーグや実業団などから派遣された50名の選手が参加し、計32試合が行われた。スカウトは国内外から31球団が参加し、契約を獲得した選手は27名と前回の2倍以上となった。また、コーディネーターとして参加していたスタッフが打撃コ ーチとしてスカウトされ契約するなど、選手のみならずコーチ陣の新たなキャリアを得る機会ともなった。

2024年開幕式

③ ジャパンウィンターリーグ2024

第3回となるジャパンウィンターリーグ2024の大会期間中の延べ観客数は3,005人となり、初回 の約3倍となった。最大の特徴は、NPB球団から初めて選手派遣が行われたことである。埼玉西武ライオンズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、横浜DeNAベイスターズから選手が参加し、NPB各球団との連携が強まった。

さらに台湾プロ野球リーグや韓国プロ野球リーグからも実力ある選手が加わり、国際的な競技水準が大きく高まった。また、2023 年に海外選手8名が契約を獲得した実績を背景に、2024年は海外からの参加選手数が79名と前年の約2.5倍に拡大し、ジャパンウィンターリ ーグが世界に向けた「日本野球界への窓口」として認知されつつあることが示された。


2023年レベルアッププログラム

ジャパンウィンターリーグは、スポーツイベントとしてだけではなく、メディア戦略の面でも先進的だ。

2024年の第3回からは、スポーツ専門の動画配信サービス「DAZN」と提携し全試合のLIVE中継および見逃し配信が行われ、YouTubeも含むオンラインでの視聴回数は計55,242 回に達した。

同研究所は、沖縄の球場で繰り広げられる熱戦が、現地の観客にとどまらず、全国さらには海外の野球ファンへと届けられた。現地に足を運べないファンにとって観戦機会 が広がったことはもちろん、選手たちの挑戦の姿を幅広い層に発信できた意義は大きく、リーグの存在感を一段と高める契機となった。と評した。

またジャパンウィンターリーグは、沖縄県の「令和5年度スポーツツーリズム戦略推進事業」においてモデル事業に選定されるなど「スポーツアイランド沖縄」の形成に向け、今後さらなる発展が期待される。と評価している。

2023年閉幕式

りゅうぎん総合研究所が算出したジャパンウィンターリーグ2024の経済効果は、ホテルなどの「宿泊業」が1億6,100万円「飲食サービス業(飲食店など)」が8,700万円、「対 事業所サービス業」5,100万円、「対個人サービス業」4,700万円など、5億8300万円となった。

25年から始まったジャパンサマーリーグ

また同研究所は今年8月に、ジャパンウィンターリーグの主催者である沖縄県で実施した「ジャパンサマーリーグ」について、

①1週間の連続した実践環境の提供

②日本トップ クラスのコーチとデータを活用した指導によるスキルアップの仕組み

③同学年の選手だけでなく、スタッフやゲストコーチといった様々な人との出会い

④キャリアプログラムを通じた将来を考える時間を提供

とし、参加した選手たちにとって、仲間と共に成長を実感しながら野球に向 き合う貴重な機会となり、沖縄にとっても「野球」をコンテンツとした新たな観光誘致の可能性を 秘めたイベントとなった、と評価した。

25年ジャパンサマーリーグのオリエンテーション

2025年はさらなる新展開も

2025年の第4回ジャパンウィンターリーグは2025年11月23日から12月18日までの期間、コザしんきんスタジアムおよび嘉手納町野球場にて開催される。

今回は、トライアウトリーグ、アドバンスリーグともに定員を80名とし、全53試合を実施予定。

今回は、NPBからは東北楽天ゴールデンイーグルス、千葉ロッテマリーンズ、読売ジャイアンツ、東京ヤクルトスワローズが選手を派遣すると発表。

11月23日の開幕戦ではオープニングセレモニーやファミリー向けの観戦企画が予定されるほか、各リーグでホームランダービーやエキシビションマッチ、少年野球教室を行うなど、計3回 のイベント開催が計画されている。

昨年に引き続きDAZNが全試合無料配信する。さらに今年はDAZN初のリアリティ番組となる「THE ANNOUNCER~スポーツ実況者オーディション~」で選ばれた実況者が、ジャパンウィンターリーグを「オーディションの舞台」として実況中継に挑戦する。

従来からジャパンウィンターリーグは、選手だけでなく指導者、トレーナー、データアナリスト、実戦経験を積むとともに、アピールをする機会になっていたが、今年からはスポーツ実況者が加わる。

ジャパンウィンターリーグを運営する株式会社ジャパンリーグの鷲崎一誠代表は、

「今後、ジャパンウィンターリーグを、MLBの『ウィンターミーティング』のような、野球界の関係者が交流し、さまざまなビジネスチャンスを生み出す交流の場にしたい」と話した。

「選手のレベルアップの場」から、新たなビジネス創出の場へ、ジャパンウィンターリーグは進化を続けている。

2022年の熱戦 

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