全国の舞台で育つ、次世代のサッカー少年少女
「第1回 ONE FUTURE CUP」 開催へ
2026年1月4日から6日までの3日間、静岡県を舞台に新たな少年少女サッカー全国大会、『SHIZUOKA 2025 ONE FUTURE CUP SUPPORTED BY TKG 東海関東グループ』が開催される。エコパスタジアムを中心に、つま恋や浜岡総合運動場など複数の会場で、全国から集う小・中学生が熱戦を繰り広げる予定だ。
勝敗を超えて“挑戦する喜び”や“努力する楽しさ”を体感し、サッカーを通して人生を豊かにして欲しい——。大会には、育成年代の競技環境をより良いものにしようとする関係者たちの思いが込められている。
本大会を企画・運営するONE FUTURE CUP代表の松井昌範氏に話を聞いた。

U-12とU-13、それぞれの「節目」を象徴する大会
大会に参加するのは各地の予選を勝ち抜いた地域代表チームだ。U-12(小学6年生以下)とU-13(中学1年生以下)の男女それぞれ24チーム、さらにU-12女子は静岡県内外の招待チーム6〜8チームを予定している。
U-12とU-13ではわずか1歳しか年齢が変わらない。なぜ別の部門に分けるのかと不思議に感じる人もいるだろう。しかし、若年層のサッカー選手を育成する意味では、この1歳の違いは大きい。
U-12(小学6年生)は、8人制サッカーでプレーする最後の学年である。フィールドサイズは一般ピッチの半分。使用するボールも小さいサイズだ。試合時間は15分ハーフで行われる。
一方、U-13(中学1年生)は11人制サッカーへと移行したばかりの年代であり、“大人のサッカー”に順応する過程にある。試合時間も25分ハーフと長くなる。
U-12とU-13とは、いわば少年少女サッカーの“節目”にあたる年代なのである。
「小学6年生にとっては、8人制でプレーする最後の大会として、今まで積み上げてきたものを出せる舞台を作ってあげられたらいいなという思いがあります。中学1年生は大人のサッカーに近づく1年目の最後ということで、他地域の子どもたちと交流しながら、いろんな刺激や出会いがある場を作れたらいいなと思っています」(松井氏)
この年代は、身体的な成長差や戦術理解の幅も大きい。大会はそうした過渡期の選手たちに実戦経験と自己成長の機会を与える舞台となるはずだ。
すべての選手になるべくたくさんの出場機会を

大会は3日間という短期間で行われるが、参加する選手たちには可能な限り多くの出場機会が与えられるように考えられている。
まず、24チームが3チームごとの8ブロック(例:A,B,C,D,E,F,G,H)に分けられ、初日にブロック内で総当たり戦が行われる。つまり各チームは1日に2試合だ。
2日目にはブロック順位別(例:ABCDブロック1位リーグとEFGHブロック1位リーグ)の4チームリーグ戦が行われる。これも総当たりなので、各チームは1日に3試合である。
最終日は順位決定戦である。それぞれのリーグの同順位同士が対戦する。
高校野球の甲子園大会などで採用されている勝ち抜き式トーナメントとは異なり、勝っても負けても全チームが最終日まで試合に出場できる大会設計となっている。
それでもチーム内でレギュラー組と補欠組で出場機会に差が生じることはあるが、運営側はその点にも配慮している。
「チームの方針によりますけど、勝敗にこだわった試合になると、全員が出場できるかどうかはチームによって事情が違ってきます。ですから、サブ戦といわれる交流戦を2日目に可能な限り組み込むつもりです。大会のほうに出場する時間が短い選手でもプレーの経験ができるように配慮して、大会のスケジュールを組んでいます」(松井氏)
部活動とクラブチーム、異なる育成環境の交差点
日本の少年少女サッカーは、大きく「部活動(中体連)」と「クラブチーム」という二つの形態に分かれる。この大会に参加するのは後者のクラブチームだ。
部活動は学校の課外活動として行われるため、費用負担が比較的少なく、地域や学校コミュニティとのつながりが強い。しかし、顧問の教員が必ずしもサッカー経験者とは限らないうえ、過剰労働の弊害も懸念されている。
一方のクラブチームは、地域のサッカークラブが運営し、月会費制を採用することが多い。指導者にはJリーグ下部組織出身者など専門的な経験を持つ人材が多く、より体系的なトレーニング環境が整っている。ただし、初期費用や遠征費などの経済的負担が大きく、地域によっては格差が生じているのも現実だ。
「クラブチームの費用は地域やチームによって大きく異なります。例えば関東でグランドを一日借りようとしたら何万円ってかかるところが、地方ではグランド代が無料だというところもあるので」(松井氏)
全国的にも部活動の地域移行という変化が起きている。サッカーに関しても、現在は変革期であると言えるだろう。すでに部活動よりクラブチームが選ばれている地域もあれば、いくつかの学校が合同で一つのコミュニティを作ってサッカーをするという地域も増えてきている。
大会は、多様な背景を持つチームが一堂に会する舞台である。異なる地域のクラブチームが交わり、異なる価値観・育成方針のもとで育てられた選手たちがピッチ上で交流することの意義は大きい。
全国大会運営の課題と対応

全国から多数のチームが集まり、多数の試合を行う。言うまでもないことだが、大会運営には多くの課題が伴う。
審判の確保はそのひとつだ。今大会では全試合をボランティア審判で行うことは難しいと判断し、各参加チームが審判を分担する方式を採用することが予定されている。各チームが審判を他の試合に派遣するやり方だ。順位決勝戦などの重要な試合にはプロ審判を配置する。運営の公平性と費用とのバランスを考慮した方針と言えるだろう。
会場選定にもこだわりが感じられる。各地の予選大会を勝ち抜いてきた子どもたちが胸を躍らせるだろう舞台である。
「開会式は『エコパスタジアム』(静岡県)で開催させていただくことが先日決まりました。ワールドカップでイングランドやブラジルの代表チームがプレーした場所です。最高順位の決定戦は『ゆめりあ』(静岡県)という試合会場で開催しますが、ここも高校年代のプレミアリーグとか日本代表チームが合宿のキャンプを張ったような素晴らしい場所なので、子どもたちには特別な体験を提供できるのではないかと思います」(松井氏)
主催団体One Future Co.の活動と理念
大会を主催する一般社団法人One Future Co.は、少年少女サッカーの大会運営にとどまらず、育成年代への教育・支援活動を継続的に行っている団体である。
中学生を対象としたオンラインセミナーを7年間継続しており、全国各地の高校年代指導者を講師として招き、サッカーの戦術理解だけでなく「パーソナリティ育成」や「リーダーシップ」など、人間的成長を重視した内容を提供している。
大会においても今後はU-14カテゴリーへの拡張も検討されている。高校に近い学年の選手を対象にすることで、ジュニア世代から高校サッカーへの橋渡しという側面もより大きくなる可能性がある。
One Future Co.の活動には一貫したテーマがある。それは「サッカーを通じて未来を創る」という理念である。技術の習得だけでなく、選手一人ひとりが“自分の未来を描く力”を育むこと。その理念が、今回の全国大会開催にも直結している。
(取材/文・角谷剛、取材/写真/協力・One Future Co.)
