• HOME
  • コラム
  • 野球
  • ゲームコーディネーターが振り返る第3回ジャパンウィンターリーグ(JWL)

ゲームコーディネーターが振り返る第3回ジャパンウィンターリーグ(JWL)

広尾晃のBASEBALL DIVERSITY

12月19日、このコラムでも紹介した第3回ジャパンウィンターリーグ(JWL)が閉幕した。沖縄の温暖な気候の中、国内、海外のプロ、アマの選手が集まり、4週間にわたってリーグ戦を繰り広げた。

試合の模様は、投打のデータをつけて動画で配信される。今年はDAZNが全試合を無料で放送した。

選手もレベルアップした。今回はNPBからDeNA、楽天、西武が選手を派遣、中国もU23の選手がチーム単位で参加するなど、規模もレベルも格段に上がった。野球のレベルでアドバンスリーグ、トライアウトリーグの2リーグ、6チームに分かれてリーグ戦を展開した。

JWL終盤の熱戦

このJWLで1年目からゲームコーディネーター(監督、コーチに相当)として選手を指導し、試合を運営してきた坂梨広幸氏に話を聞いた。坂梨氏は野球オーストリア監督でもあり、世界の野球に精通している。

坂梨氏

選手も増えプレーレベルも上がった

「1年目は僕もよくわからないうちに始めて、あっという間に終わった感じでしたが、3年目の今年は、選手が海外から応募してくる段階から対応したので、状況がよくわかりました。

今年は中国代表も含めて14か国、140人もの選手が来ています。もちろんプレーのレベルも上がりました。

日本でプレーをしたいっていう選手が本当に増えてきて、今年は日本人より外国人が多かったので、日本人も海外の選手もコミュニケーション面で頑張らないといけなかったですね。14か国の選手が来ましたが、選手たちがしっかり溶け込んで一体になっているチームほどいいパフォーマンスが出ていたと言う印象ですね」

選手に指導する坂梨氏

坂梨さんの役割にも変化があったか?

「昨年までは2球場で開催していましたが、今年はコザ信金スタジアムだけでした。移動がなくてその点は楽でしたが、選手数が増えたので選手たちにちゃんと打席数やイニング数を与えるのが大変でした。

今年は僕が中国以外のオーダーを毎日作っていたのですが、誰を最初に出して誰を後から出すか、とか、試合が終わった後に打席数を計算して、調整をしていました。投手でも救援が多いなと思えば先発で出したりとか、それを考える作業が大変だったなと思います。

あとはスカウトが見に来るタイミングで、スカウトのニーズに合った選手をできるだけ出したいなと思っていました。そのうえで僕自身の気持ちとして、この選手は日本でプレーして欲しいなとかいう選手をそのタイミングで出せるようなラインナップの作り方を考えていました。これも大変でしたね」

投手交代を告げるのも役目

NPBから来た選手たちへの配慮

今回も、MLB、NPB、独立リーグなどからスカウトが来ていた。JWLはトライアウトリーグだから、選手にアピールさせる機会も作らないといけないのだ。

「NPBから派遣された選手は、事前に各球団と打ち合わせをして、この選手はこういう起用をしてとか、このピッチャーは怪我明けだから登板間隔を空けてほしいとか、そういう希望を事前に確認した上でラインナップやピッチングのローテーションを作っていました。そういう部分も気を使いましたね」

怪我、故障をした選手はいたか?

「何人か怪我人は出ました。足首をひねったり、鍵盤を部分損傷した選手がいました。筋肉系の怪我がちょっと多かったかなとは思いますけど、NPBから派遣された選手は、ここまで大きな怪我、故障は出ていません」

第1回のときは大きなケガをした選手が出たが?

「今年は、その点は良かったです。怪我をした選手が、すぐに出たいと言ってきたんですが、今回は野手に関しては人数が足りていたので、ちゃんと休んでから出場しようよ、と言いました。

足を痛めて全力で走れないときに試合に出たら、その様子がフォーカスされてしまう。スカウトなどもそれを見て評価してしまうから、そうではなくてしっかり治してプレーできる状態まで戻してからやりましょうという話を各チームの選手に話しました」

万全なコンディションでプレーさせたい

多くの選手は「毎日試合をする」という経験がないので、疲労感が相当たまると思うが

「今年は、選手数が増えてフル出場をする機会が去年よりかは少なくなっているので、去年ほどの疲れはないかなと思います。

とはいえ、1日3試合を消化すると言う、今年のスケジュールは、去年よりハードになっているので、選手たちの疲労が見えたことももちろんありました。

レベルの高いパフォーマンスを毎日継続する難しさを、選手個人も感じていたのではないかと思います」

問題点も見えてきた

坂梨さん自身、選手指導の手ごたえは感じていたか?

「僕は今年3試合とも丸々入っていたので、裏で練習をしてた人がどれぐらいいたのかが把握できなかったんです。それが少し残念ですが、トライアウトリーグに関しては、フランスから来てた投手、野手の2名の成長が目立ちましたね。投手の方は試合を重ねるごとに投球内容も良くなりましたし、野手も聞いていた話では守備もまともにできないし、打撃もいまいちという話だったんですが、試合を重ねるごとにだんだんパフォーマンスが良くなっていって、ちょっと僕もびっくりするぐらい進化しました。

この選手たちに限らず、やはり野球選手は試合に出ることで、どんどん最初の印象が変わっていきますね」

野球オーストリア代表として坂梨監督の今年はどんなシーズンだった?

「オーストリアでは、U23とフルの代表監督をしているのですが、両方ともヨーロッパ選手権の出場資格がなくなって予選を戦って本戦に戻るという1年になりました。なんとか無事に両方とも優勝することができて、来年、また再びヨーロッパ選手権の本戦でチェコなどと戦うことになります。

ジャパンウィンターリーグには、去年も今年も5名、U23の選手たちを連れてきているんですが、去年来ていた選手の1人なんかは、もう少し体作りをすれば日本でも通用するレベルでした。彼らもいろいろ学んでくれるでしょう」

練習時間をしっかり確保したい

より選手の成長につながるサポートを

JWLについて、今年の反省と、来年以降の目標は?

「ウインターリーグの醍醐味は、試合と共にしっかり練習ができることだと思うのですが、今年はスケジュールがタイトになっていたので、僕たちコーディネーターと選手が試合以外で関わる時間があまり取れてなかったのがちょっと残念でしたね。

昨年までは、期間中に急激にレベルが上がった選手がよくいましたが、今年はそういう選手があまり見られなかった印象です。

1日3試合というハードなスケジュールで、練習施設を使う時間も限られていた。選手側も、もう少し練習をちゃんとできる時間が欲しかったのではないでしょうか。

野球のレベルは上がっていても、そういう部分はちょっと残念でした。

僕らコーディネーターは、試合でプレーを見て選手に、ここが足りないよねとフィードバックをして、それに基づいて練習をして、試合でそれを試すという繰り返しで、選手を成長させる役割だと思っています。それができるのがジャパンウインターリーグの最大の特徴だと思っています。その繰り返しをするうちにスカウトが来たタイミングで、しっかりパフォーマンスができるのがいいんですね。

来年以降も、より多くの選手が成長できるように、頑張っていきたいと思いますね」

アドバンスリーグで優勝したLEQUIOS

関連記事