KAMIKAWA・士別サムライブレイズ本西厚博監督「監督2年目に結果を出してきた男」
NPBオリックス等で活躍した本西厚博氏が、北の大地で新たな戦いに挑んでいる。独立リーグのKAMIKAWA・士別サムライブレイズ監督として、チームの勝利と選手育成の両立を目指して全力を注ぐ。

「士別での1年目を終え、『やれる』という手応えも掴んでいます。野球に関しては、やるべきことは変わらないから」
本西氏は今季から、北海道独立リーグ『北海道フロンティアリーグ』(HFL)で士別の監督に就任した。昨年までの6年間はクラブチーム・ハナマウイで指揮を執っていたため、独立とはいえプロ野球界へ戻ってきた形だ。
「ハナマウイでは素晴らしい経験ばかりだった。2020年には東京ドームでの都市対抗野球へ出場できた。アマチュア球界で必死に頑張る選手達に触れられたことは、大きな財産。野球に対する純粋さを感じさせてもらった」
「6年の時間が経ち、『次へ進む時期』と感じた。ハナマウイでの日々は充実していたが、同時に“慣れ”が出始めていたのも事実。自分自身の野球人生も長くはないし、クラブの将来もあるので卒業することにしました」
2019年のクラブ創設時から監督となり、全国有数のクラブチームに育て上げた。62歳という年齢も踏まえ、別の道へ進むことを決意した。
「BCリーグ・信濃グランセローズ監督時代(2016-18年)の知人から、士別の球団代表・菅原大介氏を紹介された。『選手指導がしっかりできる監督を探しています』ということ。お会いすると、即決の形で監督就任が決まりました」
HFLはBCや四国といった他の独立リーグに比べると、運営規模は決して大きくない。士別も首脳陣は監督しかおらず、専任コーチは存在しないに等しい。
「ハナマウイ初期も同様で、投手と野手の両方を見ていた。ゼロから立ち上げる経験もさせていただいたので、何の心配もなかった。『本西ならやってくれるだろう』という期待も感じました」

~“雪かき”が毎日のルーティーンに加わった
士別に初めて足を踏み入れた時のことは明確に覚えている。2024年11月の終わり、一面の雪景色に、「正直、『すごい所へ来たな…』と思った」と振り返る。
「11月30日に札幌でHFLのリーグ感謝祭があり、そこで関係者やファンへ監督として紹介された。翌日には士別へ足を運んで現地視察。BC・信濃時代に長野で“降雪”の経験は多少ありましたが、比較にならない“豪雪”でした(笑)」
年明けから拠点を士別に移してからは、“雪かき”が日課に加わったのは言うまでもない。「信濃時代に“雪かき”をしたのは、3年間で数回だけだったんだけどな…」と苦笑いを浮かべる。
「練習環境に関しては心配なかった。士別市朝日町の練習用グラウンド隣には、球団が造った室内練習場がある。3箇所でフリー打撃ができる十二分な広さがあり、夜12時まで使用できる。選手をしっかり鍛え上げられると思いました」
練習環境視察や住居を決めて帰京、関東でトライアウトを行った。そして年が明けた2月7日からは、本格的な士別生活が始まった。
「11月の段階でチーム編成は、球団主導でほぼ出来上がっていた。選手レベル的にはなかなか厳しい感じでした。『基本から教えて、育てていくしかない』というスタートでした」
士別の冬は長い。3月終盤までは雪が残り、屋外グラウンドを使用しての本格練習は4月に入らないとできない状況だ。
「3月20日に外国人選手も含めた全選手が揃って始動。それまでは各選手が自主トレ形式で室内練習をするしかない。屋外で実戦形式を含めた練習ができたのは、4月に入ってからでしたから」
4月下旬に行われた社会人チームとのオープン戦では、10個近い失策を犯し16失点で敗れた。「腹を括ってやるしかない」と改めて現実と向き合った。

~可能であれば日本人選手のみで戦いたい
「優勝な厳しいかな…」と感じながらも、本西監督の頭の中では戦い方のプランも出来上がっていた。
「シーズン終盤まで良い勝負をするにも、6月終わりまで5割前後で行くことが絶対条件。5月6日のリーグ開幕から2ヶ月が勝負。『選手、チームを成長させつつ我慢を続けよう』と思っていたら、6月終わりで借金が10近くになってしまった」
開幕戦の美唄ブラックダイヤモンズ戦、7回裏に5点を挙げてのコールド勝ちで幸先良いスタートを切った。しかしその後は苦戦が続き、本西監督の思惑通りには進まなかった。
「新規参入の別海パイロットスピリッツは実力が多少落ちる。そこから貯金を稼ぐつもりだったが、結果的には五分近くで終わった(10勝7敗1分)。上位2チームとはそこで差が付いてしまった」
「シーズンを通じて守備面で苦しんだ。不用意な四球や失策が失点に繋がり、ビッグイニングになるケースも多かった。攻撃面は外国人を中心に勝負できたので、課題が浮き彫りになったシーズンとも言える」
攻撃陣では元広島のハビエル・バティスタが、打率.394、19本塁打、72打点で打点王獲得。そしてジョム・バルデラマは、打率.359、20本塁打、72打点で本塁打と打点の二冠王になった。
「『バティスタ以外の外国人は使えないだろうな…』と最初は思っていた。でもバルデラマは身体能力に優れ、吸収力も高いので一気に伸びた。他にもルーク・クリスチャンは首位打者争いに加わり、捕手も守るなど欠かせない存在だった」
「外国人には厳しく、本当のプロとして接しました。当初はHFLを下に見ている感じもあり、『明日は休みたい』と平気で言ってきた。『それなら使わないし契約を切る』とはっきり伝えた。野球への取り組み方が変わり、実力を発揮するようになりました」
打線を外国人選手が牽引していたのは間違いない。しかし、「可能ならば日本人のみでチーム編成したい」と語る。
「士別ファンを増やすためには、日本人の方がファンも感情移入しやすいはず。彼らは、仕事をしながらプレーしています。普段の姿や顔も見えやすいので、応援してくれると思います」
士別では外国人選手には給料が派生しているが、日本人選手で同様な待遇は多くない。昨季の場合、月曜は1日仕事を行い、火~金曜日も午前中は働いて午後から練習。「町で懸命に働く選手達への応援が高まることに期待する部分もある」という。

~他独立リーグや企業チームへ選手を輩出する
グラウンド内外で課題は多い。士別はもちろんHFLとしても、2022年のリーグ創設以来、NPBドラフトでの指名選手は育成を含め現れていない。
「士別の選手がNPBドラフトにかかるには、まだ時間がかかると思う。まずはレベルアップして、独立のBCや四国、そして社会人の大手企業チームから声がかかるようになってもらいたい」
「HFLへ来る選手達は、他の独立や企業チームに取ってもらえなかった選手。それでも野球を続けたいので、給料は二の次という感じ。そういう選手達を育てて、まずは上のカテゴリーに行ってもらいたい」
本西監督が考えているのは、選手達を身の丈にあったカテゴリーへ送り出すこと。「来年は士別から2-3人、上のカテゴリーへ送り出せそうな感じもする」と付け加える。
「チームの結果も出したい。HFLで優勝すれば、各独立リーグ優勝チームが集結する『チャンピオンシップ』に出られる。NPB等のスカウトが集まる場所なので、目に止まってステップアップするチャンスを得ることができます」
士別の昨季成績は25勝27敗2分、優勝した石狩レッドフェニックスとは6ゲーム差の3位に終わった。優勝となると簡単ではないが、本西監督は手応えを口にする。
「BC・信濃の時も2年目でリーグ優勝。ハナマウイでも実質2年目で都市対抗出場を果たした。1年やって必要な部分をしっかり埋められれば、勝算も見えてくる。チーム編成からしっかり行って、開幕へ向けて準備したい」
今オフは関西と関東の2地区でトライアウトも開催。新戦力発掘を行うなど、戦力は着々と整いつつある。

「巡り合わせもあるけど、勝てる気がするな」
かつてイチロー、田口壮と鉄壁の外野陣を作り上げた“勝負師”は静かに語る。穏やかな口ぶりだったが、不気味なほどの自信を感じさせた。今季の士別は、大きいことをやってくれそうな気がする。
(取材/文:山岡則夫、取材協力/写真:士別サムライブレイズ)
