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中学硬式野球・関メディベースボール学院「グランドスラム達成で“価値”と“勝ち”の両方を目指す」

中学硬式野球・ポニーリーグ所属の関メディベースボール学院(以下関メディ)は、今季目標に“グランドスラム(全大会制覇)”達成を掲げる。しかし“結果”だけを求めるのではなく、「関メディの存在価値を常に考え続けたい」と総監督・井戸伸年氏は語る。

「目標からの逆算」をしながら、“野球選手としての幹”を作り上げる。

~勝てなくても選手が集まるチーム

「全試合に負けても選手が集まるチームが、関メディとして究極の理想型です」と井戸氏は語る。

多くの野球チームが“勝利”を最大目標に掲げるなか、異色とも思える発言。関メディが目指すのは、優勝回数を競うような常勝軍団ではない。

「選手達が“勝利”や“優勝”を目標とするなら、応える形で臨みます。目標から逆算、普段から必要なものを習得してもらう。しかしそれ以上に大事なのは、『どこへ行ってもやっていける、“野球選手としての幹”』を作り上げることだと思います」

「関メディ出身者の多くが甲子園出場している。NPBでも2人がプレーしています(阪神・今朝丸裕喜投手、楽天・島原大河捕手)。しかし、彼らも常に結果を出し続けていたわけではない。『“野球選手としての幹”が大事』なのを、教えてくれています」

選手達の目標に沿ったチーム作りをして臨むが、それだけではダメ。「“野球選手としての幹”ができていれば、高校から先の野球人生において可能性が広がります」という。

「横(=他人)との比較」ではなく、「自分自身と向き合うこと」を重視する。

~“逆算”して自分自身と戦う

「目標からの逆算」を常に求める。「上達したい。試合に勝ちたい。そのためには今、何を考えて行動すべきか?」を問い続ける。

「レギュラー争い、試合などに対して“競争”と言いがちです。しかしそれだけだと、『横(=他人)との比較』のみで終わってしまう。大事なのは自分自身との戦いで、それらが積み重なって目標に結びつくと信じています」

「横(=他人)と比べた場合、比較対象のレベルを超えた時点で完結してしまう。それ以上の成長速度も遅くなりがちです。『目標から逆算して現状を把握する』ことで、必要なことも明確になります」

「目標からの逆算」ができれば、選手は自分自身と向き合うことに注力すれば良い。「横(=ライバル、対戦相手)を意識するのは指導者の役割だと思っています」と続ける。

「選手は自分自身と必死に向き合えば良い。横との比較はチーム編成や戦術の問題になるので、指導者や監督が考えること。選手には野球選手として必要な技術を全て習得、レベルをどんどん上げてもらいたいです」

「“勝者のメンタリティ”は、選手全員がそういった思いを持ち、普段から取り組むことによって出来上がる」とも付け加える。勝敗や成績は“結果”に過ぎないということだ。

「やり切った感」を常に感じることで、チームメートや大人達を動かすことができるはず。

~自分の力で大人達を動かしてみろ

「選手達が自分自身のプレーにのめり込む熱量に、指導者側も動かされていくのが楽しい」と笑う。

「“やり切った感”を常に感じてもらいたい。1つの練習メニューでも、選手が“やり切った感”を感じているのは周囲にも波及します。それらが積み重なって、チーム全体のパフォーマンスも着実に向上します」

「どう勝ちたいのか?」「どう在りたいのか?」「勝った後に何を伝えたいのか?」が大事という。

「真剣に取り組んだ末の“やり切った感”は、周囲を動かします。関わってくれる大人達にも影響力が及びます。『自分の行動、パフォーマンス、表現力で大人を動かしてみろ』と言います」

「野球を通じた人間形成」と口にする指導者は多い。しかし、井戸氏は少し異なった見解を持っている。

「『人間形成する』なんて、おこがましくて言えません。個性はさまざまだし、時代もどんどん変わっています。だからこそ、『まずは目先のことに集中、“やり切った感”を得よう』と言いたい。目先の“価値”を大事にしたいと思います」

「目標からの逆算」、一歩ずつの“ステップ・バイ・ステップ”が重要。その上で選手達には、言葉に出すことの必要性も説く。関メディでは立候補制の幹部総選挙などを頻繁に行うのも、そういった理由からだ。

「自分や周囲が何を求めているかを常に考える。それらを理解したら言葉に出して挑む。言語化することで、覚悟を固めることにも繋がります。最終的には多くの人から、『ありがとう』と言ってもらえるチーム、選手になれれば良いですね」

トレーナー・岩崎赳実氏(写真左)、総監督・井戸伸年氏(同中)、ヘッドコーチ・廣島健光氏(同右)の3人は、コミュニケーションを密に取りながら指導を行う。

~各分野専門家によって円で囲うようにサポート

“グランドスラム”を掲げたのは、選手からの熱い思いがあったから。個々のレベルアップと両立を成し遂げるため、関メディは新たなことにも挑戦し続ける。

「1人ひとりのレベルを引き上げます。そのためには、選手を各分野の専門家と指導者による円で囲うイメージでサポートする。情報が氾濫している時代だからこそ、選手達には正しい知識と方法が必要です」

フィジカル面では定期的に体組成を計測、“インボディ”まで意識した理想の身体作りを行う。データ面では、野球日本代表チーム(=侍ジャパン)『トラックマン』部門責任者・星川太輔氏の協力で各選手のパフォーマンスをデータ化する。

「体組成計測で、『トレーニング・食事・休養』の重要性について各選手が自覚できる。その上で正しいメカニックに沿ったスキルが習得できれば、パフォーマンスデータも良くなります」

「指導者にとっても参考になります。例えば、良いフォームでプレーしていてもデータ値が良くない。体組成数値が偏っているのが原因だと分かる時もあります。選手個々のリアルタイムに即した指導が行えます」

そしてメンタル面では、株式会社サンリの能力開発研究室室長・臼井博文氏による『SBT(スーパー・ブレイン・トレーニング)』を導入。“最強プラス思考軍団”となり、結果にも直結している。

「野球はメンタルスポーツ。臼井氏の本を読んで、『これや!』と思って協力をお願いしました。2023年に慶応高が夏の甲子園で優勝した時も、『SBT』を取り入れていましたから」

慶応高の躍進にメンタルコーチ・吉岡眞司氏の存在があったのは有名だが、臼井氏は吉岡氏の“師匠”にあたる人物だ。

「3月の全日本選抜中学硬式野球大会(沖縄)では、臼井氏に帯同していただきます。メンタルコーチがベンチ入りしているのは、NPBでも数球団だけ。画期的であり、選手のパフォーマンスに直結するはずです」

そして何よりも力を入れているのが、実戦(オープン戦、紅白戦)を可能な限り増やしている点だ。

「野球選手は試合によるゲーム感、プレー感が重要。プロレベルでも寒い時期にウインターリーグを行うのはそのためです。本来なら毎日でも試合をしたいと思っています」

「何が起きても対応できるよう、“逆算”するために試合を多く行います」と付け加える。1月終わりから紅白戦を行い、2月7-8日には関東遠征を行ったほどだ。

野球選手にとって最も重要なものは、試合で得られるゲーム感、プレー感だ。

「“グランドスラム”することで、関メディの存在感が高まります。『野球をうまくなるのに、こういうやり方があるんだよ』というのを、広く知ってもらえるチャンスだと思っています」

「(関メディには)他にはない育成システムがあります。その結果、OB達も各方面で活躍している。そういう意味では、やっていることに間違いないと思います。そこをしっかり理解した上で、関メディに注目してもらえたら嬉しいです」

関メディの存在価値について自身の考えを語ってくれた。口には出さなかったものの、「日本野球全体のレベルアップ」まで頭に入れているように思えた。

「“勝つ”“グランドスラム”するということは、いわば“ショーケース(展示会)”的なノリでもあります」と、満面の笑みを浮かべる。ここから先も、関メディは野球界に大きなインパクトを与え続けてくれそうだ

(取材/文/写真・山岡則夫、取材/写真/協力・関メディベースボール学院、井戸伸年)

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