「体育会学生達に日本の未来を明るくする糸口を感じる」株式会社スポーツフィールドによる“体育会学生動向調査”
株式会社スポーツフィールド『体育会学生動向調査』を実施。大学の現役体育会学生達が、「真剣に考えて動いている」姿がデータからは読み取れる。同社キャリアサポート推進室長・吉浦剛史氏、同マーケティング責任者・伊藤知裕氏、そして同学生スポーツ推進室長・宮原巧磨氏が、同プロジェクトについて解説してくれた。

~時間を捻出して選挙へ足を運ぶ学生は多い
「(今までに)選挙へ行ったことがある学生:65%」
『体育会学生動向調査』で最も興味深い結果だったのが、「選挙への参加経験」についてだった。同年代の一般的な投票率が約35%とされる中、体育会学生の投票率は驚きの高数値となった。
「一概には言えない部分もありますが、『(選挙の経験率に)こんなに差があるのかな?』と思いました」と伊藤氏は、いまだに驚きを隠せない。
「体育会学生は部活と授業に注力して、プライベートの時間を捻出するのも難しい。『選挙へ行けない理由』を見つけ出すこともできるはずです。これだけの学生が、選挙への参加経験があるのは驚きでした」(伊藤氏)
「『(選挙の経験率が)高かったら良いかな』と思っていたのですが、ここまでとは思いませんでした」と吉浦氏は続ける。
「主将など所属する部の幹部は自分達で選んでいるので、ある意味で“選挙慣れ”しているのかもしれません。しかし、それでも投票へ足を運ぶのは労力もかかるはず。想像以上に高い数字なのは間違いないです」(吉浦氏)
「部活をやっていると、中高時代からでも幹部選出の投票がある場合もあります」(宮原氏)という環境も、理由の1つに考えられる。「選挙で投票を行う」ことは、体育会学生にとって特別な行為ではないのかもしれない。
「非常に興味深い結果だったので、別の機会に詳細を調べてみたいです」と伊藤氏は、この結果について大きな興味を持ち続けている。
「部内の幹部選挙と国政選挙等では、1票の影響力が大きく異なります。それでも(国政選挙等の)投票会場まで足を運ぶということの、モチベーションがどこにあるのかを調べてみたいです」(伊藤氏)
「関わっている競技に対し、(国や自治体から)補助金等が出ていることを理解している学生も多いことの影響もあるのでは。特に“マイナー”と言われる競技の選手達は、ありがたみを感じていると思います」(吉浦氏)
スポーツが成り立つには、国や自治体からのサポートも必要不可欠。実際に選手・関係者として関わっているからこそ、“選挙”の重要性を感じているのかもしれない。

~体育会学生は、コロナ禍前後で行動や考え方の変化が少ない
『体育会学生動向調査』は、2025年12月1-31日の期間にインターネット調査で行われた。全国の体育会所属学生4,331人から有効回答を得られ、「“体育会学生のリアル”を最も把握できるデータ」として注目されている。
スポーツフィールドは体育会学生のキャリア支援サービス等を行っている。「同調査を始めたきっかけは、根拠に基づいて、体育会学生へサービス提供をしたいからでした」と吉浦氏は説明する。
「体育会学生が『どのような考え方をしているのか?』『どのような特性があるのか?』を理解しないといけません。適切で質の高い顧客サービスを行うためにも、当然の流れだったと思います」(吉浦氏)
今回は、2022年に入学した学生が就職活動を始める時期での調査となった。中高生時代にコロナ禍に直面、状況が落ち着いた後に大学入学した学生達ということになる。
「体育会学生は、コロナ禍前後で学生達の行動や考え方に変化が少なく感じます。今回のような詳細なものではないですが、コロナ禍前に行った動向調査と比較しての感想です。“部活”の存在が影響を与えているのかもしれません」(伊藤氏)
「コロナ禍でも体育会組織は活動していました。無観客など可能な範囲ながら試合や練習を行っていた。活動様式や触れ合う人の数が、大きく変わらなかったのではないでしょうか。任意団体やサークルは、活動がかなり規制されたと聞く。そこが大きな違いだと思います」(吉浦氏)
「コロナ禍でも、何とかして競技力、そしてチーム力を向上させたい」という、体育会学生達の思いが伝わってくるようだ。
「体育会の部活は、実際に同じフィールドに集まってスポーツをしないといけない条件もありますから」と、宮原氏は付け加える。スポーツの世界は、時代が変化しても“オフライン”で動いていることを改めて思い知らされる。

~大学体育会が少子化対策に直結する可能性も
「兄弟はいない(一人っ子):8%」
「選挙への参加経験」と共に目に留まったのが、兄弟についての調査。体育会学生の9割以上が兄弟を持っていることも明らかになった。加えて、「兄もしくは姉がいる」学生が約6割を占めているという。
「体育会学生は、ジュニア世代から競技に打ち込んできたことが想像できます。兄や姉が部活に携わっている姿を見て、『自分も何かやりたい』と早い時期から感じて競技を始めた部分もあるのではないか」(伊藤氏)
「大学まで部活を続けるには、確固たる強い意志(スピリット)も必要です。『意志(スピリット)を作り上げる1つの要素に、兄や姉の存在が多少なりとも関係ある』と考えます」(吉浦氏)
体育会で競技に打ち込むような人材育成には、兄や姉の存在が関係する可能性はありそうだ。
「日本の少子化対策へも活用できそうな感じがします。例えば、国の少子化対策費用を体育会の援助に回す。環境が良くなれば体育会学生の人口も増えます。少子化対策に直結するのではないでしょうか」(吉浦氏)
「スポーツを通じての人間形成」と耳にするが、精神面の成長についての評価・判断は難しい。少子化対策のような数値化できる分野なら、明確な評価・判断もしやすいとも言える。『体育会学生動向調査』によると、体育会が日本の明るい未来へ貢献できる可能性も感じさせる。

~大学体育会での部活には大きな価値がある
何よりも学生達が気にかけているのは、卒業後の進路についてだろう。
『体育会学生動向調査』においても、就職活動(就活)に関しては多くの項目が割かれている。これまで多くの体育会学生のキャリア支援をしてきた経験を踏まえ、就活へ挑む学生達への思いを聞いた。
「部活をしているだけでも価値があることを、認識してもらいたい。社会でキャリアを築くために、体育会で部活をしてきたことは絶対にプラスになるはず。だからこそポジティブに考えて、方向性をしっかり見極めてもらいたい。周囲と連携を取りつつ、多くのものを取り入れて柔軟に視野を広げてもらいたいです」(宮原氏)
最前線に立って学生と企業のマッチングを進める宮原氏の発言からは、強い説得力を感じる。
「就活中の学生が、『〇〇(競技)しかやって来なかったので…』と発言をするのを聞きます。決してマイナスに考えず、大学で競技を続けていることへの評価が高いことを認識して欲しいです。強靭なメンタルを含め、高いポテンシャルがあるのは間違いないので、そこを能力に変えていくことに注力して欲しいです」(伊藤氏)
「体育会で部活を行う意義を、本人、そして社会も認識して欲しい」と伊藤氏は、学生達の可能性に期待を込める。
「時間の使い方を大事にしてもらいたいです。時間をうまく活用できれば、部活以外のこともできます。就活も一般学生に負けないほどの動きができると思います。体育会学生は、一般学生が自由に過ごしている時間を部活に割いている。部活以外の時間について考え、生産性のある時間を作り出していけるかです」(吉浦氏)
「部活で少林寺拳法をやりながら、専門スクールに通ってアナウンサーになった先輩の例もあります」と吉浦氏は、実例も教えてくれた。
「体育会学生の価値を上げたい。そして日本の学生スポーツがより良い方向へ向かって欲しい。そのためにも、『体育会学生動向調査』を有効活用したい。そして日本のスポーツ界全体が前進していくことに、我々も並走していければ嬉しいです」(吉浦氏)
各競技で世界クラスのパフォーマンスを発揮する学生アスリートもいる。しかしそういった選手達も、一般学生と同様に将来への希望を持ち、不安も抱えている。そして、競技環境の向上を常に願っている場合も多い。
学生達には常に前向きで明るいメンタル状態で、グラウンド(フィールド)に立っていて欲しい。日本スポーツ界の進化・成長のためにも、『体育会学生動向調査』の存在意義は大きなものになりそうだ。
(取材/文/写真:山岡則夫、取材協力/写真:株式会社スポーツフィールド)
