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福岡ソフトバンクホークスが手がける「鷹祭 SUMMER BOOST」 福岡の街とともに創り上げる“エンタメイベント”は新たな夏の象徴へ

福岡ソフトバンクホークスが展開する夏の大型イベントである「鷹祭 SUMMER BOOST」。

約20年続いた「鷹の祭典」から生まれ変わり、福岡中の街をさらに活性化させるイベントとして進化を遂げている。

この進化の要因や努力のプロセスを紐解くべく、昨年のスタート・今年とイベントを牽引したマーケティング企画部の井下真志さんと、井下さんと共に今年の開催の先頭に立った江尻賢司さんに、この2年間を伺った。

(取材 / 文:白石怜平 表紙写真:©SoftBank HAWKS)

2年目は245店舗とコラボし、さらに進化を遂げる

「鷹祭 SUMMER BOOST」は昨年からスタートしたエンタメイベント。23年まで約20年開催を続けてきた「鷹の祭典」からリニューアルし、福岡における夏の代名詞として早くも浸透している。

「福岡の街とともに創り上げる」

をコンセプトに掲げ、“エンタメイベント”の名の通り野球の枠を超えた催しを展開。球団、ファンそして街が一体となった盛り上がりを創出している。

井下さんはこの新たな夏の風物詩の意義について、前身から続く伝統も踏まえながら語った。

「全社員の共通認識なのですが、鷹祭 SUMMER BOOSTはホークスにとって年間最大の一大イベントと位置付けています。そこにかけるリソースやパワーが最も大きいことは、鷹の祭典時代から不変です。

あとやはりホークスが先陣を切って行ったユニフォーム配布は必須。先人がつくり、NPBのスタンダードへと発展させた伝統というのはしっかり継承していきたい想いでスタートしました」

昨年、第1回鷹祭 SUMMER BOOST立ち上げを牽引した井下さん

鷹祭 SUMMER BOOSTにおける大きな特徴の一つは、球場から飛び出し街とコラボしていること。「天神夏まつり」と手を組み、会場である福岡市役所西側ふれあい広場からも熱気を発信している。

そして、イベントの更なる定着化を目指し、今年初めて行った企画が飲食店とのコラボ。福岡市などの245店舗の飲食店が賛同し、7月上旬から8月上旬の間にホークスのユニフォームを着用して来店した人を対象にキャンペーンを行った。

街のお店とコラボレーションし盛り上げた ©SoftBank HAWKS

その経緯を江尻さんが明かしてくれた。

「昨年一部の屋台とコラボしまして、その反響が福岡地方料飲組合連合会さんに届き興味を持っていただいたことがきっかけです。

組合の店舗が3,500店舗以上ございますので、その数あるお店の中から福岡市に絞っていきましょうということで、245店舗という数に至りました」

今年、井下さんからボールを受け取った江尻さん

これらの店舗数を取りまとめるべく江尻さんが先頭に立って奮闘した。実現までの過程についても続けて語った。

「245の飲食店とコラボするにあたって、音頭を取って1店舗ずつというのも難しい面がありました。ですので、連合の代表さんと協議を重ねることで加盟店に落とし込んでいただきました」

さらに、全店舗と球団が想いを一つにするためにある取り組みを行っていた。

「加盟店の方をドームに招待してグラウンドで決起集会を行いました。みんなで一緒のユニフォームを着て参加いただいて、さらに周東選手会長からのビデオメッセージも流しました。

私たちも“福岡を盛り上げたい”という想いが強いですし、その意思統一を全員でできたと感じています。初めてドームに来られる方もいらっしゃって、グラウンドで感激されたのも印象深かったです」

加盟店がグラウンドに集結し、一致団結でイベントに臨んだ ©SoftBank HAWKS

エンタメ性あふれる演出で野球以外でも楽しめるイベントに

期間中の試合日におけるイベントも盛大に行われた。DJに加えて日替わりで豪華アーティストたちが登場し、毎日がオリジナリティ溢れる催しとなった。

江尻さんらは、演出の面でも工夫を凝らしていた。

「応援グッズも身に着けて球場全体で一体感を出せるようにしましたし、ゲストの皆様のパフォーマンスをもっと煌びやかにしたく、スモークやレーザーなどで彩りを加えました。

あとは最後に花火を打ち上げるのですが、そこもゲストの方と一緒に見て全てのプログラムを全員で楽しめる。そんなイベント作りを行いました」

アーティストも多数登場し、球場のボルテージが毎試合上がっていった ©SoftBank HAWKS

昨年井下さんも豪華アーティスト陣を迎え、鷹祭 SUMMER BOOSTの最初の1ページを刻んだ。「未だ忘れもしないですね」と鮮明に残っているという当時の瞬間を語った。

「昨年の初日にDA PAMPさんに来ていただいたのですが、1曲目の『if…』のイントロが流れた瞬間のスタンドが地響きのような歓声が沸いたんです。

選手もそうですが、アーティストのパワーっていうのもすごいことを肌で感じました。みんなが知っている1曲が会場を一つにする。これがエンタメなんだと感じられた期間でした」

江尻さんも、今年グラウンドで迎えたその瞬間について語った。

「ゲストさんが登場した時のお客さんの大歓声や、パフォーマンスを終えた後の拍手がすごくて、ゲストさんに来ていただいて良かったですし、観客の皆さんも喜んでくれたことが何より嬉しかったです」

期間中の5試合は全試合勝利でさらに熱気と一体感が増した ©SoftBank HAWKS

選手が登場し盛り上げた「天神夏まつり」

井下さんが語った“全社で統一した意識を持っている”というのは、選手たちも含めてのことであった。

「天神夏まつり」では鷹祭 SUMMER BOOSTの前夜祭と後夜祭が行われ、前夜祭では選手も登場している。

シーズン真っ盛りの中、本業の合間を縫って参加してもらうのはハードルが少なからずあったが、井下さんや江尻さんらは想いを伝えながら協議を重ね実現した。

「選手を街中に出すというのは大きなチャレンジでした。オールスター休みの期間でもありましたし、負担も考えるのと本当にやるのか否かも社内で議論を重ねました。

ただ、鷹祭 SUMMER BOOSTを今後福岡の夏の象徴とするために、お客さまの期待に応えることや盛り上げをつくるにはやはり選手の力は必要不可欠だと。

そこは、チーム側と協議を重ねることによってまさに全社一体で認識が統一されていきました」(井下さん)

昨年は津森宥紀投手・野村勇選手・柳町達選手、今年も津森投手に加えて松本晴投手と大山凌投手が参加。盆踊りや太鼓演奏そしてDJも駆使し、選手自らが場を最高潮へと盛り上げた。

今年も選手が参加し、大歓声を浴びた ©SoftBank HAWKS

「昨年は太鼓、今年はさらにDJもやってもらうなど新しいことにもトライしてもらいました。選手たちも楽しんでもらいましたし、残って盆踊りもしてくれましたから(笑)。ぜひ、来年以降も恒例化していきたいです」(江尻さん)

なお、参加している選手たちの中にはある傾向が出つつあった。

「参加した選手たち、今年さらにブレイクしていますよね。津森投手は元々一軍で活躍していますが、野村選手や柳町選手は今年レギュラーとして活躍し、松本晴投手と大山投手も登板数を増やしています。選手たちにとって縁起づけの場という意味でも、今後さらに発展させたい想いです」(井下さん)

登場した選手たちは一軍の舞台でも活躍を果たしている ©SoftBank HAWKS

心に刻まれている指揮官からの言葉

2年目を終えた「鷹祭 SUMMER BOOST」。今年も期間中や9月の終盤戦には選手だけではなく球団スタッフ、そして駅や地元で働く多くの人たちがユニフォームを着用し、リーグ優勝をめざして街が一体となった。

江尻さんはイベントの展望について以下のように述べた。

「地域の皆さんから『福岡の夏といえば、鷹祭 SUMMER BOOST』だと自然に出るようなイベントにしていきたいですし、それがさらに広がっていって、全国の野球ファンに認知いただくことが直近の目標です」

来季以降の展望を語り合った

ここで井下さんが「小久保監督へのインタビューの中で心に強く刻まれた言葉があるんです」と、その内容を紹介してくれた。

「『スポーツ界だけではなく、感動を与えられるエンタメの最前線がプロ野球。そのプロ野球と言えば我々ホークスだと全国の方々に思っていただけるような仕事をするのが、我々の使命なんだ』と。その言葉を常に意識して日々臨んでいます」

そして江尻さんも最後、自身における今後について語って締めた。

「鷹の祭典から20年以上続く伝統や文化をしっかり継承していきたいです。去年や今年と同じことをしても退化してしまうと思います。

ホークスは未知の領域へ常に挑戦していくカルチャーがあります。私もその一員として体現するためにも、今後も挑戦を続けないといけない。そう強く感じています」

伝統の継承と進化はさらに続いていく ©SoftBank HAWKS

リーグ2連覇を果たしたホークスはこれからクライマックスシリーズを迎える。チームを後押ししたのは球団スタッフそして街中の盛り上がりだった。

(おわり)

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