北海道ガスの補強、航空自衛隊千歳・佐藤大貢捕手 「野球を通して広報活動にもなれば」基地の思いも背負い都市対抗に初出場
創部4年目で掴んだ、東京ドーム行きの切符。
北海道ガス(札幌市)は、最年長の選手が26歳という若いチームだ。創部当時こそ大量失点で負ける試合もよく見たが、ほんのわずかな期間で北海道代表として全国大会に出場できるチームへとなっていった。
都市対抗野球大会は、その名の通り「都市」の代表同士で戦う大会だ。推薦枠で本戦に出場できる前年優勝チーム以外は、まず地区予選を戦う。そこで代表権を勝ち取った31チームは、それぞれの地区で敗退したチームの中から補強選手を3人まで選び、自チームに加えて戦うことができる。
北海道地区予選で優勝した北海道ガスは、航空自衛隊千歳(千歳市)から佐藤大貢捕手(6年目・東海大)、JR北海道硬式野球クラブ(札幌市)から夏井康吉投手(6年目・富士大)、日本製鉄室蘭シャークス(室蘭市)から永森竜次外野手(3年目・札幌大)と、2次予選で戦った全チームからまんべんなく補強選手を選んだ。まさに、北海道の総力をあげた戦いだ。
その中のひとり、航空自衛隊千歳・佐藤大貢捕手。6年目にして初めての都市対抗は、彼の目にどのように映ったのだろうか。
東京ドームという場所で戦うということ
北海道代表チームは、都市対抗通算100勝まであと2勝としているが、2016年を最後に1回戦敗退が続いていた。今年こそは1勝を。北海道ガスと補強選手たちは、地元の思いを背負って東京ドームへ乗り込んだ。
1回戦の相手は、前年4強のセガサミー(東京都)だ。強打のチームだが、北海道ガス先発の大城祐樹投手(3年目・桐蔭横浜大)は初回を三者凡退と、いいスタートを切った。2回表の攻撃では連打で無死二、三塁とし、東海林寛大捕手(4年目・日大)の犠飛で1点先制。このままいい流れに乗っていけるかに思えた。
だが、3、4回に1点ずつ失点し、セガサミーに逆転を許す。5回途中には、流れを変えるべく投手・夏井、捕手・佐藤を投入しバッテリーごと交代するも、さらに1点を失う。7回に5点、8回に2点と最終的には10失点で1-10と完敗。守備では東京ドーム特有のフライの見づらさに、ボールを見失う場面もあり、経験のなさがそのまま結果に現れた形となった。
途中出場の佐藤も「いっぱいいっぱいになってしまった」と初の都市対抗を振り返った。「練習試合の段階で、途中から夏井投手とセットでいくことは決まっていて練習していましたが、実際に立ってみると少し球場の雰囲気にのまれてしまった。もっとピッチャーや周りに声かけができていれば、もうちょっと抑えられたかなと反省しています」。
航空自衛隊千歳、野球を通じて広報活動
有事の際は、野球ではなく任務を優先させなければならない航空自衛隊千歳。民間の会社とは勝手が違うため、他チームの補強選手として出場する手続きも、少し手間がかかるそうだ。それでも、と佐藤を求めた北海道ガス。そして、基地の人たちも佐藤のために力を尽くしてくれた。
「野球というスポーツを通じて広報活動にもなれば、ということで基地の方々が動いてくださいました。裏で動いてくださった方々がたくさんいたので、出場させていただくことができました」
佐藤は普段、航空機を支援する整備機材の整備員をしている。大会前の練習を含め、長く職場から離れることになるが「職場のみなさんも快く背中を押してくれました」。晴れて札幌市・北海道ガスの一員となって都市対抗に臨むことができた。最年長が26歳という若いチームでは、28歳である補強選手の佐藤と夏井が最年長となった。佐藤は北海道ガスについてこう話した。
「若いながらにしてひとりひとりが考えて野球をやっています。野球に対する考え方がひとりひとり違う中で、選手同士でしっかりと考えを言い合って、しっかりとまとめてひとつの答えを出してチームとして動いている。そう感じました」
そんなチームに刺激を受けながらも、他のチームから参加しているからこその目線も忘れずに投手と向き合った。「普段は対戦する側なので、対戦する側だったらどう思うかという自分の気持ちを大切にしました。あとは、ピッチャーの一番いいところを壊さないようにという気持ちを持っていました」。
そうして挑んだ初めての都市対抗だったが、思うような結果は出せずに1回戦敗退となった。北海道ガスは、佐藤が所属する航空自衛隊千歳をはじめ、北海道にある多くの企業チーム、クラブチームが激闘を重ねた末に頂点に立ったチームだ。今年だけの話ではない。北海道地区予選は毎年、他の地区同様に文字通りの死闘を繰り広げている。
それでもここ数年、東京ドームでの1勝が遠い。1勝への思いについては、JR北海道から補強で出場した夏井も強く持っており、オンライン会見ではこう話していた。
「去年自分のチームで出場させていただいて、今回ありがたいことに補強選手として出場させてもらいましたが、2回とも初戦で敗退してしまいました。自分自身、悔しいというか情けないと感じています。来年また、自分のチームで出場できるように、そして北海道が通算100勝まであと2勝というところなので、その100勝を自分たちの手でとれるように、また明日から頑張りたいと思います」
最後に、佐藤にも北海道野球の今後についての思いを訊いた。
「ここ最近、都市対抗野球もそうですし日本選手権も勝てていない状況が続いています。北海道の中で満足するんじゃなくてさらに上を目指して、普段は敵ですけどしっかり切磋琢磨し合って全体のレベルアップをしていかないといけないと感じています」
民間企業チーム消滅の危機、自然災害、コロナ禍での活動制限、様々なことを乗り越えながら、それぞれのチームが北海道の野球を盛り上げてきた。この先もその歩みを止めず、更なる高みを目指して欲しい。
来年、北の大地の思いを乗せて、東京ドームでの1勝を手にするのはどのチームだろうか。