ポニーリーグ日本代表が世界の頂点を目指して活動開始

ポニーリーグ各年代の日本代表が世界一を目指して動き始めた。

5月9-10日には、選手選考を兼ねた『広澤克実杯・全日本地域対抗選手権大会・兼・日本代表選手選考会』を開催(長崎・佐賀の8会場)。参加336人中から、U15が18名、U14とU13が各15名の日本代表候補が選出された。

同大会は6月にアジア各地で行われる、『ポニーアジア選手権(アジア・パシフィックゾーン・チャンピオンシップトーナメント)』へ出場する各年代日本代表の選考会という位置付け。アジアで頂点に立てば、米国で行われる『ワールドシリーズ』への出場権も得ることができる。

U14以下の大会ではグラウンドに“ポニーサイズ”が採用されるため、適応能力の高さも重要になる。

~野球を大好きでいればチャンスは何度でもやってくる(日本ポニーベースボール協会理事長・広澤克実氏)

長崎の晴れ渡った空の下、「“日の丸”を背負う」という思いを持った選手達が全国から集結した。開会式を控える長崎県営野球場・ビッグNスタジアムには、興奮と期待が入り乱れたような独特の空気が流れていた。

「体調が悪かったり、どこかを少しでもおかしく感じたのなら、勇気を持って今日の大会は辞退してください」

開会式で挨拶に立った日本ポニーベースボール協会理事長・広澤克実氏は、想像していなかった言葉を選手達に投げかけた。

「日本代表として“日の丸”を背負うという気持ちが、痛いほど伝わってきます。こういう時は無理をし過ぎて取り返しのつかないことにもなりかねない。未来がある選手達だからこそ、勇気ある決断が大事なんです」

広澤氏は明治大時代の1984年、日本代表としてLA五輪へ出場して金メダル獲得。プロ入り後はヤクルト、巨人、阪神で活躍するなど、選手の思いを深く理解している人物。自身の名前を冠した大会でも、率直な思いを投げかける姿に感銘を受けた。

「チャンスは1度だけじゃなく何回もやってくる。『今回を逃すとマズイ』と思って無理をしたことで、身体を壊してしまうこともある。人生は何があるかわからないけど、無理をしてやることで良いことは1つもないと思います」

「無理をしてプレーしても楽しくないし、野球が嫌いになってしまうこともある。野球が大好きで前向きに続けていれば上達も早いし、チャンスもやってくる。そこで結果を出せば選手としての評価も高まります」

「一生懸命プレーして今回のチャンスを掴んで欲しいが、無理は絶対にダメ」と何度も繰り返していたのが印象的だった。

ビッグNスタジアムでの開会式では、日本ポニーベースボール協会理事長・広澤克実氏が選手達に熱い言葉を送った。

~U13は未成熟なので“やる気”を高めることが重要(那須勇元・U13監督)

北海道東北、関東、東海関西、中四国、九州、沖縄の全国6地区の選抜チームが各年代ごとに構成され、リーグ戦と順位決定戦を開催。そして視察した日本代表スタッフの選考により、日本代表候補も発表された。各カテゴリーを指揮する3人の監督に、選手選考と今後のビジョンについて聞くことができた。

「ポニーの理念である『機会均等主義』から、各連盟から1人以上を選出することを考えました。もちろん“勝利”も目指すので、厳しい見方もしています」

U13を指揮するのは、那須勇元監督。昨年も同年代を指揮して『ワールドシリーズ』制覇へ導いた敏腕監督だ。「初日終了時点で選手選考は、ほぼ終わっていました」と語る。

「ミスのない日本らしい野球をやれば、自信を持って戦えるはず。派手さは求めず、走攻守で基本を大事にしている選手を選びました。選手個々の細かい情報は持っていなかったですが、試合中のプレーを見て即決した感じです」

「今の時点でレギュラーは全く白紙」と強調する。『ポニーアジア選手権』では予選リーグ2日間で全選手を起用、決勝トーナメント、そして『ワールドシリーズ』へのレギュラーを見定めるという。

「U15やU14という上のカテゴリーは、ある意味でポニーリーグの集大成です。U13は所属クラブでもトップチームでプレーしていない未成熟な選手が多い。技術的な部分ももちろんだが、まずは“やる気”にさせてあげたいです」

昨年優勝時の集合写真は、国内の野球殿堂博物館に飾られている。「世界一になれば、このチームの集合写真に差し替えられる」と選手に伝えた。「モチベーションを上げるために最もわかりやすいですから」と笑う先には、世界2連覇を見据えている。

「監督はモチベーターです」と那須勇元・U13監督。

~対応力や適応力に優れた選手達に期待をしている(瀬田利浩・U14監督)

「U14カテゴリーには“ポニーサイズ”が採用されていることを念頭に置いています」とグラウンドサイズの違いから語り始めたのは、U14の瀬田利浩監督。

普段ポニーリーグで使用するのは、成人サイズのダイヤモンド(投球間:18.47m/60.6フィート、ベース間:27.43m/90フィート)。“ポニーサイズ”(投球間:17.41m/57.1フィート、ベース間:25.84m/85フィート)は各1-2mほど短縮され、スピードや迫力を高めることに繋がる。

「バッテリー間が縮まることで、打者は投球が150キロ近くに感じるはず。どうやって対応するかをしっかりと見ました。国際試合は短期決戦なので、対応力や適応力の高い選手が実力を発揮すると思いますから」

加えて、この大会では木製バットの使用が義務付けられた。普段は金属バットを使用している選手達にとって、慣れないプレー環境への対応が試された場とも言えるだろう。

「木製バットでは、差し込まれては打ち返せないし、バットが折れることもある。詰まることを恐れて、『当てに行く』打撃だけは絶対にして欲しくない。『詰まったとしても、その後にどのように対応しようとするか?』を見ました」

投手に関しても、「対応力や適応力が重要なのは同じ」と続ける。「“ポニーサイズ”になることは有利な部分も多いが、逆に普段と異なる投球技術も必要になる」という。

「球威は普段以上に増すでしょうが、変化球の制球が難しくなる。投球が曲がる場所を“ポニーサイズ”仕様に合わせることが必要です。台湾など海外の国は真っ直ぐに強いので、変化球を駆使することが大事になります」

走攻守の全てで、普段と異なるプレー環境へアジャストする作業が重要。「U14カテゴリーが最もタフ」と言われる所以かもしれない。

「対応力、適応力が重要です」と瀬田利浩・U14監督。

~世界で勝つためには守れることが前提で、さらに打てることが重要(古澤豊 ・U15監督)

「『ワールドシリーズ』では145キロを投げる投手もいるので、基本ができる上で打てる選手を考えています」。世界レベルを踏まえての編成方針を語ってくれたのが、U15を率いる古澤豊監督だ。

「『ポニーアジア選手権』は勝たないといけないと思いますが、『ワールドシリーズ』になると全く違います。MLBスカウトが目を付けているような選手もいます。そういったチームと戦うには、失点を抑えるのは当然、打って得点を重ねないと勝機はありません」

国際試合での経験の豊富さが、ブレない編成方針を生み出している。U15のコーチ、監督として2度、U14監督で1度、『ワールドシリーズ』出場経験を持つ(U14では世界一)。またU14監督としては、昨年、一昨年と2年続けて『ポニーアジア選手権』決勝敗退という悔しさも味わった。

「日本の最大の武器である、基本に忠実な固い守備は必須。しかし『守るだけでは結果に繋がらない』ということも経験しました。『U15年代は身体が出来つつある選手も多いので、その中でいかに結果へ繋げていくか?』も問われます」

選手個々によって成長期は異なる。 U13やU14世代では主力だった選手の身体の成長が遅く、順調に伸びていない場合もある。「U15も通過点だと痛感します」と選手選考の難しさも口にする。

「目指す方向性は定まっているので迷いはありませんが、さらに重視するのが『環境への適応力が備わっているか?』です。『チームに融合できるタイプ(性格)なのか?』を確認します。試合中の振る舞いを見て、素晴らしい成績を残していても選ばない場合もあります」

多くのチームから集まった“寄せ集め集団”で戦う難しさもある。自己犠牲すら厭わないチームへの献身性が重要なファクターと考えている。「選考から外れた選手からも応援されるようなチームになれれば、結果もついてくると考えています」と強く締め括ってくれた。

打てないと世界では勝てない」と古澤豊 ・U15監督。

各年代監督それぞれに選手選考指針があるが、目指すものは変わらない。まずはアジアを制し、その先にある世界の頂点に立つことに他ならない。そして選手個々が心身共に大きく成長して、その先に広がる野球人生が豊かになることだ。

「選手選考に漏れた選手は、自分自身の姿を写真に収めてください。何かあった時に写真を見れば、今日の悔しさが蘇るはず。悔しいという思いが、必ず君達を大きく成長させてくれるはずです」(広澤氏)

日本代表候補に選出され嬉し涙を流す選手がいた。名前が呼ばれず顔を上げられない姿も見かけた。悲喜交々(ひきこもごも)の風景が見られた閉会式、広澤氏の言葉が胸に刺さった。

喜びと悔しさを忘れないことで、選手達は少しずつ成長を重ねることができる。

「選手達の野球人生は、ここからですから」(広澤氏)という言葉に間違いはない。ポニーリーガー達の今後には明るい未来が待っている。

そして“日の丸”を背負った日本代表選手達には、世界へ向けて日本野球の素晴らしさを発信してもらいたい。まずは6月の『ポニーアジア選手権』で彼らがどのような戦いを見せてくれるのかが楽しみだ。(U13、14は6/16、U15は6/22から開催)

(取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・日本ポニーベースボール協会)

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