大分トリニータ 2021年シーズン”一致団結”プロジェクト始動! 榎社長「未来のトリニータを共につくっていきたい」

2021年、Jリーグは2月26日に開幕。昨年から続く新型コロナウイルス禍での2年目のシーズンが始まった。

昨年は無観客試合や人数制限により入場料収入が大幅に減り、各クラブの経営に大きな打撃を与えた。

そんな中、J1の大分トリニータ(以降、トリニータ)は独自のクラウドファンディング企画を実施し、注目を集めた。

今シーズンも新たなクラウドファンディング企画「一致団結」プロジェクトを立ち上げ、サポーターや大分県民とともにトリニータの未来にフォーカスする。

今回、新たなプロジェクトに込めた想いなどをクラブの運営会社である、株式会社大分フットボールクラブ・榎徹社長にお話を伺った。

(取材協力 / 写真提供:大分フットボールクラブ)

2020年は「新たな挑戦の始まり」

2020年、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るい、Jリーグにおいても大きな影響を受けた。

トリニータの所属するJ1は、2月22日の第1節(対セレッソ大阪)から約4ヶ月中断。再開後も7月8日の第3節(対サンフレッチェ広島)までは無観客で行われた。

クラブの運営としても、サポーターを迎え入れられないことやスポンサーの影響等から

「この先どうなってしまうのか」と不安に苛まれる日々が続いた。

Jリーグ各クラブは自粛期間中、オンラインでできることを模索してきた。榎社長は当時を振り返った。

「この状況だからこそ、スポーツを通じてサポーターやスポンサー様と”絆”を深める方法がたくさんあるのではと考えました。スポンサー様1社1社と直接コミュニケーションを取る、選手たちはオンラインでサポーターと一緒に体を動かすなど、できることを積み重ねました。我慢の始まりと同時に、新たな挑戦の始まりでもありました」

インタビューに協力いただいた榎社長

チャレンジの証「トリボード」と「二ータンの恩返し」

榎社長が新たな始まりと語った2020年、その象徴が昨年行った「【本当に無観客!?段ボールサポーター(愛称:トリボード)でゴール裏を埋めよう!】大作戦」そして「【次は大分のために。#ニータンの恩返し!】大作戦」である。

この2つの【大作戦】は、トリニータが立ち上がり実施したクラウドファンディングのプロジェクトである。コロナ禍の状況で選手、スタッフらが「今できることは何か」互いに知恵を絞り出した。

第一弾のトリボードは、ユニフォームを着たサポーターに見立てた段ボールを観客のスタンドに設置するという企画だった。

6月13日~24日の期間中は、指原莉乃さんやお笑いコンビ・ダイノジの大谷ノブ彦さんら大分出身のタレントがSNSで告知したこともあり大きな話題に。12日間の募集で、2,810体・840万円を超える支援が集まった。

トリボードで青く染まったスタンドを見た時の心境は今でも忘れられないという。

「最初は『スタジアムが埋まるのかな?』って思いましたけれども、ホームの座席が青く埋まっているのを見て感激し、涙が出る思いでした。多くの方々が支援してくれて、改めてトリニータサポーターの熱い想いを感じましたし、選手も感じてくれたと思います」

試合は2-0で勝利。トリニータイレブンは感謝の気持ちを結果で表した。

スタジアムを青く染めた「トリボード」は選手の大きな力になった

再開初戦となった第2節、ホーム昭和電工スタジアムでのサガン鳥栖戦でお披露目となった。当日は榎社長自身もクラブスタッフと一緒に一体一体、心を込めてトリボードをスタンドに並べた。

そして、第二弾の「#二ータンの恩返し」。

トリボードを通じてサポーターの方々に支えてもらった想いに応えるべく、またコロナ禍の中で戦う医療従事者や令和2年7月豪雨によって打撃を受けた地元大分を救うべくクラブが立ち上がった。

スポンサーが提供する商品や選手のサイン入りユニフォームを返礼品として用意し、こちらは2ヶ月をかけて1,000万円を超える支援金が集まった。

クラブは支援金の一部を日本赤十字社に寄付。経済的に苦しむ大分に希望の光を照らした。

2021年は”一致団結” 新プロジェクトへ込めた想い

大盛況のうちに終えたトリニータの新たな挑戦。しかし、これらで危機を乗り越えたわけではない。

感染者数は増加傾向が続き、関西や首都圏では年明けすぐに緊急事態宣言を再発令。Jリーグは当初の予定通り2月26日に開幕したが、観客の入場を昨年に引き続き制限した。大分では入場者数の上限を50%以下に設定している。

また、運営側にとっては2021年度が前年以上にコロナ禍の影響を受けることが見えている。

昨年度、スポンサー契約はすでに済んでいたが入場料者数の激減などにより19年度比66%の減少。今年度は観客の上限設定に伴い入場料収入が通常の売上には遠く及ばないとともに、スポンサーも各社とも広告宣伝費を削減している影響でさらなる減収が予想される。

現在もユニフォームの鎖骨(左)部分と、パンツ(前面)部分のスポンサーが決まっていない。

今シーズン、鎖骨左部分にスポンサーはまだない(写真上:高木駿選手、同下:渡邉新太選手)

そこで今回はサポーターと共にもう一度、大分トリニータを創り上げていきたいとの想いを込めてクラウドファンディング「一致団結プロジェクト」を始動させる。

目標金額を5,000万に定め、期間は4月9日から5月16日までの約1か月半。集まった資金はクラブの強化費、そしてクラブハウス及びアカデミーの環境改善に向けて充てられる。

トリニータの未来を見据えたプロジェクトの開始に当たり、榎社長が想いを寄せた。

「トリニータに関わる人たちの力を結集し、『チームを共につくって行こう』という想いを感じて欲しい。このプロジェクトが今の選手、特にU-18以下の若手に向けた原資となり、未来のトリニータを作る第一歩になります」

クラウドファンディングの目標金額5,000万円を達成すると、上述のユニフォーム鎖骨(左)部分に”一致団結”ロゴを掲出し、以降のシーズンを戦う。「これまで幾多の苦労を乗り超えてきたトリニータの底力を改めて見せる機会になる」と榎社長は続ける。

「ユニフォームの鎖骨部分にロゴを入れます。(※)みんなでトリニータを支えていくんだというシンボルにしたいです。また、施設が古くなっていますので、ここを整備して選手がより一層練習に専念できる環境を作りたいと思っています。”一致団結”を胸に選手と一緒に戦う。これは将来に向けた大きな財産になると考えています」

(※)支援金額によってユニフォーム掲載箇所を変更する可能性がございます。

今回の目玉の1つが支援者全員の名前を記した横断幕の制作。3枚制作し、ホームの昭和電工ドームに掲出する。その他、クラブ公式SNSや大分合同新聞紙面へ掲載するなどして”一致団結”を県内で浸透させる。

「【みんなでつくるクラブ】を実現できる一歩だと思う。県民はじめサポーターが資金を出し合って作る象徴として、横断幕をスタジアムで早く見たいですね」と大きな期待を寄せた。

今回制作する横断幕(写真上)と新聞紙面(同下)「大分全体で盛り上がっていきたい」と榎社長も語った

注目の返礼品はサポーター必見の内容となっている。今シーズンモデルのサイン入りユニフォームや選手デザイン限定Tシャツ、そしてJ3で優勝し、逆境を乗り超える起点となった2016年当時のユニフォームも用意。トリニータの歴史を感じられるラインナップとなった。

経営危機やJ3降格、サポーターと共に這い上がる

トリニータはこれまでいくつもの危機を乗り超えてきた。2008年初のタイトルであるナビスコカップ優勝後、翌2009年にまさかのJ2降格。この年は大口スポンサーの撤退が相次ぎ、シーズン中にも関わらず経営危機問題が表面化した。

当時、榎社長は大分県の企画振興部文化スポーツ振興課長として再建の支援する立場だった。元々は自らシーズンシートを購入し、スタンドから大声で叱咤激励をしていたという熱狂的なサポーター。何とかクラブを残したいと奔走する毎日だったという。

「最初は『これは大変だ、かなり厳しいぞ…』と思いました。どうやったら多くの方に受け入れられる形にできるのか、危機を今はどうしのいでいくか。当時の社長やスタッフと考え続けていましたね」

Jリーグから6億円の融資を受け、返済に向けて県内各地に足を運んだ。県民の方々や行政機関など県全体を挙げて資金を集め、2012年に完済。チームもJ1に再昇格した。

2012年にはJリーグからの融資を完済するとともにJ1へ再昇格した

「私は当時(融資の完済時)の県の担当でした。同時にチームがJ2でプレーオフを勝ち上がってJ1に昇格した年でもありました。色々な想いが1つになって実現できたのだと思います。苦労しましたが、今となってはいい思い出です」

しかし、2015年終了時にクラブはJ3まで降格し、再度困難にぶつかった。社長に就任したのは2016年1月と、まさにどん底から這い上がろうとした年であった。

現在も指揮を執る片野坂知宏氏を監督に招聘し、1年でJ2へ昇格。その後も地道に勝利を重ねわずか2年でJ1復帰、J3降格を経験したクラブとしては初のJ1昇格となった。

2018年、3度目のJ1復帰を決めた

経営危機そしてJ3降格から這い上がり、トリニータとともに激動の日々を過ごしてきた榎社長。どんな状況でもサポーターの方たちの熱を感じていたという。

「J1からJ3に落ちるなど、エレベーターのようになっている中でも支援をし続けてくれた。本当に熱いサポーターです。J3に降格した時も『このままでは終わらないぞ』といち早く我々に意思を伝えてしてくれましたから」

トリニータのサポーターは幾度の困難を乗り超える強さ、そしてクラブへの愛情を持ち続けている証である。

支援者のみなさまへ

今シーズンは1桁以内の順位を目標、そしてさらなる高みを目指している。

最後に榎社長から大分トリニータの未来をこれから共につくり上げるサポーターのみなさまへのメッセージを紹介する。

「今回、新たなプロジェクトを行うことになりました。第3弾になるわけですが、”一致団結”ということで、みんなでチームを創っていく。そして共に戦うことを前面に押し出していこうと。

みなさまにとっても苦しい時期であることを重々承知していますが、我々と一緒に昭和電工ドームで選手着用のユニフォームにこの”一致団結”のマークを付けて一緒に戦ってほしいと思っております。ぜひ、ご協力のほど、よろしくお願いします」

同時に、選手たちに向けても「皆さまの想いを胸に刻み込み、それを感じてやってくれると信じています」とエールを寄せた。

4月9日から開始している今回の一大プロジェクト。”一致団結”の4文字がスポーツ界に旋風を巻き起こす。

(取材 / 文:白石怜平)

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