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高校3年生の野球部員に最高の「ファイナル」を。「Ligaサマーキャンプin北海道」8月2日から11日まで。

広尾晃のBaseball Diversity

このコラムでは、何度か「Liga Agresiva」について紹介してきた。高校野球の「リーグ戦」だ。

「Liga Agresiva」の特色

9月、新チームになった時期に各高校がリーグ戦を行う。ただのリーグ戦ではなく、高校野球の基準である「7日500球」より厳しい「球数制限」、「ベンチ入り選手全員出場」などの独自のルールを導入している。

さらに選手は、一般社団法人スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事(立教大学准教授)の「スポーツマンシップ講座」を受講する。

スポーツマンシップは「チームメイト」「相手選手」「審判」「ルール・競技そのもの」をリスペクトする前提で「勝利を目指す」考え方だが、Liga Agresivaは、敵味方を超えて選手同士が互いを認め合い、交流するために、試合後に両チームの選手がひざを交えて話し合う「アフターマッチファンクション」を実施している。

Liga Agresivaは、10年前に大阪で始まった。当初は数校の参加だったが、今季は34都道府県191校が参加する予定になっている。

当初、Ligaの参加校の多くは公立高校だったが、私学の指導者も共感するようになり、甲子園に出場するような強豪校も参加するようになった。

トーナメント中心の現在の高校野球では控え選手は「試合出場機会」が少なくなるが、リーグ戦に参加することで控え選手にも出場機会を与えることができる。そういうメリットもあるのだ。

2023年にはLiga 神奈川をリードしてきた森林貴彦監督率いる慶應義塾高校が、夏の甲子園で優勝した。ただ野球が強いだけでなく、優秀な野球選手、スポーツマンをはぐくむLigaの考え方が注目されているのだ。

Liga大阪での試合風景 2024年

「Ligaサマーキャンプin北海道」

このLiga Agresivaの延長線上で、昨年から「Ligaサマーキャンプin北海道」がスタートした。

これは8月に、北海道で高校3年生の野球選手を対象として共同生活しながらリーグ戦を行うというものだ。

対象となるのは、甲子園出場を目指す強豪校でレギュラーとしてプレーしたものの地方大会で敗れて甲子園には届かなかった選手、私学など部員数が多く、野球をやりたい熱意があったものの、公式戦の出場機会に恵まれなかった選手、夏の地方大会で早期に敗退し公式戦の機会が少なかった選手など。

こうした選手が、猛暑に襲われる本州以南とは「別天地」の涼しい北海道で、全員に出場機会が与えられるリーグ戦に参加する。

Liga Agresivaと共通の考え方ではあるが、大きな違いはLiga Agresivaが学校単位、チーム単位での参加なのに対して、「Ligaサマーキャンプin北海道」は「個人参加」だということだ。

北海道でのリーグ戦に参加するためには交通費を別にしても、宿泊費、食費、球場使用料などの費用を個人で負担する必要がある。

昨年の場合、約27万円の費用が掛かったが、すべて個人負担だった。

それだけに「誰でも参加できる」というものではない。それなりに「野球で生きていく」覚悟のある選手限定ということになる。

Ligaサマーキャンプin北海道 栗山町民球場 2024年

印象的だったエスコンでの最終日

昨年は、8月7日から北海道中部の栗山町の「栗山町民球場」で4チーム約60人によるリーグ戦が行われた。

「Ligaサマーキャンプin北海道」でも、Liga Agresivaと同様、一般社団法人スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事の「スポーツマンシップ講座」を受講する。

「チームメイト」「相手選手」「審判」「「ルール・競技そのもの」をリスペクトする考え方は共通だ。

気温は最高でも30度、猛暑の中試合をする内地とは「別世界」での試合となった。

各チームは6試合のリーグ戦を戦ったが、8月17日の最終日には日本ハムファイターズの本拠地であるエスコンフィールドHOKKAIDOで、リーグ戦の勝者2チームによるFinalとFinalに残れなかった2チームのPre Finalが行われた。

2023年に開場したエスコンフィールドHOKKAIDOはその美しさと、充実した施設で野球選手、ファンにあこがれのスタジアムになっているが、選手たちは本塁打を打つなどこの球場で思い切りプレーをした。

昨年の参加者の中からは、石田充冴(北星学園大附属)が巨人のドラフト4位、澁谷純希(北海道・帯広農)が日本ハムの育成2位、と2人のプロ入り選手が出た。

エスコンフィールドHOKKAIDOでのウオームアップ 2024年

しっかりした運営体制

昨年の「Ligaサマーキャンプin北海道」を取材して思ったのは、選手の出身校のレベルや経歴は様々だったが「真剣に野球をする」という考え方は共通で、練習、試合に打ち込む姿勢は極めて真摯で、総体的に「レベルが高かった」ことだ。

約27万円という決して安くはない参加費用を払って参加するからには、それなりの覚悟もいる。選手は、単に「野球を楽しむ」だけでなく「何かをつかみたい」「将来へ向けた足掛かりにしたい」という意識で参加していたように思われる。

4つのチームは、慶應義塾大学、弘前学院大の学生コーチが「コーディネーター」として選手の起用や指導を担当。サマーキャンプ全体の運営は、LIGA Agresivaに参加している高校野球の指導者や、ボランティア大学生が担当。さらに荻野忠寛氏(元ロッテ)、大引啓次氏(元オリックス、日本ハム、ヤクルト。今年1月から西武コーチ)と元プロ野球選手もアドバイスした。

こうした意識の高いスタッフによる「しっかりした運営体制」が、大きな成果につながったといえる。

エスコンフィールドHOKKAIDOでの熱戦 2024年

投手、捕手、二遊間、若干名を追加募集

2025年は8月2日から11日までの10日間の日程。使用する球場は、昨年の栗山町民球場に加えて新十津川町ピンネスタジアムでも行われる。

そして最終日の11日は昨年と同様、エスコンフィールドHOKKAIDOでFinalとPre Finalを行う。プレーオフは10日に新十津川で行う予定だ。また今年は、元中日のエースだった吉見一起氏がコーチとして参加する予定だ。

募集は3月1日から始まり、3月末でいったん締め切ったが、5月13日から投手、捕手、二遊間若干名の募集が始まっている(二遊間については現在キャンセル待ち)。

昨年、選手は2つの宿舎に分宿したが、今年は岩見沢市のホテルに全員が宿泊する。

それもあって夜は、野球の能力向上につながる話や、野球とは関係がない社会人として生きていくために必要な研修なども実施する予定だ。

10日間という限られた時間を無駄にせず「学びの時間、機会」として活用するのだ。

こうしたサマーキャンプは、アメリカでは各地で行われているが、限られた期間とはいえチーメイトとして試合に出て、生活を共にすることで、学校の同級生とは別種の「絆」も生まれる。新たな友情も芽生える。

「Ligaサマーキャンプin北海道」の参加者の募集は、夏の選手権地方大会の開催前に行われるが、参加希望者の学校が夏の甲子園への出場が決まった場合には、キャンセル料なしで参加を取り消すことができる。

最高のファイナルが待っている

これまで、多くの高校では、3年生の野球部員は、夏の地方大会の終わりが、「高校野球の終わり」になっていた。

「もっと野球がしたかった」「試合に出たかった」という思いを抱きながら引退する選手も多かったと思うが、この「Ligaサマーキャンプin北海道」は「思い切り野球をやりつくして、高校野球生活を終える」という点では、最高の舞台ではあろう。

「誰でも」とは言えないが、参加を考えるのも良いと思う。

2024プレーオフが終わって 2024年

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