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プロ野球OBクラブ 中学野球教室開催 石毛宏典氏「甲子園、その先の夢へチャレンジするお手伝いに」

3月某日、東京・八王子市の上柚木公園野球場で「東京都中体連野球部員練習会」が開催された。日本プロ野球OBクラブの主催で、この春高校に入学した132名の中学3年生(当時)が参加した。今回はその模様をお届けする。

(取材協力:大東建託株式会社、日本プロ野球OBクラブ)

元プロ野球選手4名がコーチに

「東京都中体連野球部員練習会」は、今年の4月から高校で硬式野球部に入部予定の中学3年生を対象とした野球教室。

上述の通り日本プロ野球OBクラブ(以下、プロ野球OBクラブ)が主催し、石毛宏典氏(内野:元西武-ダイエー)・川口和久氏(投手:元広島-巨人)・市川和正氏(捕手:元大洋・横浜)・秦真司氏(外野:元ヤクルト他)の4名がそれぞれのポジションでコーチを務めた。

午前と午後の2部に分かれ、午前は守備・午後は打撃と約6時間かけて行われた。

プロ野球OBクラブのコーチ陣(左から秦真司氏・市川和正氏・川口和久氏・石毛宏典氏)

チーム大東と石毛氏の縁から開催へ

チーム大東は、未来のアスリートを支援することを目的に結成された有志の団体である。2014年に結成され、52名・5団体の学生アスリートを中心に支援活動を行っている。

この練習会はチーム大東と石毛氏の縁から生まれた。チーム大東に所属する丹菊泰志氏は、東日本大震災の復興支援をしたいと考えていた。そこで取引先のスポーツ関係者に相談したところ、石毛氏と繋がった。

丹菊氏の想いを聞いた石毛氏も活動に賛同。「OBクラブとして野球を通じて盛り上げたい」と、復興支援に向けた活動の第一歩として野球教室の開催に至った。

プロ野球OBクラブは「野球に恩返し」を合言葉に、野球技術の向上や振興、そして野球を通じての青少年の育成のためさまざまな事業を展開。最近はYoutubeチャンネルやオンラインサイン会などファンとの交流企画も人気を集めている。

石毛氏も同クラブの常務理事を務めており、自身のYoutubeチャンネルでも発信するなど積極的に参加している。

プロ野球OBクラブで常務理事を務める石毛宏典氏

守備は4つのポジションで練習

石毛氏は冒頭で挨拶。

「みなさんは高校へ行って野球をやるという決断をされました。どうせやるなら、レギュラー獲って活躍して甲子園に出る。また、その先の夢にチャレンジする。我々はそのお手伝い、”おせっかい”をやりに来ました。この時間を利用して上手くなってください!」と熱く語った。

挨拶が終わった後、石毛氏の計らいでスタンドから見守っていた保護者の方たちをグラウンドに招待した。9時過ぎにウォーミングアップを開始。秦コーチが指揮をとり約30分間身体を動かした。

「声がリズムをつくる」石毛コーチのゲキ

その後内野・外野・捕手・投手と4班に分かれ、各コーチによる指導が開始。内野では、50人を超える生徒が適度に距離を取りながら石毛コーチを囲む。

キャッチボールへ入る前には「投げるときは親指を下。それを意識してやろう」と呼びかけ。自ら投げる形を繰り返し見せることで、全員に伝わるようイメージ付けをした。

次に内野手の動作。初めに大きく腰を落とし、まずは捕球体制から。「内股になると(膝が)動かせない」と、ゴロを捕球する際の動作の入りを体で覚え込ませる。

捕球体制について説明する石毛コーチ

1つ1つ動きを区切って説明したあとはノックで送球までの一連の流れを確認。ここでも自ら手本を見せ、現役時代を彷彿とさせる軽快な動きを披露した。

「流れの中でやらない。自分で意識をしっかり持て!」
「声がリズムを作る、リズムが形となっていく、形が技術となる。だから声を出そう!」

とグラウンド全体に響き渡る声でゲキを飛ばしながら、熱血指導が約2時間続いた。

外野はボールを受ける数をこなす

外野も40人近く生徒が集まった。秦コーチの指示で、フライを追う練習から開始。2人1組で、それぞれ真上に投げ、一度回転してから捕球をする。「ボールを探してから捕る!」「送球の(動作につなげる)ための捕球だぞ!」と練習の意味を投げかけながら反復した。

途中で止めながら動作の解説を加え、生徒たちは熱心に耳を傾けていた。

捕球練習が終わると秦コーチ自らノックバットを握る。

「動きの時に(投げる手の)右手を近くに持っていくと動きが遅くなるから!」
「(ゴロを)捕る時は右手と左手は離して。あと体の真ん中でボールを取りに行く意識で!」

その場で大きな声で指摘し、フライとゴロを織り交ぜながら30分以上ノンストップで打ち込んだ。

外野ノックを打つ秦真司コーチ

捕手は3つのテーマを設定

捕手は市川コーチが「キャッチング」・「フットワーク」・「スローイング」の3つをテーマを最初に伝える。ポジション別では最も少ない9人の生徒たちに向けて、自身が培った技術を惜しみなく伝授。

「最初は構え。必ず投手に正体する」
「右足の位置は3種類『右足が後ろ』『両足並行』『左足が少し前』君はどっち?」

と1人ずつ確認し、生徒の動きに合わせて捕球から送球まで一連の動作を説明した。

1人1人の特徴を引き出す市川コーチ

盗塁を刺すための送球練習では、足の動きを中心に動作を確認。

「やってはいけないのは投げる時に右足を後ろに引くことだぞ!」

その後は捕手陣全員ブルペンに向かい、投手の球を受ける様子もじっくりと観察した。

盗塁を刺す際のスローイング練習では投手役を務めた

投手はブルペンでの個別指導

キャッチボールが終わると投手陣はブルペンへ。川口コーチが真横で投球フォームをチェックする。

「全体重を軸足に乗せて。ここだけ意識すればストライク入るから」
「スケートをするように体重移動してごらん」「右サイド意識して!」

フォームや考え方なども教えた川口コーチ

プロでも巨人で4年間(2011年〜2014年)一軍投手総合コーチを務めるなど、指導経験も豊富な川口コーチ。1球投げるごとに送られる的確なアドバイスに生徒たちは真剣な眼差しで吸収しようと心がけた。

直後にストライクが投げ込まれ、捕球音がミットから響くと

「その通り!よくできた!それを体の感覚で覚えるように」
「下半身で投げている実感あるでしょ?」

と生徒たちは大きく頷き、次の球を早く投げたいのが伝わるほど気持ちが高ぶっていく様子が見られた。

球で大きな変化が見られ、「いいぞ!」という声を何度も聞くことができた

12時半頃に午前の部は終了。昼休憩でそれぞれが戻る中、外野では1人の生徒が秦コーチの元へ。外野守備の動作について質問し、約15分間貴重なマンツーマン指導が行われていた。

午後はバッティング講座とティー打撃

13時過ぎ、後編はバッティング教室がメイン。投手陣は川口コーチ、捕手陣は市川コーチと別メニューで練習、野手は石毛コーチのもとに集まり講義から始まった。

プロ通算1833安打を記録した石毛コーチ。バッティングにおいては、”タイミング”と”正確性”が重要と強調した。

ここでの正確性とは、バットの芯へより正確にコンタクトするという意味。加えて最も力が入るポイントとして、釘を打つ動作に例え「(釘を打つときは)体の中で肘を支点に叩く。バッティングでも一緒」と実演しながら解説した。

例えを用いながら解説する石毛コーチ

また、下半身の使い方においては軸足について説明する。往年の名打者を例に挙げ、大事なポイントを伝えた。

「軸足は必要以上に曲げてはいけない。力を溜める足じゃない。日本の野球界で一番軸足が曲がらないバッターは王貞治さん。(一本足打法の構えを見せながら)左足の軸足は曲がらないです。イチローさんの日本時代もそう。いいバッターは軸足は曲がらない。力を溜め過ぎちゃうと前に体重移動ができなくなり、差し込まれます」

講義が終わると、3箇所はネットに向けてティーバッティング・4箇所は外野へのロングティーの計7箇所に分かれる。バッテリー陣も各ポジションでの練習が終わると合流し、ひたすらバットを振り込んだ。

ここでは秦コーチも加わり、1球1球声をかける。終わった後も気づいた点についてアドバイスを送り続けた。

守備に続き、1人1人丁寧に指導する秦コーチ

2時間近く続いた打撃練習は15時前に一旦終了したが、まだ数名打ち終わっていない生徒がいた。閉会式後に石毛コーチがそれを知ると、コーチ陣でスタッフや球場関係者に呼びかけ再度ネットを置いた。全員が打てるように配慮するとともに、時間いっぱいまで熱い指導が続いた。

今後は全国に展開を

閉会式では川口コーチが挨拶。

「今日の野球教室で教わったことをヒントにこれから野球を続け、なおかつ勉強も続けてやっていってください。野球も(大東建託にかけて)家も土台が大事です。しっかりと土台づくりをしてください。ただ、土台づくりも簡単ではないです。

コーチの皆さんも僕も完成して辞めたわけじゃない。できなくて悔しくて辞めたんだけど、でもそれなりの数字を残した。みなさんはこれから厳しい高校野球の世界に入っていきますが、ここで教わったことを心の支えにして練習に励んでください」とエールを送った。

閉会式で生徒たちにメッセージを送った川口コーチ

当時は翌月に高校入学を控えた中学3年生。昨年夏に部活動を引退して以来、久々にユニフォームを着た生徒も多くいた。

野球教室の感想を聞くとボールが重く感じたと言いながら「今まで聞いたことがなかった」「常識が覆った」などと語り、久々にグラウンドで野球ができたという充実感に溢れていた。

今回コーチを務めた石毛氏は、「子供達の目が途中から変わりだした。その熱に応えるべく指導させて頂いた。野球は、スポーツは生きていくうえで大切なことを教えてくれる。できる限り長く続けてほしい」と語った。

現在も新型コロナウイルス感染拡大の影響で活動は社会情勢を考慮しながらになるが、今後も野球界の未来を担う少年たちのため、全国に活動を展開していく予定である。プロ野球を盛り上げたOBたちも野球への情熱はまだまだ衰えることはない。

(取材 / 文:白石怜平)

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