激戦区で指導に励むエボルテサッカースクール 一人一人に寄り添い目指すはプロ選手の輩出
国内で480万人の競技人口を誇るサッカーはJリーグやスクールなど、様々なビジネス様式を展開している。
様々な団体が地域に根ざした活動を行い、サッカーの普及と育成を同時進行させており、少子化と叫ばれている現在もその流れは変わらない。
とりわけ人口が多い首都圏は競争が激しく、各団体で特色を出しながら活動をしなければならない。その中でさいたま市大宮、富士見市、東京都目黒区を拠点とするエボルテサッカースクールは一人一人の子どもたちに寄り添った指導を徹底している。
サッカー一筋の青年が育成にやりがいを感じた出会いとは?
スクールの代表は26歳の辻本拳也氏。神戸市で生まれ、直後に富士見市に転居した辻本氏がサッカーを始めたのは幼稚園時。「通っていた幼稚園にサッカークラブがあり、友達に誘われて始めました」とその出会いはごくごく自然なものだった。
サッカー一筋の人生で最初の転機になったのは高校入学時。元々部活動でプレーを続けていこうと思っていたが、仮入部時にケガをしてそのまま部には入らず、東京のクラブチームでプレーした。こうした経験もあり、漠然と「サッカーに携わる仕事をしたい」と考えていたという。
その後大学では「将来はJリーグクラブのスタッフになりたい」とスポーツビジネスを専攻。その傍ら、約1年サッカースクールでアルバイトをした後、SNSで自信の考えを発信することは好きだったことから、大学3年の冬にはライター業にも挑戦する。
「サッカーに携わる」という芯はぶれないものの「何が自分に合っているかをいろんなことをやっていく中で知りたいと思っていました」と当時を振り返る。
このライター業で二度目の転機が訪れる。
U-12世代を対象に開催されている国際大会・ダノンネーションズカップに取材に行った際、スクールのアルバイト時に教えていた子供と再会をしたのだ。
「アルバイトとはいえ自分が関わっていた子どもが全国大会に出ている。そうした姿を見てやりがいを感じ、『もう一度指導者になりたい』と思うようになりました」と指導者になることを決意した。
内定を辞退してまで手に入れたかったスキルと思い
しかし新卒で起業も苦しい時期も経験
辻本氏はすぐさま行動に移し、ライター業を続けながら再びサッカースクールのアルバイトを開始。
しかし今回はいわゆる集団スクールではなく、個人指導をメインにしたスクールに携わることになった。
集団に比べ、個人指導は各個人の特徴に合った細かい指導が求められ、子どもたちや保護者からのフィードバックがダイレクトかつより具体的な内容に。
辻本氏自身にとっても指導の課題が明確になった一方で自信を得られやすくなった。
ここでさらにやりがいを感じた辻本氏。内定が出ていた会社を卒業の直前に辞退し、「大学で学んだビジネス学が生かせる」と両親の反対を押し切り、自らスクールを立ち上げたのだ。
「起業の一般的なルートは正社員を経てから。でも周りに経験者が多く、セミナーにも出席していてその方々が背中を押してくれました。若いうちに失敗をしたほうがいいし、正社員になると副業を含め他のことができない。得られるスキルが限られてくるし、若いうちにいろんなチャレンジをして失敗を早いうちにした方が良いと言われました」と多くの後押しがあった中での挑戦だった。
しかしツテや社会経験がなく、そもそもどのようにPRをすれば良いか分からない。
スクールを立ち上げたはいいものの、「プロ選手ではなく実績もなかったので、集客は苦戦しました。新規入会が決まるまでに半年かかりました」と振り返る。
ライター業や内定を辞退した企業で契約社員として勤めていたため、何とか収入はあったものの苦しい状況が続いた。
それでも学生時代に個人指導をしていた子どもが移ったり、PR活動が集客につながったりと年々入会者は増加。細かな指導が好評となり、現在は80名の子どもたちがスクール通っている。
一人一人にあった指導法を展開
現在展開している3校はどれも集団指導のスクールだが、地域に合わせたコンセプトでそれぞれ運営している。
富士見市のスクールは地元にサッカーを根付かせ、普及する目的で初心者でも通える初心者向けとなっている。
「サッカーが盛んな大宮と比較的盛んな目黒区では経験者を対象とし、育成に力を入れています」と辻本氏は語った。
入会のきっかけもそれぞれで、集団ではチームメイト同士の口コミ、個人レッスンは「他の選手より差をつけたい」「もっとスキルを伸ばしたい」という思いで入会しているケースが大半で、95%がホームページからの問い合わせだ。
集団指導の3校と個人、グループレッスンともに丁寧で細かく、分かりやすい指導が評判で、楽しみながら上手くなることができるため、そこに魅力を感じて通う子どもが多い。
少人数に対しての指導は子どもたちに目が行き届きやすくなり、それぞれの得手不得手、性格などが分かりやすくなる。子どもたちも不得意なスキルを重点的に克服することができ、これは集団スクールでは取り組めないことだ。
こうした背景もあり、様々な思いを持って子どもたちはスクールに通っているが、辻本氏が大切にしているのは一人一人に寄り添うこと。
「レベルや性格、癖、家庭環境も違う中で、いろんなところから来てくださっているので一人一人に合わせた指導をする。子どものレベルを見て、マッチングする相手を考えたり、言葉遣いを変えたりすることは心掛けています」と辻本氏。集団でも個人でもその方針は変わらず、年に2回の個人評価票の導入や個の育成、人間力の形成に力を注いでいる。
その先にあるのは、プロ選手の輩出だ。通っている子どもたちの多くがプロ選手を夢見ており、目標実現のためにトータルサポートに取り組んでいる。
少人数での指導では保護者からサッカーのスキル以外の問い合わせも多く、トレーナーや栄養士と連携しフィジカルや栄養面、メンタル面もサポート。この取り組みはオンラインでも実施しており、スクールに通っていない遠方からの入会者もいる。また元Jリーガーで北朝鮮代表としてもプレーしたアン・ヨンハ氏のサッカー教室も開催予定だ。
開校して僅か3年で、徹底した細かい指導を確立したエボルテサッカースクール。
今後の展望として辻本氏は「激戦区ではありますが、サッカー王国といえば静岡と埼玉と言われる方が多い中、サッカー人口が多いところもあれば富士見市のように盛んでない地域もあります。埼玉県内でもっとスクールを展開していきたい」と見据えている。
普及と育成の両輪でさらなる拡大を目指すエボルテサッカースクールの未来が楽しみだ。