大手企業社員による異例のYoutube配信 サイソンKAZUYAが切り開く営業の新境地
大手クレジットカードの営業マンが会社に在籍しながらYoutuberに!?
新型コロナウイルスの影響で様々な業種が営業形態を変えている中、クレジットカード会社もショッピングモールなどの施設の対面営業のみならず、非対面営業も進めている。
クレジットカード大手のクレディセゾンでは、いち早くデジタルに方針転換。中でもサイソンKAZUYA氏がインタビュアーとなり著名人と対談するチャンネルが好評だ。
しかし内容は著名人の裏話や内面に迫るもので、チャンネルの中ではカードの営業は全くしていない。当然サイソン氏の狙いがあるのだが、サイソン氏のこれまでの経歴や思いも影響している。
ちなみに「サイソン」はクレディセゾンのローマ字表記「SAISON」をカナ読みしたものである。
説得力のある体育教師になるためクレディセゾンに入社
サイソン氏は1986年に千葉県船橋市で生まれた。小学生のときから野球に没頭し、高校時代の最高成績は県ベスト4。「ずっと野球をしていて、勉強は全くしていませんでした」とサイソン氏は笑う。
その後日本体育大学の進学を目指したが、野球に没頭していたためか勉強が苦手で二浪してしまう。「日体大以外にも体育大学はありますが、魅力的に見えたのは日体大だけでした。体育大学のトップと感じていて、何としてでも進学したかったんです」
こうしたブレない思いを胸に、2年間勉強に励み晴れて日体大に進学。しかし、「勉強はせず、筋トレばかりしていましたね」とサイソン氏は振り返る。それでも大学4年時には将来の選択を迫られており、夢であった体育教師になるのか一般企業に進むのか悩んでいた。
2年間日体大進学を諦めなかったことを含め、自ら決めたことに対して異常なまでの執念を持っていたサイソン氏。当然体育教師の夢も持ち続けていたが、「教員の免許を持っていれば一般企業に入った後でも教員になることはできる。『社会に出たら』と一般企業を経験していない教師に言われても全く説得力がないと思うんです」といずれは体育教師になるつもりで、アルバイトしていたスポーツショップでお客様におすすめするカード入会の営業成績がよかったことから、スカウトを受けたクレディセゾンに入社することになった。
Youtubeを通した著名人との対談 会社のブランディングと自身のPRを狙う
クレディセゾンに入社したものの、「いずれは教員へ」の思いは持ち続けていた。しかし入社1年目から社内一の成績を残したり、会社から表彰を受けたりと「自分に向いている天職だと感じました」とサイソン氏。その後も好成績を収め、「会社のために」と愛社精神が高まっていった。
クレディセゾン自体はというと、かつて日本一の会員数を誇っていたが現在はその座を他社に明け渡している。そうした状況を何とか変えようと会社は積極的に社員の意見を吸い上げる取り組みを行っており、「SWITCH SAISON」という社員が半年に1回、新事業を提案する機会を設けた。そこでサイソン氏はYoutubeチャンネルの開設を2020年に提案したのである。
「コロナが流行り始めた当初、セゾンのプラチナカードで納税ができることを税理士とタッグを組みYoutubeで配信しました。それが好評だったんです」と会社への提案前に確かな自信を得ていた。
しかし当時は世間的にYoutubeへの理解は低く、会社からの評価もイマイチ。賛否両論ある中でサイソン氏は、「会社の利益が取れる」と説得し、プレゼンを経て企画が採用された。
ただし会社には「カードの営業をする」ことをプレゼンしたにも関わらず、サイソン氏が運営するチャンネルの実態は著名人との対談だ。
その狙いは、会社のブランディングとサイソンKAZUYAという一人の人間に興味を持ってもらうため。元々スポーツ選手や芸能人、タレント、経営者など著名人を顧客に持っていたサイソン氏。営業時はクレジットカードの内容はもちろんのこと、著名人ならではの苦労話やプライベートな話など、興味深い話ばかりを聞くことができた。
そこで「これは一人で聞くのはもったいない。僕だからこそ聞ける貴重な話を発信したい」と著名人にスポットライトを当て、対談形式の内容になっている。
一見、カード会社の営業という点では遠回りに見える方法だが、先述した通り現在はクレジットカードの営業の形態は変わってきている。対面での営業が難しいからこそ、会社自体に興味を持ってもらう必要があるのだ。クレジットカード会社の社員が会社公認で事業としてYoutubeを配信すること、そしてカードのサービス内容ではなく著名人との対談という内容はクレディセゾンとしては画期的な取り組みだ。
「会社のブランディングと『サイソンKAZUYAって面白いな』という部分にスポットを当てて、『クレディセゾンは面白い会社』だと思われるための動画にしました」。
執念とスーパーポジティブな性格で 事業を軌道に乗せる
2020年12月18日にチャンネルを立ち上げ動画配信を開始したが、配信前は決して良い反応ばかりではなかった。企業にとって海のものとも山のものともつかないYoutubeに「本当に大丈夫なのか」という声がサイソン氏の耳にも届いていた。
しかし学生時代からやると決めたことは、執念でやり抜いてきた。さらに自分自身を「スーパーポジティブ」と評する性格で、そうした雑音は一切気にならなかった。むしろ「見てろよ。絶対に結果を出してやる」とサイソン氏の心に火を点けることになった。
配信を始めて1年、30人以上の著名人と対談。内容や対象者によって数の違いはあるものの、再生回数は1万回を超えるものが多い。
肝心のカードの契約状況はと言うと、「今期、上司の役員と、『3月までに契約を1,000件獲得します』と約束しています。勿論、達成出来ます」とのことだ。そして当初はYoutubeに懐疑的だった会社からは「早くYoutubeの支社を作って欲しい」との声も上がっており、「モチベーションが上がっています」とサイソン氏。
こうした取り組みを通し、サイソン氏は学生にも動画に興味を持ってもらいたいという。愛社精神が強いサイソン氏にとって、クレディセゾンをクレジットカード会社の日本一に押し上げることに加えて、将来の会社を背負う人材も育てていきたいと考えている。
「クレディセゾンは意見を言いやすい会社です。『自分で会社を変えたい』『自分は会社をこうしたい』という人が挑戦しやすい風土があります。 私の記事やYoutubeを見てクレディセゾンがそういう会社だということを一人でも多くの人に知っていただけたらうれしいです」。
さらには「僕も右も左も分からないままYoutubeに挑戦しています。その姿を見て勇気を与えたり、背中を押したりできれば」とサイソン氏は言う。今後も様々な展開を予定しており、社運を賭けた挑戦はこれからも続く。