アンダーアーマー キッズデー 「子どもたちに特別な体験の場を提供したい」喜田剛氏のアイデアと抱く使命感

4/30(土)、Bリーグ第35節 ブレックスアリーナ宇都宮で行われた宇都宮ブレックス vs 千葉ジェッツの試合。この日は「アンダーアーマー キッズデー」と題したイベントが開催された。

小学校3〜5年生と保護者の10組20名を対象に、試合前にアリーナを1周しながら試合の準備に向けた仕事を体験や見学をし、試合後には選手へのインタビューも行われた。

今回はこのイベントなどについて、企画運営に携わった株式会社ドームでアンダーアーマーのマーケティングを担当する喜田剛氏のお話も交えながら紹介する。

(取材協力:アンダーアーマー 、文:白石怜平 以降、一部除き敬称略)

「子どもたちの感性を育みたい」喜田剛氏の発案から生まれたイベント

近年、アンダーアーマーはバスケットボールに力を入れている。NBAのスタープレイヤーであるステフィン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ)とコラボした”カリーブランド”を展開したり、現役Bリーガーを交えたイベントを行ってきた。

宇都宮ブレックスそして千葉ジェッツ2クラブの2021-2022シーズンにおいて、ステフィン・カリーの名を冠した「カリーシート」をホームゲームで設置。Bリーグの公式戦に子どもたちを無料で招待している。

昨年夏にはBリーグの契約選手に協力いただきオンライントークライブを開催し、子どもたちに向けて”夢”について語り合った。

そして今回の「アンダーアーマー キッズデー」は体験型のイベントとして企画された。プロバスケットボールの試合運営を行う過程を通じ新たな体験を積むことで、子どもたちの様々な感性を育みたいという願いが込められている。

これら施策はいずれも喜田の提案により実現したものである。喜田はかつて広島東洋カープなどで活躍した元プロ野球選手。現在は株式会社ドームでコンシューマー マーケティング部 エンゲージメントチームのチームリーダーを務めている。

いずれも共通するのは、子どもたちに向けた企画なことである。その意図を喜田はこう語った。

事前のインタビューで語る喜田剛チームリーダー

​​「2020年の秋にバスケットボールのマーケティング担当になり、その最初の仕事がカリーブランドのローンチという大役でした。これから創るカリーブランドとは何か・そしてカリー選手本人の想いなどを勉強しました。

その中で心に響いたのが、ブランドコンセプトである『世界中の若者たちが平等にスポーツを楽しむ機会を創出する』です。カリー選手の想いを次世代を担う子どもたちに伝えていく。日本では私が担当なので、それを伝えていくという使命感を持った中でアイディアを出しました」

今回のアンダーアーマーキッズデーもその”使命感”に基づいて生まれたイベントだった。

「スポーツを好きになりプレーするきっかけに」

本イベントは、2月ごろから構想が始まっていた。これまでは毎年1回、試合の冠スポンサーを務めており『アンダーアーマースペシャルマッチ』として開催されていた。喜田はさらに発展させようと考えていた。

「カリーシートの関係で、年間を通じて宇都宮ブレックスさまとはやりとりさせていただいていました。約3ヶ月前に『子どもたちに何か特別な体験の場を提供できませんか』とご相談しました。

キッザニア甲子園(兵庫県西宮市)なども参考に、観戦以外にも球団職員のお仕事や試合運営に携わる体験を提供できたら面白いのではと考え、そこから始まりました」

喜田と球団の考えが一致し、開催に向けてすぐに話が進んでいく。しかし、提案を行った今年序盤は新型コロナウイルスが再度感染拡大したタイミングであった。

その間に公式戦も中止となり流動的な対応を迫られながらも、企画の進捗を止めることはしなかった。

「子どもたちも『選手を間近で見たい』『近くでサポートをしたい』といった体験をしたいのではないかと思います。ただ、何より優先すべきなのは選手がベストコンディションで試合を行うことです。球団や現場の方たちと何度もすり合わせをして、どこに落としどころを見つけるかを話し合いました」

そして企画は固まっていき、3月下旬には正式発表するまでに至った。

「参加してくれる子どもたちにとって特別な思い出になることは大前提です。さまざまな側面からスポーツを好きになって、プレーする子どもたちが増えてほしいと願っています」

と事前の取材では開催に向けて想いを語っていた。

宇都宮ブレックスの小野順一広報(写真左)が説明し、喜田(写真右上)らが見守る

アリーナを回り、さまざまな仕事を実際に体験

今回イベントに参加したのは、アンダーアーマー公式サイトにて応募し、抽選で選ばれた小学校3〜5年生と保護者の10組20名。

宇都宮ブレックスの小野順一広報・アンダーアーマーのスタッフと共にアリーナの中やコートを回る。それぞれの担当者からレクチャーを受け、実際に体験を重ねていった。

中でも子どもたちの興味を最も引いたのは、演出を操作するエリア。Bリーグにおけるアリーナ演出は代名詞とも言える。

各球団が創り出す非日常的な空間はアリーナ全体を一つにし、選手の力をさらに引き出す源となっている。ここでは実際に音や照明・映像などを流し、演出が行われる過程を子どもたちも体感した。

演出が行われる様子を見学

「一番印象に残ったのは演出の操作をしているところです。テレビで見るよりも迫力がありました」

終了後、子どもたちに感想を聞くといずれもこのようなコメントを寄せていた。

続いて体験したのはモッパー。各クオーターやタイムアウト間にモップをかけ、コートを綺麗に保つ重要な役目である。

球団スタッフはここで工夫を凝らし、子どもたちが楽しめるようにゲーム形式にすることを提案。2つのグループに分かれ、モップをバトンのように繋ぐリレーでお互いにレースで競い合った。

徐々に子どもたちのテンションも上がり、コースは向かいのゴール付近まで延長され活気が溢れた。

”ゲーム形式”でモッパー体験を行う

その間、2人が”広報担当”としてその様子をカメラやスマートフォンで写真や動画を撮影。スタッフと撮影スポットに移動し、左右両サイドからシャッターを押す。撮影した写真は実際にクラブの公式SNSでも活用された。

12:45にアリーナが開場するとチームカラーの黄色のウェアを着たファンの方たちが続々と入っていく。ここで、子どもたちは各ブロックに1人ずつ立ち、当日配布する冊子を1人1人に手渡した。

最後の仕事はお客様のお出迎え。配布物を直接渡した

一通りの仕事を全て終えた後、15:05にいよいよ試合が始まる。この日の来場者数は3,923名。当日時点でのシーズン最多の観客動員を記録し、演出に加え手拍子の迫力も増した。

試合は、ブレックスの勝利まで残り10秒まで来た最終盤に逆転の3ポイントシュートを決められ、74−71と敗れ、惜しくも勝利には届かなかった。

試合後は選手へのインタビュー

試合後にはまだ余韻が残るコートに再び降りて選手たちへのインタビュー。この試合15得点をマークした鵤(いかるが)誠司選手と荒谷裕秀選手がゲストとして登場した。

子どもたちは憧れの選手たちを前に、緊張の面持ちを見せながらも

「バスケを始めたきっかけは?」
「今まで出場した試合で一番印象に残っている試合と選手は?」

などと選手たちについて聞いたり、

「ポジションはPGなのですが、鵤選手のようなパスを出すにはどんな練習をすればいいですか」
「ボール運びを任されているのですが、何かコツはありますか?」

といった技術の質問も投げかけた。質問を終えると、両選手から子どもたちへメッセージを贈る。

緊張しながらも選手にインタビューする

「今日のいろいろな体験を通じて、バスケットボールをさらに好きになってほしいと思います。バスケットボールが楽しい・好きという気持ちがどんどん上手くさせてくれます。僕たちも努力して頑張り続けるので皆さんも頑張り続けてください」(鵤)

「今日多くのお客さんが来てくれた中でいろいろな体験ができたと思います。自分たちもみんなにバスケットボールが楽しいと思ってもらえるプレーをしたいと思うので、皆さんもこれからバスケットボールを楽しんでプレーしていってください」(荒谷)

メッセージを贈る(左から)鵤選手と荒谷選手

そして最後にブレックスから子どもたちへサイン入りTシャツのサプライズプレゼントが贈られた。

無事に全プログラムを終え、喜田はイベントを振り返る。

「子どもたちはすごく楽しそうに取り組んでいましたし、真剣に仕事をしている表情も見ることができました。1日を通して子ども同士も友達になっていましたね。あとは何より球団のご協力がありました。最初はモッパー体験も1往復だったのをゲーム形式にしていただいたり、演出の操作エリアにも案内していただき本当に感謝です」

アンダーアーマー キッズデーで伝えたいことはバスケットボールやスポーツを好きになってほしいこと以外にも大きな意図が込められている。

「裏方さんがどんな仕事をしているか、裏方さんが事前の準備をしてくれることで輝ける場所がつくられるという気づきを与えられたと思います。次回やる際にこれを上回るのはかなりハードルが上がりましたね(笑)」

喜田は充実感に満ちた表情と次への覚悟も込めて締めた。次回、喜田にどんなアイデアが生まれ、スポーツ界を盛り上げてくれるのか。これからも要注目である。

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