なぜBリーグだけがSNSマーケティング」で成果を出せるのか?

近年、プロスポーツのビジネスにおいても「SNSを活用してマーケティングを行う」という取り組みが活発になってきました。

その中でも、特に成果を上げているのがB.LEAGUE(以下Bリーグ)です。

Bリーグは、2016年に新しい日本の男子プロバスケットボールリーグとして誕生しました。

スタートから4年が経過した2020年時点で、プロ野球、Jリーグに次いでのプロスポーツリーグとして、高い人気、知名度を誇るリーグとなりました。

選手のレベルも上がり、海外のリーグに挑戦する日本人選手が増えたり、日本代表が2006年大会以来のオリンピック出場を決めるなど、ここ数年で日本のバスケットボールが大きく盛り上がってきています。

今回は、Bリーグが創設から数年で、ここまで注目される要因となった、BリーグのSNSを使ったマーケティングについて考えてみたいと思います!この記事で学べること

 「みる」スポーツビジネスの移り変わりがわかる

✔ スポーツビジネスに「SNS」が重要になってきていることがわかる

✔ 「Bリーグ」がSNSを上手く活用できる理由や事例がわかる

もくじ

  • 1 これまでのプロスポーツビジネスの歴史をざっとおさらい
  • 2 プロスポーツにおけるSNSマーケティングの必要性
  • 3 B.LEAGUEが狙ったターゲット層
    • 3.1 プロリーグの人気に対して競技人口が多い
    • 3.2 他のスポーツよりも女子競技人口が多い
  • 4 徹底したリサーチから出た結論
  • 5 SNSを使ったマーケティング事例
    • 5.1 オールスター投票をSNSで実施
    • 5.2 MVPの投票をSNSで実施
  • 6 チーム・選手とファンが近い関係
  • 7 【まとめ】 B.LEAGUEのSNS戦略はスポーツマーケティングのモデルになる

これまでのプロスポーツビジネスの歴史をざっとおさらい

プロスポーツである以上、収益を生み出さなければリーグ運営やクラブ活動を継続することができません。

では、プロスポーツには、どのような収益源があるのか考えてみましょう。

✔ チケット収入

✔ スポンサー収入

✔ 放送権収入

✔ マーチャンダイジング(グッズなど)

プロスポーツビジネスの4つの収入源

主にこの4つが挙げられます。

では、この4つ中で、どれが一番重要かわかりますか?

答えは、、、

全て」です。

当然と言えば当然ですね。

しかし、数十年前のプロスポーツでは、「放送権収入」が最も重要視されていました。プロスポーツがメディアに愛される理由

今では信じられないかもしれませんが、20年程前のテレビ(地上波)では、毎日のようにプロ野球が放送されており、いわゆる「ゴールデン」と呼ばれる時間帯(19時~21時頃)に、プロ野球やJリーグが放送されていることが当たり前でした。

テレビで放送されることによってファンが増え、実際にスタジアムに足を運ぶ人が増え、チケット収入が増加する。

入場者が増えれば、自然とグッズや飲食などの収入も増える、という構造でした。

だから昔は、「人気のあるチーム=強いチーム」という構造が成り立っていたのです。

特に、プロ野球の「巨人戦」では、「1試合1億円」という放送権収入が得られると言われていました。「巨人」というのは「東京読売ジャイアンツ」のことです。

したがって、どのプロ野球チームも「自分のチーム vs 巨人」の試合を、どれだけテレビで放送してもらえるかが、とても大事だったわけです。

しかし、その後は「衛星放送」が発達して段々と「テレビ(地上波)」でプロ野球中継が放送されることが少なくなり、現在では「インターネット」や「スマートフォン」が普及したおかげで、アプリなどでスポーツの試合を観ることができるようになり、「テレビ」を見ない人が増えました。

スポーツの結果はリアルタイムで調べられるし、スマホがあれば外出先でもアプリで試合を観戦することができます。

チケットやグッズも、スマホ1台で買えるし、好きな選手やチームの情報は調べようと思えばいくらでも調べることが可能です。

プロスポーツにおけるSNSマーケティングの必要性

そこで重要になってくるのが、SNSマーケティングになります。

なぜならば、SNSはファンと直接繋がることができるツールだからです。

スポーツ選手というのは、どこか雲の上の存在のようなイメージがありましたが、現在ではSNSを通じて気軽に直接やり取りすることができるし、選手自身もプライベートをSNSで投稿するなど、ファンと近い存在になりつつあります。

つまり「親近感」を持ってもらえるわけです。

Bリーグが注目したのは、まさにこの親近感でした。

また、これまでのプロスポーツビジネスでは、試合の内容や結果、練習の様子、選手のインタビュー、クラブがファンに届けたいお知らせなどを、「テレビ局」や「新聞社」などを介してファンに届けるしかありませんでした。

しかし、「インターネット」や「スマートフォン」が普及し、SNSが爆発的に広がった現在においては、クラブや選手は「テレビ」や「新聞」などを利用しなくても、「SNS」を使って自分たちの伝えたいことを自由に伝えることができるようになりました。

しかも、ほとんど「無料」に近い値段で、です。

だからこそ、Bリーグは「SNSマーケティング」を戦略的に進めることで、スタートから数年で一気に人気スポーツリーグの仲間入りを果たしたのです。

B.LEAGUEが狙ったターゲット層

Bリーグのマーケティング戦略を語る上で、欠かすことのできない会社の存在があります。それが「B.MARKETING(ビーマーケティング)株式会社」です。

Bリーグと日本バスケットボール協会(JBA)からの権益で運営されている「ビーマケーティング」は、Bリーグのマーケティングの全般を請け負っている会社となります。

Bリーグとビーマーケティングは、観戦者のリサーチを行ったことで、2つの特徴を掴みました。スポーツマーケティングは「相手の気持ちを考えること」

プロリーグの人気に対して競技人口が多い

まず、旧リーグ時代の年間観戦者数に対して、日本でのバスケットボールのプレー人口は圧倒的に多いということです。

つまり、「バスケットボールをプレーする人は多いのに、プロの試合を観戦する人は少ない」ということです。

日本でのバスケットボールのプレー人口は、「笹川スポーツ財団」が発表した、「中央競技団体現況調査2018」によると、「約60万人」と言われています。

これは、サッカーが「約90万人」ということを考えると、相当多い数字になっています。

他のスポーツよりも女子競技人口が多い

バスケットボールのプレー人口が多い理由とも直結するのですが、バスケットボールは女性のプレー人口が多いという特徴があります。

60万人のプレー人口にうち、20万人は女性であり、この数字はバレーボールよりも多くなっています。

高校生の女子に聞いた話ですが、学校で一番盛り上がるスポーツは「バスケットボール」だと言っていました。

以上のことから、 Bリーグはターゲットを「若者と女性」に設定し、ターゲットに届けるための術として、SNSを活用するマーケティング施策を実行したのです。

徹底したリサーチから出た結論

さらにBリーグは、徹底したリサーチを行いました。

Bリーグの観戦者にアンケートを取ると、野球が「一人での観戦」、サッカーが「カップルでの観戦」が多いのに対し、バスケは「集団で観戦したい」という結論が出たそうです。

さらに、観戦者の多くは、「インドア派よりもアウトドア派」ということまでリサーチを行いました。

つまり「グループ行動が好きで、特にアウトドアを好む」という顧客像が見えてきます。

結果として、こうした人たちはテレビよりもスマホを見ている時間が多いということに注目し、スマホでのPR戦略を取る方向性で決まりました。

「アウトドア派」であれば、あまり家でじっくりテレビを観ることは少ないでしょうし、「グループ行動」を好む人たちであれば、「みんなでテレビを観る」という行動は取らないでしょう。

そもそも、「SNS」を活用した最大の理由も、来場者からのアンケートが元でした。

Bリーグの試合に観戦しに来た人の大きな理由として、「人から誘われたから」というものが明らかになったそうです。

これまでのプロスポーツ界の一般的なマーケティング施策は、スタジアムに来場してもらうために、自宅からスタジアムまでの導線や、会場のドリンクやフードチケットの入手方法などをどうするか、という視点がメインでした。

しかし、Bリーグでは、ほとんどのファンが「人から誘われたから」来場しているわけです。

つまり注目するべきは、「コアなバスケファンがどんな人を誘いたくなるか」が大切ということ。

先述したように、バスケのプレー人口は、60万人います。つまり「学生時代バスケ部でした」という人は、それなりの数が見込まれます。

これまでは、バスケットに「プロのリーグ」が無かったことで、学生を卒業した後はバスケットに関わることが無くなっていた人が多かったのでしょう。

しかし「プロリーグ」が誕生して「身近で高いレベルのバスケが見られる」となれば足を運ぶ可能性が高い。

そう考えたBリーグは、結果としてSNSマーケティングに力を入れ、チケットが気軽に購入でき、一緒に行きたい人を誘いやすい設計をすることで、見事旧リーグ時代から比較して入場者数を50%もアップさせることに成功しました。

SNSを使ったマーケティング事例

BリーグのSNSの主力となっているのは、若年層のユーザーが多いTwitterとなっています。実際に、Bリーグが行ったSNSを使ったマーケティングの成功事例としては、次のようなものが挙げられます。

オールスター投票をSNSで実施

オールスター戦の選手を選ぶ際には、SNS連動オールスターを掲げて、様々な企画を行いました。

他スポーツのオールスターというのは、人気投票枠と監督推薦枠が一般的ですが、BリーグではSNS選手選出枠を設けることで、SNS上で人気の高い選手がオールスターに出場することができるプロモーションを展開しました。

MVPの投票をSNSで実施

さらに、オールスターのMVPまでSNSの投票でファンが決めるという、SNSとの連動を実施したことで、選手や監督だけではなく、ファンも巻き込んだオールスターで、大変盛り上がりました。

チーム・選手とファンが近い関係

Bリーグが行っているSNSのマーケティングは、ファンとリーグだけではなく、ファンとクラブ・選手が近い距離で接することができるという特徴があります。

リーグだけが頑張るのではなく、各クラブもSNSをきちんと運用してファンを盛り上げるように、リーグがクラブに対して要請しているのです。例えば、各クラブに対するリーグ収益の分配率を、SNSの影響力を加味して決めるというルールを設定しています。

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チームが積極的にSNSのアカウントを運用することで、ファンはより情報を得ることができるし、ファンも一緒になって盛り上げてくれる。そしてそれが拡散することで、「久しぶりにバスケ見たい」と感じたライトなファンをコアなファンが誘って、来場してもらう。

このような展開をBリーグは目指しており、実際に結果にも反映されているのです。

【まとめ】 B.LEAGUEのSNS戦略はスポーツマーケティングのモデルになる

今回は、\なぜBリーグだけが「SNSマーケティング」で成果を出せるのか?/というテーマで、BリーグがSNSをいかにしてマーケティングに活用しているのかを考えてきました。

最近では、プロ野球やJリーグでもSNSを運用するチームは増えてきていますが、リーグとして力を入れて、クラブや選手に対して積極的に運用を働きかけているのは、Bリーグが一歩も二歩もリードしています。

まだまだプロスポーツリーグとしては若く、そして色々な問題があった日本のプロバスケットですが、サッカー、野球に並ぶ人気のプロスポーツリーグとなるべく、独自の戦略を打ち出していることをご紹介しました。

Bリーグが取り組んでいるSNSの戦略は、今後のスポーツマーケティングにおいて、代表的なモデルケースになる可能性は十分にあります。これからのBリーグは、マーケティングの観点から見ても、面白いかもしれませんね!

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記事提供
ゼロからのスポーツビジネス入門 須賀 優樹

「世界で一番優しくスポーツビジネスを学べる場をつくる!」を目標に、スポーツ業界に入りたい人、活躍したい人をこれまで多数支援。学生時代の専門は「スポーツマーケティング」。現在は大手企業のデジタルマーケティングやビッグデータ分析のコンサルティング、スポーツ団体の新規事業支援などをやっています。

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