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北海道日本ハムファイターズ 新球場に込められた挑戦「コミュニティ形成に寄与する球場へ」

18年、北海道日本ハムファイターズは北広島市に新球場を建設することを発表した。23年3月のオープンに向け、今年4月から建設が行われている。

面積は約5万㎡で収容人数は35,000人。札幌駅から最寄り駅の北広島駅まで電車で16分程のエリアに32ha(32万㎡)規模の新たなボールパークが創られる。
 
検討開始から5年以上に亘る壮大なプロジェクトの裏には従来の球場建設の常識を超えた新たな挑戦がある。今回から「ESCON FIELD HOKKAIDO」「HOKKAIDO BALL PARK F:VILLAGE」の2回に渡ってお送りする。
 
株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテインメントの小川太郎氏にボールパーク建設に至った経緯やプロジェクトへの想いなどお話を伺った。(写真は全て球団提供)

球団と球場の一体運営

18年11月5日、新たなボールパークが北海道・北広島市に建設されることが発表された。

チームは04年に本拠地を東京から北海道に移し、新たな球団として誕生。北海道に根ざす球団として『Sports Community』を企業理念に掲げている。

17年目を迎える今もそれは変わらず、組織の根底に持っている。今回のプロジェクトもその延長線上にあり、先を見据えたものであるという。15年頃に球団内でチームが立ち上がり、新球場について検討が始まった。

「事業の規模や組織の人員も16年の間で3倍程に拡大しました。球団経営の視点から見て、我々のレベルをさらに上げていくためにも球団と球場が一体となって運営したいと考えていました」
 
球団と球場の一体型運営。近年、スポーツ界の新たなビジネスモデルとしてプロ野球の球団が取り組み始めている。球場と一体になることで、経営面以外にもメリットがあると考えている。

「ファシリティ(球場設備)をより良くすることで飲食や観戦環境をさらに向上できると考えています。北海道らしいサービスやよりよい環境を提供するために実現できるようなことを検討してきましょうという発想です」

球場内の飲食エリア。北海道グルメを堪能できる

国内初、開閉式ドームと天然芝

球場を建設するにおいて、まずは選手のパフォーマンスを最大限に発揮できるようにする事が最も重要である。

注目ポイントの1つは開閉式の屋根と天然芝。国内でこの2つを両立する球場は初めてである。この構造はどのように決まったのか。
 
「重視した要素の1つとして、選手やチームのプレー環境を最大化させる施設を作ることでした。その観点から天然芝が最もベストな環境という結論に至りました」
 
天然芝はチームからの要望が強い意見だった。故障のリスクも軽減され、さらなるパフォーマンスの向上が期待できる。そして屋根についても議論を重ねた上で出した答えだった。
 
「北海道という寒冷地で、天然芝を実現するとは一定のハードルがあります。固定式の提案もありましたが、天然芝をどう実現できるかと言う観点から開閉式がベストということになりました」
 
球場の屋根は2枚構造でうち1枚が可動し、フィールド後方の壁面は透過性の高いガラス壁を使用する。12月から2月までの平均気温が氷点下になる北海道で、天然芝を養生するために日光が当たるような構造になるよう工夫されている。

グラウンド上は芝生養生のため透明の屋根を使う

世界初「温泉に浸かって観戦」

プロジェクトを進めるにあたり、軸となるのが「ファンや地域、観光客の方も訪れたくなるようなエリア・球場」である。

観戦スタイルにさまざま仕掛けが盛り込まれている。日本で温泉地の数が一番多いという北海道らしさを出すため、レフト上段に温浴施設が設置される。

「周辺でも温泉がありますし、ここでも実際にやってみたいなと。周辺地域を調査してある程度湧き出るという見込みが立ったので採用することになりました」

レフト上段にある温泉施設。世界初の試みである

また、球場建物の外側からもグラウンドの様子が見えるエリアを設置。球場の外から雰囲気が伝わるような構造になっている。

「球場に入らなくても雰囲気が伝わってきたり、楽しめる場をつくります。F.VILLAGEと連動性をとって、球場に来るきっかけにしていこうというのが思想にあります」

エントランスのイメージ図。グラウンドの迫力が伝わる構造になる

現時点が完成形ではない。常に現場とコミュニケーションをとり、要望を随時設計に組み込んでいる。

「ダグアウトやロッカールームといった、試合以外で選手やチームスタッフが長く時間を過ごす空間にも重点を置いています。これまでの国内の球場のスタンダードにとらわれることなく、アスリートが試合を迎えるまでの環境も世界トップレベルにしたいです」

国外のスタジアムを数十箇所視察

小川さんは海外のスタジアムへ視察に行き、約3年で40か所以上の球場を回った。野球以外の競技場も数多く回ったという。
 
「アメリカの球場に加え、ヨーロッパのサッカースタジアムや韓国の球場も見ました。あとは過去に使用したオリンピックのスタジアムも視察しました」
 
数多く見た中で特定の球場を参考にするのではなく、北海道という場所に合ったものをつくる。ここが根底にあると語った。
 
「例えば、アメリカのスタジアムのあり方がそのまま北海道で成功するとは限らないので、土地に合った施設ができることが球場運営において基本と考えています」

北海道の気候や土地にあった施設をつくることがベースになる

夢や想いを持って挑戦する

ファイターズは「Challenge with dream」という経営理念を掲げている。
 
“夢を持って挑戦する”
 
現場の選手・監督だけでなく、球団に携わる全員が共通して持つマインドであり、プロ野球界で前例のない挑戦を続けてきた源だ。
 
「夢・想いを持って挑戦するというマインドが組織としても強くあります。このプロジェクトにおいても同様に常識にとらわれないで取り組んでいます」
 
従来、国内のスポーツ界ではスタジアム建設という単体のプロジェクトで行われてきた。ファイターズはさらに発展させたものを生み出そうとしている。
 
「球場単体ではなくて球場と街一体を含めて『“ボールパーク”と呼びましょう』と考え方に基づいています。北広島市や北海道のまちづくりの観点から、社会とどう一緒にこの場が創られていくのかという側面もあると思っています」

1月の新球場名称決定の記者会見。命名権は国内最高の契約金額となった

野球興行においても、野球に興味のない方も含めてチームに愛着を持ってほしいという想いがある。「ESCON FIELD HOKKAIDO」は、今までの興行的な側面を超えたボールパークの在り方を体現するものにしたいと考えている。
 
「『コミュニティ形成に寄与する球場はどうあるべきか』というのが、我々の“ボールパーク”という概念の根幹にあります。ファンや地域住民、観光客など多様な方々も訪れたくなるようなエリア・球場にしていきたいです」
 
プロジェクトにおける挑戦は球場だけにとどまらない。球団は”社会”という大きな括りで捉えている。次回は「HOKKAIDO BALL PARK F:VILLAGE」編をお届けする。

(取材/文 白石怜平)

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